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第一話

また性懲りもなく新作出します。

宜しくお願いします!


はぁ…猫、可愛い…!学校帰りに行き付けのペットショップで何時ものようにお気に入りの猫ちゃんを眺める私、春風 美空(みく)は今日も今日とて窓際で悶えていた。


猫、飼いたいけどウチじゃ飼えないんだよぉ…


「あれ?美空ちゃんだー。今日も来たんだね!」


そんな私に声を掛けてくれたのはこのお店の店長さんの相原茜さん。


見た目私と同い年くらいなのに26歳のお姉さんで、私の奇行を見ても笑顔で対応してくれてお店の子の写真まで送ってくれる滅茶苦茶いい人だ。


私のバイト先のコンビニの常連さんでたまたまお店の前で悶えてたところに話しかけられて仲良くなった。


性格はおっとりしてて、間延びした話し方に癒される。


「茜さん、こんにちは。あうー、この子めっちゃ可愛い…!」


「ブランちゃんねー、実は契約成立しちゃって一週間後には嫁いじゃうんだよねー。」


「はうッ…ブランちゃん…そんなぁ…!」


「美空ちゃん、すごく気に入ってたもんねー。でもブランちゃんの新たな門出を見送るのが私達の出来る事だよ、美空ちゃん。」


「ハッ…!そうですね、茜さん!ブランちゃん、元気でね…!」


「うんうん、美空ちゃんが別れを惜しんでくれてお姉さんも嬉しいよー。あ、そろそろ上がるんだけどちょっとお茶していかないー?もしかしたら美空ちゃんの猫欲を満たせる方法があるかも。」


茜さんの提案に私は一も二もなく承諾し、茜さんが来るまでの間ブランちゃんを眺めていた。



「お待たせー。ふぅ…バイトの子が代わってくれてよかったよー。お陰でこうして美空ちゃんとお茶出来るしー。」


「あー、一ノ瀬さんでしたっけ?確か大学生の。」


「そうそうー。いっちー地下アイドルやってるんだけどそれだけじゃ稼げなくてうちでバイトしててねー。一度ライブ見に行ったけどあれじゃ売れないかなー。まぁ私は好きだけど。」


そう言って茜さんがスマホで動画を流し始める。ちょっ…!能面やら色々な仮面を被った集団がアイドル服着て私が一番可愛いでしょって感じの歌詞の歌を歌っている。


私は何故かツボにハマり笑いを堪えるのに必死になった。



「ひぃ…ひぃ…ご、ごめんなさい。ツボに入っちゃって。確かにこれは…でも話題性が合って私は好きですね!」


推せるかどうかで言えば推せない…けど。


「だよねー。辞めた方が良いって言ったんだけど、中々頑固でさー。っと、そうだ。美空ちゃん!」


「はい?」


「さっき話してた美空ちゃんの猫欲を満たせる方法…知りたい?」


「(ごくッ…)…し、知りたいです!」


「だよねだよねー。美空ちゃんってゲームとかはするんだっけ?」


「ゲームですか?最近は受験やらで忙しくてあまりしてませんね。」


最後に触ったのはいつだろうか?確か高校に上がる前の…その頃も受験で忙しかったっけ?あれ…もしかして五年くらい触ってない…かも。


「実はゲームなんだけどね。INFINITE DESTINY Onlineってゲームが近々発売されるんだ。私それのβ版プレイヤーで招待券を持っててね。そのゲームなら美空ちゃんの猫欲を刺激してくれると思うんだ。」


詳しく説明を聞いてみるとフルダイブMMOと言うジャンルでまるで異世界に転移したかのようなリアルさと高水準のAIを積んだ世界で初めてのゲームらしい。

ソフトは無料配送で、茜さんが使っていないヘッドギアが複数あるのでそれもプレゼントしてくれるらしい。



「あの…そんなに良くしていただいても私何も返せませんよ?」


「良いのよー。私からのお願いは美空ちゃんと一緒にプレイしたいってだけ。お友達だもん、ね?」


ね?って…うー、茜さんズルい。そんなこと言われたら余計断れないじゃないかー。


「あうー…茜さん、ズルいです。そんなこと言われたら断れませんよぉ!」


「フッフッフー。存分に甘えたまえー。あ、この後まだ時間ある?私のお部屋に来ない?」


今日は金曜日、うちは貧乏だしそのせいで父があちこちに転勤してはクビになったりと大変だ。最近は起業して雑貨屋をやっているが海外まで買い付けに行っているし、来月まで帰ってこない。


私は大学の内定も貰ってるし、コンビニバイトの貯金を切り崩して生活をしてるし、唯一の趣味は茜さんのお店〈ケット・シー〉で猫ちゃんを眺めるだけ。


うん、バリバリ暇です。


「じゃあ…ちょっとだけお邪魔します。」


「わー!本当?良かったー!すぐそこだから。あ、私家では猫飼ってないからその辺は気にしないでねー!」


「あ、その可能性もありましたね…忘れてました。」


「猫好きの美空ちゃんの唯一の欠点が重度の猫アレルギーだからねー。仕方ないさー。」


そう、私の欠点は貧乏と猫アレルギー。勉強も運動もそこそこ出来ると自負しているが子供の頃友達から猫を引き取った際鼻水とくしゃみ、目の痒みが頻発し、お医者さんに言ったらアレルギーと診断され泣く泣く母方の従姉妹の元へ猫は送られた。


「もう着くよー。ほらあそこのマンションー。」


「うえッ?!ちょっ、茜さんこんな高級マンションに住んでたんですか?!」


駅チカ徒歩二分の高立地で近くには商業施設も併設されている。


「そうそう、私副業しててねー。そっちで儲かっちゃって。」


茜さんに案内されたのは近所でも滅多に見ない高級高層マンション。


こんな凄い所に住んでるなんて知らなかった。


「あの…副業って…いえ、やっぱりなんでもないです。」


「気になるー?大丈夫、部屋に着いたら教えてあげるよー。さっ、こっちー」


茜さんに導かれるまま私はエレベーターに乗る。そのままエレベーターはぐんぐんと上昇していき…どこまで行くの~?


よ、四十八階…ひえー、地上何十メートルだろここ?


「こっちこっちー。って言っても三部屋しかないんだけどねー。」


エレベーターから降りると茜さんは手を振って私を促す。


玄関で靴を脱ぎ部屋に入ると白と黒、茶色の落ち着いた色合いの広い部屋が待ち構えていた。


壁掛けテレビなんてドラマでしか見たことないよ私。


「ようこそ、茜の秘密基地へー。えへへー、実はこの家に招いたのは美空ちゃんが二人目なんだよねー」


「ほえー。スゴすぎて何も言葉が出ないや…」


「あははー。驚いてくれて良かった。そうだ、何か食べてく?作り置きの物しか無いんだけどー。あ、お酒飲んでいい?」


茜さんが冷蔵庫を見ながらそんなことを聞かれる。ビール缶を取り出し窺ってくる茜さんにどうぞと告げるとオレンジジュースを渡してくれたので軽くコツンと当てて乾杯。


「いやいや、そこまでして貰わなくても結構です!えっと…茜さんの副業って株とかですか?…正直それしか思い浮かばないんですけど」


「残念ー、ハズレだよー。正解は…これを見てくれるかな?」



『きゅるるるーん!ハローにゃあにゃあ、飼い主の皆!今日もAKANEの配信見に来てくれてありがとにゃん!今日はーー』


その動画にはお化粧をしたゴスロリ服に猫耳を着けた茜さんが映っていた。


「これは…配信…ですか?」


「そうそう、実はゲーム配信でバズっちゃってさー。チャンネル登録480万人のそこそこな感じでやらしてもらってますー。」


茜さんの打ち明けに私は絶句する。

ゲームするだけでお金が貰える。

なんて素晴らしいシステムだろう。


「あの…!私も配信したら稼げますか?」


「まさか美空ちゃんから言われるなんて思わなかったなー。実はね、元々配信に誘う予定だったんだー。小さいライバー事務所をやっててそこにいっちーも所属しててね?三人で楽しくやれたらなぁーって。」


「そうなんですか?あの一ノ瀬さんも一緒なんだー。ほえー」


一ノ瀬さんの能面動画を思い出す。


凄く綺麗でクールビューティな感じなのに能面被ってアイドルやってるなんて未だに信じられない。


「いっちーはね、センスの塊だよ?プレイヤースキルも高いし、アイドルやってるからトークスキルも高いし、天性のライバーって感じー。美空ちゃんも私の感がバズるって騒いでるんだよねー」


「ゲームなんて五年以上触ってないですよ?人見知りはしないですけど、ずっと喋れるか不安ですね。」


「大丈夫ー!最初は私といっちーでサポートするから安心して?となれば…よし、いっちーももう少ししたら来るって。三人でお試し配信してみよー!」


「ふぇ?配信するんですか?」


「大丈夫大丈夫ー。オンゲーでのんびりゆるーく話すだけだし。あ、美空ちゃんって明日バイトだっけ?」


「いえ、明日はお休みですよ。」


「ご両親は海外出張だったよね?連絡は私の方でしておくから泊まって行ったらー?」


「えっ、ちょ…?急すぎます…けど、大丈夫だと思います。」


「くはー、美空ちゃん可愛すぎー!」


「あ、あの…茜さん?」


「勢いで言っちゃうけど私レズなんだー。あ、でも学生には手を出さないからそこは安心して?」


いきなりのカミングアウトに混乱する。


レズ?茜さんが?


驚きと衝撃の事実で頭が追い付かない。


けど、思い返してみれば茜さんのお店には女性店員しか見たことはないし、レジに並ぶ時は必ず私の列に並んでいた様な…


それにずっと優しくしてくれていたし。


「私は茜さんの性癖とか好みは気にしませんよ?どっちかと言うと小中高と女学園育ちなので偏見もありませんし。」


友達にも先輩や後輩と付き合っている人も居るし、そういう意味では慣れていると言えば慣れてる。


「み…みくちゃん!ありがとー、めっちゃうれじいぃ!」


感極まって泣き出した茜さんを宥めつつ頭を撫でていると呼び鈴が鳴る。


私が対応すると一ノ瀬さんが部屋にやってきた。


「痴情の縺れ?…混沌の極み…」


開口一番、一ノ瀬さんはそう告げた。


「説明、要求。」

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