第十七話
さて、再ログイン。
マリーさんと挨拶して軽く言葉を交わすとフジミヤの屋敷へ戻る。
皆準備万端らしく、気合いも十分。
「おぉ、ハルカ殿戻られたか。殿がお呼びです。此方へどうぞ!」
ソウジロウさんの小姓が私を待っていたらしく挨拶をしてきた。
「態々有り難うございます。ちょっと行ってきますね!」
「行ってらー」
小姓のヨシイチさんに着いていくとフジミヤ家のプライベートスペースに案内される。上座にソウジロウさんが座っていて私はその正面に。
「ハルカ殿、来てくれて助かる。」
「いえ、少し彼方の世界で休ませて貰ってました。それでお話とは?」
「うむ。ハルカ殿にはフジミヤ家の家宝 名刀 細野影連を託そうと思ってな?」
「え?家宝ですか?私なんかに預けるなんて…いけませんよソウジロウさん!」
「決めたのだよ。先程軍儀で話した通りハルカ殿には家督を継いで貰いたい。だが一つだけ約束してほしい。我が故郷、フジミヤの繁栄を。」
ソウジロウさんの真剣な眼差しに私は息を飲む。この人は真剣なんだ。手に渡された細野影連に視線を落とす。
「…承知しました。この刀に…そしてハルナ姫に誓ってフジミヤ家の繁栄をお約束しましょう。そしてフジミヤの家名を私も名乗りたく存じます。」
「おぉ、決めてくれたか!有難い。家臣達は私が説得する。ハルカ殿、全てを任せよう。」
「はい、精進します!」
こうして私はフジミヤの姓を名乗ることとなった。ハルナちゃんとの婚姻も戦が終わって落ち着いたら…ということになった。
ソウジロウさんにユウヒを預け、転移が出来る様にした。
凄い戸惑ってたけどね…初代の相棒だったみたいだし。
万が一が有れば私が助けに入ると伝えると喜んでいた。セレーネさんにセツカも預けよう。
今回は電撃戦だ。速度が何よりも必要だ。
さぁ、いよいよ出陣だ。
「ハルカ・フジミヤ、前へ。」
「はっ!」
「この戦を最後にハルカに家督を譲る。他言は認めん!文句の有る奴はそこに直れ!」
「お言葉ながら殿。某はそこのハルカなる者の実力を見ていませぬ。なぜその者なのでしょうか?」
「ゴンゾウよ。このハルカは我が娘ハルナを助けんが為に単身で悪鬼モウエンを討ち倒したのだぞ?更に初代モンド様の相棒であるネコマタ様を手懐けた。お主ごときにその様な偉業出来ようか?」
「ななッ?!モウエンですと?近頃この東部近辺を荒らし回り周辺の村を滅ぼしたと噂の?」
「そうだ。更にこの周辺鬼大将キンキさえもほぼ単身で倒したのだぞ?」
ソウジロウさんが家臣達を睨み付ける。
それから色々ゴタゴタしてからの出発。
どうしてこんな状況に?
厳かな空気で始まった出陣式。
ソウジロウさんが私に家宝 細野影連 を渡したと報告した。
それから事態は一変。
先程の若武者が私に食って掛かり決闘を申し込まれた。
どうやらハルナちゃんの旦那の椅子を狙ってたみたい。それを聞いた私は…当然ブチギレ案件である。
若武者と言っても20そこらな感じなんだけど凄い高圧的なんだよね。
私も結構イラって来たからぼこぼこにしちゃったけど。
顔が三倍くらいになってた。
あ、ちゃんと死なない様に魔法薬は準備してたから命に別状は無いんだけどね。
幾らNPCと言えども会話が出来る相手だし。
まぁ正しい教育は必要だろう。
けどそれからフジミヤ家の家臣達の私を見る目が変わった。
どうやらゴンゾウさんとやらは若武者の中ではヤエモンさん、ジンゴさんに続く実力者だったらしく普段から高圧的な態度を取り、自分を時期当主に、と散々触れ回り、家中の者達も困っていたらしい。
しかも怪我を治したからなのか、そのゴンゾウさんとやらは私にまるで媚びへつらうようになり、本来馬廻りとしてソウジロウさんに着いていく予定だったが、私に着いていきたいとソウジロウさんに土下座した。
ソウジロウさんはそれを許して今こんな状況だ。
代わりにテンドウさんが向こうについたんだけどね。
正直交代してほしい…
「ハルカ様喉は渇いておりませぬか?某が汲んで参りましょうか?」
「結構。大人しく行軍してください。」
「しからば某が先陣を切りましょうぞ!音に聞こえしフジミヤが正統後継者ハルカ様の歴史に某の名をお刻み頂ければ、と。」
「それは命令違反なので止めて下さい。」
はぁ…疲れる…
ヤエモンさん、ジンゴさんに助けてのアピールをしても苦笑いするばかり。
どうやらゴンゾウさんは強い女性が好きらしくここまで完膚なきまでに叩きのめされたのは初めてだという。
女性に尻に敷かれるのが好きなのだろうか?
とんでもない変態に好かれてしまったようだ。
アカネさんといい私は変態を寄せ付ける何かを醸しているのだろうか?
「それじゃ作戦通りに私が突っ込みますんで後は手はず通りに。」
スミレに飛び乗りユイさん達にそう告げる。
なんだこれ。
もふもふ幸せ~……
はっ、大事な戦前なのにトリップ仕掛けていた。
危ない危ない。
「ハルカ、危ないからユイちゃん様も行こっか?」
「心配してくれるのは有難いですけど、大丈夫ですよ。何なら私が門を開けたらゆっくり入場してくれて構いませんから!」
「んー。大将が突っ込むのもおかしいと思うんだけど…分かった、ハルカを信じるわ!」
心配してくれるユイさんを説得し、私は気合いを入れ直す。
さぁ…ショータイムだよ!




