第十八話
一気に町を駆け抜け大きな領主屋敷に。スミレ、すごく速い!
さて、ゲリラ配信しちゃおっと。
・お!ゲリラ配信か?WW
・おつおつー
・あれ、めっちゃ揺れてね?
・ハルカちゃんのたわわが、バルンバルンしてる
・スミレちゃんに乗ってる?
・飛んだ
・飛んだぞ!
・ハルカちゃん、空歩いてね?
大きく跳躍したスミレの背を蹴りスキル〈空歩〉を発動。
三歩以内なら自由に空を蹴る事が出来る。
「《創造》!〈倍加〉〈倍加〉〈跳躍〉〈宮歩〉〈跳躍〉〈魔闘〉〈蹴闘術〉必殺ッ!!ジャイアント・バイカーァァ・シュートォッ!!」
ドゴーン!!と大きな音を立て屋敷の門がガラガラと崩れていく。
・音 量 注 意
・注意喚起遅いんだよなー
・ハルカちゃん喋ってー!
・城門破壊しおった
・え?もしかしてもう何処か攻めてる?
「はいこんばんわー。今私は同盟メンバーと一緒に西側のお隣サンガを絶賛攻撃中です!ごめんねー、スパイが他家に居るかも知れないから偽報流しました。」
・ヌパン四世 ¥50000 これは策士の所業
・ええぞー!情報管理は大事やしなー!
・こんばんわー
・こんばんわー!
・ハルカちゃん謝れて偉い!
城門が破壊され何事かとざわめく屋敷内からー、うんと…40~50人くらいの兵士と武士階級ぽい人達が数名。よし、生け捕りにしよう。
「貴様、何者かッ!」
「こんばんわー。フジミヤから来ました。死にたくなかったら領主を差し出してねー。」
「なッ!フジミヤからの刺客だと?!情報では明日の早朝のはず…おい!今すぐ兵士をここに集めろ!領主様を逃がせ!」
おろ?もしかしてリスナーがリーク済みかな?うーん、なるべくプレイヤーは味方に引き込みたいんだけどなー。
PVPとか厄介そう…
「あー…残念ながら既にこの屋敷は包囲されてるから逃げ道はないよ?戦っても良いけど、弱いものいじめは嫌いだから素直に従ってくれないかな?」
「フンッ!誰が刺客の言葉なぞ聞くか!者共、出合え!出合えぇー!」
ありゃ、説得失敗かー。
しょうがない、武将を適当に転がして領主を捕まえてさっさと終わらせようっと。
ヤエモンさん、ジンゴさんが追い付いてきて兵士を相手に無双している。
どうやら防御力そこまで厚くなかったみたい。ユイさん、ソレビさんも遅れてやって来て最後にやって来たゴンゾウさんが敵兵に威張り散らしてる。
はぁ…
「ではこうしよう。一騎打ち、これで決めようではないか?」
おろ?魅力的な提案をしてくれた人が屋敷から出てくる。
鮮やかな赤の着物を着た豊満ボディの長い黒髪のキレイなお姉さんだ。甘くていい香りを振り撒いて私の前にやって来る。
プレイヤー…ぽい?
「あなたは?」
「新しいサンガの主、プレイヤーのエトワールだ。君の配信はいつも見させて貰ってるよ、ハルカくん。サンガを略奪したと言えば分かるかな?」
エトワールさん。
新しいサンガの主って既にサンガ落ちてたんだ。
というか周辺からプレイヤーらしき人達が湧いてくる。
嵌められた?
けど一騎打ちの申し出をしてきたのならこちらを罠に嵌める気はなさそうだ。
「見てくれてありがとうございます。それはまぁ置いといて…一騎打ちでこちらが勝った場合は大人しく降ってくれるんですか?」
「良かろう。私の同盟百鬼夜行は君の同盟…そういえば名前を知らないな。まぁいい、大人しく君の同盟に入るよ。」
あ、そういえばまだ同盟の名前付けてなかったっけ。
準備が忙しくて忘れてた。
その辺も皆と相談しないと。
「私達が負けた場合は?」
「そうだな…私の右腕としてタカマガツハラ統一の手助けをして貰おうかな?君のセンスは凡庸なプレイヤーを超越している。アカネやセレーネもそこそこやるが並よりマシといった位置付けだろうか?まぁ私にはその辺の凡庸なプレイヤーとは差して変わらないな。とにかく…君が欲しいんだよ、ハルカくん。」
うへー。何か告白された。
私、そっちの方はちょっと…じゃなくて私は少しイライラしてる。
大恩?あるアカネさんやセレーネさんをバカにされたからだ。
でも怒りに任せて暴れればエトワールさんの思う壺。
クールになれ、私。
「お気持ちは有難いですけど、お断りします。アカネさんは私をこのゲームに誘ってくれた恩人でセレーネさんは私と友達になりたいと言ってくれた友人です。なんの関わりのない貴方に私の友人をバカにされるのは少し頭に来ました。良いでしょう…決闘…やるんでしょ?」
「これは済まない。君の友人をバカにしたつもりは無かったんだが…こんな性格でね?自分自身難儀しているんだよ。……それと戦闘は既に始まっているよ?」
何…?
体が…動かない…?
私の隣にいたユイさん、近くに居たソレビさん達がバタバタと倒れていく。
毒?
「漸く効いたみたいだね。フジミヤに忍のプレイヤーを潜ませて情報を報告させていたけどその大きな狼しか連れてないんだろう?雪少女の子が居たらレジストされて危なかったけど、どうやらセレーネに預けたみたいだし。さて改めて名乗ろう。私はエトワール。香術士さ。この香り、気に入ってくれたかい?」
こうじゅつし…香術士?匂いを操るってこと?
「ハル…カ殿…!」
「ハルナちゃん!帰還石で逃げて!」
「ぐぅぅ…体が…動かん…」
ダメだ体が重い…このままじゃ勝負にならなーー
「ハルカ様!話はセレーネから伺ってますわ!私がその一騎打ちとやら、戦わせて頂きましょう!」
朦朧とした意識の中高いソプラノの声が耳を打つ。
だ…れ?




