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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

時間くじ

作者: 白根 づみ

––幸運とは、必ずしも幸せになるということが約束されている訳ではない。運という言葉がつく限り、あくまで可能性なのだ––


 

 間違いはないはずだった。前日から何度もネットで調べ、電話で確認も取った。ここに着いてからも、スマートフォンで現在地検索をした程の徹底ぶりだ。だったら、ここが当選会場に間違いない。私はそう自分に言い聞かした。

「でも、絶対違うと思うのは何でだろう・・・」

 イカサ坑道。○山県低橋市にあり、江戸時代から大正初期まで銅を採掘していた由緒ある銅山である。低橋市では数少ない観光スポットで、一年くらい前に特集番組を放送して、今ではそれなりな人気観光地になっていた。地元の誇りだとは思うけれど、今の状況ではただの不安要素でしかない。何故なら銅山と当選会場の繋がりが、全くないからだ。

「こんなロマンあふれる坑道が、当選会場のはずないよ・・・」

 私はがっくりと肩を落としてうなだれた。横の小屋にいた受付のおじいさんが「観光かね?」と笑顔で話してきたけど、正直どうでもよかった。「違います」と力なく答えると、おじいさんは「ちっ」と言って、小屋の中に置いてあるテレビに視点を変えた。普通なら落ち込むけど、今はそんなことに構っていられる程、心に余裕はなかった。

 やっぱり間違いだったのだろうか?実際、宝くじに当たる。と言うこと自体がおかしな話だったんだ。間違いだった。と言うのなら、この訳の分からない状況の説明がつく。そうか、そう思えば楽だったんだ。私なんかに、宝くじが当たるはずがなかったんだ。

「三木原 京子様でいらっしゃいますね?」

「え?」

 突如、私の後ろから声がした。すぐに私は振り返ったけど、そこには誰もいなかった。あるのは駐車場に止まっている車が数台、他にはタイヤの所に人形が置いてあるだけだった・・・子供が置き忘れたのかな?

「誰も・・・いない?」はず、だった。

「どうも」 

「うぉう!」

 声の主は人形だった。その人形は小さな手を振りながら、私に挨拶をしてきた。驚いた、というよりは不意をつかれた感じだ。予想外としか言いようがなかったからだ。

「人形が・・・喋ってる・・・?」

 ロボットかと思ったけど、声があまりにも人間に近く、手を振る動作もロボットより生き物のそれに近い。ロボットと言うよりは、人形の形をした不思議な生き物と例えた方が正しかった。雪だるまみたいな顔をしていて、胴体から生えたような短い手足。トレードマークなのか黒い帽子を被り、時計が先端についている妙な杖を持っていた。あと、二頭身だ。

「お待ちしておりました。今回、三木原様のご当選のサポートをさせていただくことになりました『ナビ』と申します。どうかよろしくお願いします」

「は・・はい」

「それでは、早速ご案内をさせていただきます。この度は『時間』くじ、一等当選おめでとうございます」

 ここまでははっきり覚えている。問題はこのあとだった。

 突然ですが、みなさんは眠りに入る瞬間というものを実感したことがあるでしょうか?私はいつも気付いたら眠っています。私の体験した感覚は、その感覚に近いものでした。ナビの言葉が終わった瞬間、突如睡魔のような感覚に襲われ、そして頭が真っ白になりました。そして次に目を開けた時は・・・。



 目が覚めた時、最初に視界に入ってきたのはあの人形だった。「ナビ」といっていた人形(?)だ。意識はまだもうろうとしていたけど、徐々に視界が晴れてくると同時に、自分の置かれている状況が異常なことに気付いた。

「ここ・・・どこ?たしか、さっきまでイカサ坑道に・・・」

 まだ頭がクラクラしていて声に力がはいらなかった。でも、私は恐怖していた。妙な部屋・・・というか、空間と言った方が正しいかもしれない。白い空間だ。どこまでも続いていそうな地平線、白く透き通った純白の世界。そしてその世界の空には、無数の時計がゆっくりと漂っている。その時計はいびつなものもあれば、美しい円のものもあり、一定しない。その時計達の刻む針の音だけが、この空間に鳴り響いていた。普通、時計の音というのは耳障りに聞こえることが多いけど、この空間の時計の音にはそれがない。むしろ優雅なクラシック音楽を聴いているように、私を和やかな気持ちにさせた。それが私を恐怖させる原因だった。

「当選会場です。三木原様」

「ここが・・・?」

「ええ、時間通りに来ていただき、誠に感謝しておりますです」

 よく見ると、ナビは椅子に座っていた。かくいう私も椅子に座っていた。関係ないことに思われるだろうけど、この現実感のない空間で、唯一現実感があるものといえばこれだけだった。だから私はこの現実感の象徴である椅子を見て、とりあえずこれは夢ではないはずだ。と自分に念を押した。そして念を押したついでに、聞きたいことを全てナビに聞いておこうと思った。

「あの・・・!色々質問があるんですけど」 

「どうぞ。私のことと、この部屋のこと以外なら、何でもお答えいたします」

「え・・・うぁ・・・」

 釘を刺されたと思った。確かに考えてみれば、こんな「当選会場」に連れてこられて、聞きたい最初の質問というのは決まっている。「ここはどこ?」「あなたは誰?」だ。でも否定された以上は、もうその質問はできない。だったら他に何があるだろうか。私は考え込み、悩んだ。

「え・・・えっと」

「無理に。とは言いませんよ。無ければ賞品の説明に入りますが・・・」

「いえ・・・ちょっと待って下さい」

「はい」

「うーん・・・あ、そういえば」

「何でしょう?」

「さっき、時間通りっていってましたよね?」

「ええ」

「それに、私のことを知ってましたよね?」

「勿論でございます」

「そう!そういえば、どうして三木原京子が私だってわかったんですか?時間通りとかも、別に待ち合わせ時刻なんてなかったし!」

 考えてみればおかしかった。私は時間くじ協会に電話はした。けれど「何時何分にいく」なんて言いはしなかったし、名前も名乗ってはいなかった。ならナビは私のことがわからないはずだ。それなのにナビは、私の顔と名前まで知っていた。正直気味が悪かった。

「それは簡単です。我々時間くじ協会は、ご当選された方の過去を『全て』お調べ致しますので、お顔はその折に確認致しました」

「え・・・?全てって・・・?」

「ご出産から、今まです」

「は・・・?」ナビの言っている意味がわからない。

「二千××年四月六日、四時三十七分十一秒。当選に浮かれてベッドで足をくじき悶絶する」

「えっ!」

「二千××年四月六日、八時五十分九秒。当選に浮かれて食べ過ぎで下痢になる」

 その言葉を聞いた瞬間、顔がみるみる赤くなっていくのがわかった。そして同時に怒りがこみ上げてくるのもわかった。どうやってそのことを知ったのか?ということよりも、自分のことを覗き見られているのが非常に不愉快だった。私はナビに向かって叫んだ。

「そ・・・それってプライバシーの侵害じゃないですか!」

「違いますよ」

 表情のない人形だからなのか、それとも業務的な喋り方のせいなのだろうか?それが余計に私の怒りを駆り立てた。

「だって私のことを全部調べたとかいって・・・!」

「確かに、人の情報を勝手に閲覧するのは法律で禁じられていますが・・・」

「だったら謝ってよ!」

「ですが・・・」

「なんですか!」

「ですが、あなたはもう現実の時間軸には存在しないことになっております」

「え・・・?」赤面から一瞬にして、私は青ざめた。

「そして、もう永久に前の時間軸に戻ることはないのです。失礼ですが、消えた人間にプライバシーは存在しますでしょうか?」

「そ・・・それは・・・その・・・」

 言っていることはわからなかった。けどその言葉から、底知れぬ恐怖を私は感じた。ナビの口元が若干歪んで見えたのは、私の錯覚だったのだろうか?私はナビの顔を見るのが怖くなり、うつむいた。

「ご質問は以上でしょうか?」

「・・・はい」

 もう聞くな。と遠回しに言っているように感じた。私はうつむいたまま答えた。下を見ると、地面が若干透けていて、その透けた先には、歯車のようなものがゆっくりと動いているのが見えた。

「それでは、改めて申し上げます。この度は『時間』くじ、一等当選おめでとうございます。すでにご存じかと思われますが、我々時間くじ協会の販売するくじは、一般の宝くじとは違います」

 そう言うと、ナビは左手に持っていた時計付きの杖を上に掲げた。すると、杖の時計部分が怪しく発光し始め、眩いばかりの光を放った。そしてその光は、拡散状態から次第に収束し、私が入れる位の大きな円を、ナビの真上に形成した。

 ブォォン・・・

 その円の表面から映像が映った。これはスクリーンだ。そのスクリーンからは、金の延べ棒、お札、硬貨、といったものが映しだされていた。

「一般の宝くじというものは、こういった『お金』を商品としています。ですが、我々の『時間』くじは」

 ボゥ・・・

 徐々に映像が切り替わっていく。次に映しだされたのは時計だった。様々な時計がスクリーンの中に映っている。デジタル時計、壁掛け時計、目覚まし時計。そして中央には大きく砂時計が映っていた。

「そう『時間』です。等ごとに振り分けられた分、時間を戻すことを賞品としております。三等は一か月前、二等は一年前。そして一等は、なんと十年前まで遡ることができます」

 大体知っていた。というか、当選してから毎日くじのことしか考えていなかったので、当然といえば当然だった。だけど、ナビの次の言葉は予想外だった。

「尚、お望みであれば、日時と場所も指定可能です。勿論、当選された等の範囲内の時間であれば。という話ですが」

「日時と・・・場所まで?すごいや・・・」

 日時指定と場所指定ができることは初耳だった。雑誌にもネットにも書いてなかったからだ。でも私にとって、それは嬉しい誤算だった。思わず私は笑顔になり、自分の過去の出来事を思い出していた。あの時、あの日、あの時間・・・。そしてその姿をナビは、おもちゃのビーズでできたような目でじっと見ていた。

「心あたりがおありのようですね」

「え?いや・・・その・・・!」

「よろしいですよ。そのほうが、円滑に進めることができますから」

「は・・・はは・・・」

 まるで、心の中を覗かれているような気がした。多分、ナビならそれ位のことはできる。出会ってまだ十分も経っていないけど、何故か私にはそう思えてならなかった。

「それでは説明に入りますが、よろしいでしょうか?」

「は・・・はい」

「まずは、当たりくじを出してください」

 私は手に下げていた鞄から、大切にしまっておいたくじを取りだした。七十七組、五八二六八七番。何度繰り返し暗唱しただろうか?私の運命を変えたくじ。

「この当たりくじには、すでに特殊な仕掛けがほどこしてあります」

「くじに?」

「はい、時間逆行のキーになるのはこの当たりくじです。このくじを起点として、時を逆行させます。三木原様は一等ですから十年ですね」

「十年・・・。」

「目を閉じ、そのくじに願いを込めてください。日時、場所、どの日に戻りたいかを。それがくじに伝わった瞬間、三木原様の望む時間に『逆行』します」

 意外に簡単だと思った。原理は全くわからないけれど、とりあえずこのくじが重要だということだけは理解できた。「願いを込める・・・か」そう小さく呟くと、私は目を閉じた。そして、どの日に戻ろうか考えた。でも・・・一体どこに行こう?一〇年前だと一〇代前半に戻るから、小学生だ。でも今更小学生に戻りたいとは思わないし、中学で受験勉強をもう一度。というのも御免被る。だったら高校生?待てよ、確か高校生の頃は・・・・。

「お待ちください」

「えっ?」ナビの声を聞いて、私は目を開けた。

「それを使用される前に、いくつか注意があります」

 そう言うとナビは少し間を置いて、こう言った。

「時間を戻して未来を変えるということは、必ずしも幸せであるとは限らない」

「・・・!」

「時間を戻した時点で、何をなさるのも当選者様の自由です。ですがその結果に不満や問題がありましても、我々は一切関知しません。時間は十分にありますので、ゆっくり悩んで下さい」

 考えていることはお見通しだ。と言わんばかりに、ナビは私にそう言った。確かにナビの言うことは正しい。時間が戻ったからといって、私が幸せになると約束された訳じゃない。むしろ今より悪くなる可能性だってある。そう、ただ時間を戻しただけでは駄目なんだ。重要なのは『どこに戻るか』だ。

 私は深呼吸し、今一度目を閉じて考えた。どこに戻ればいいかを。一体どの時間が、今の私を幸せにする時間なのかを。


 小学時代

 学芸会の配役を決める日だった。大体主役とヒロインというのは、どこの学校も決まってクラスの人気者が独占するものだと相場が決まっている。だから私は、大道具とか裏方の仕事をやろうと思ったけど、先生に「三木原はおとなしいから木の役が似合うんじゃないか?」と言われ、半ば強制的に木の役にされた。今でもトラウマだ。あの時に、差別は絶対なくならないと強く感じた。


 中学時代

 ウブだった小学時代から一転、親に泣き付いてテニスウェアを買わせ、私はテニス部に入った。しかし生まれ持った運動神経という奴は本当にどうしようもないもので、結局三年間球拾いの刑という極刑に処された。涙が止まらない。


 高校時代

 『生殺し』という言葉は、私の為にあるのだと思う。毎日毎日が平凡に過ぎていき、気が付くと卒業していた。一体、青春ってどうやったら謳歌できるのだろうか真剣に悩んだ。誰か教えてほしい。


 そして現在、私はとある焼肉屋のパートで働いている。女の子ってのは普通、注文とかを聞いて回るような、言うならば表の仕事ってのをすることの方が多い。でも、私は何故か裏方で洗い物ばかりやらされていた。多分入りたての頃、生ビールをお客にぶちまけたり、他の店員に当たって皿を何枚も破壊したからだろう。適材適所だとは思うけれど、何ともやるせない。


 総評 地味


 わかってる。もう慣れました。そうやって日々自分を納得させながら毎日、私は流し台の前に立って皿と格闘していた。この日はお客が多かったのか、流し台の近くに置いてあるカゴの中には気が滅入るほどたくさんの皿が入っていた。私は「なにっ」「なんとっ」とか言いながら皿を洗っていた・・・正直、こうでもしないと気が滅入ってしまう。

「京子」

「・・・どうだっ!」

「きょーこ!」

 後ろから声が聞こえたように感じた。振り返ってみると、そこにはふくれっ面の女性がこっちを見ていた。

「あ・・・美奈子?」

「美奈子じゃないわい。もう仕事時間過ぎてるで?」

 天川美奈子、私の小学校からの友達だ。そして中学、高校と同じで、ついでに今の職場も一緒。まあいわゆる腐れ縁というのだろう。長い髪を結った大きなポニーテールが彼女のトレードマークだ。いつも元気な子で、私とは正反対。でも何かと気が合うので、大体いつも一緒にいた。

「もう終わってたの?」

 私は皿洗いに夢中だったのか、仕事時間が過ぎたのに気付かなかった。それを聞いた美奈子は深いため息をつき「もういいから、早く帰ろうよ」と言って私をせかした。私は美奈子にせかされながら服を着替え、店を彼女とでた。

 空を見ると、太陽がゆっくりと沈んでいく黄昏時だった。私達は仕事場から少し離れた駐車場に向かい、雑談を交わしながら歩いていた。

「・・・でさ、あの女なんて言ったと思うけ?」

「え?」

「そんなの知りませんってさ、頭にくるわー」

 口ではこう言うが、美奈子は本気で人を馬鹿にすることはまずない。まあ笑顔で悪口を言っていても、誰も本気とはとらないと思うけど。

「確かに、お客さんに謝らないのはよくないよね・・・」

「だよね!いい理解者を持って幸せだよ私は」

 美奈子は腕組みをしながら、フフンと笑った。ああ、私もそんなふうにふるまえればモテるんだろうなあ。実際女性である私の目からしてみても、その姿は可愛らしく映った。

「まあでも、許せなかったからね」

「何が?」

「お客に対してあやまらずになあなあで終わらせるってのは、どうも好きじゃないのよ。だから言ってやっただけ。なはは」

「すごいね」

「凄くないし。当然じゃないの。まあちょっと言い過ぎたかもね。明日慰めてやるかな」

 はっきりと物事を言う。ということは、並大抵のことじゃない。大体はリスクを恐れてなあなあで済ますのが世の常というものだけど、それを当たり前のようにするのが美奈子だった。当然味方は多い。だがそれに比例して敵も多かった。だからたまにこうやって、私に愚痴を冗談交じりで漏らしてくる。彼女も人間なんだ。

「それがいいよ」

「だよね。結構泣いてたしなあ。ほっといてもいいんだけど、京子が言うならそうするよ」

「うん」

「あんがとね」

「いいんだよ。いつも私ばっかし相談してるし」

「1ー9位よね?なはは。確かに多すぎかも」

「違うよ!そんなに多くない!」

 彼女の肩を揺さぶりながらそう言ったけど、美奈子はケラケラ笑って私を茶化した。昔となにも変わらない・・・小学校の頃からいつもこんな感じだった。辛い時、悲しい時はお互いに相談しあっていた。お互いを支えあって、怒ったり、泣いたりしながら大きくなっていった。そう、私にとって彼女は親友であり、人生をささえる大きな存在でもあった。でも・・・。


「あ」

 駐車場の入口付近に入って、美奈子が何かに気付いた。彼女の視線の先にあったもの。それは、

「なんで待ってんのってよー!」

「だって、お前が遅いからさ・・・」

 天川健人。美奈子の旦那さんだ。彼は駐車場にクルマを停め、彼女を待っていた。美奈子はクルマに乗ってこない。いつも私のクルマで通勤をしているからだ。彼女は健人君をみた瞬間、彼に向かって走り出した。

「っバカッ!」

 ドムッ!「おぅ!」

 走り寄ったかと思うと、美奈子はそのまま彼に肘鉄を食らわせた。スピードの乗った肘鉄が健人君の腹部にめり込んだ。顔が真っ赤だったから、照れ隠しだということはすぐにわかったけど、それにしても愛情表現が攻撃的すぎる。

「い・・・いた・・・」

「わざわざくんなってーのよ!」

「だってさ、今日残業とか言ってなかったじゃんか」

「接客業に定時なんかあるか!バカ!」

 ドカッ

 今度は膝の皿を思いっきり蹴った。ひどい。健人君はさすがにこたえたのか、その場で悶絶してしまった。体を丸めてもだえているのが、非常に痛々しくみえた。

「恥ずかしい男よね全く。女じゃあるまいし、ねえ京子?」

「う・・・うん」

 私がそう答えると、美奈子はニカッと笑った。そして頭を少し掻きながら健人君の近くに行き、彼の膝にそっと手を触れ、優しくさすり始めた。

「そんなに強く蹴ってないでしょ。早く立つの」

「あ・・・おう・・・。」

 よろよろと立ち上がる彼を、美奈子はとても優しい目でみていた。愛する者を見る目。とでも言うのだろうか?その目をみた時、私は何か心に突き刺さった感じがし、胸を強く押さえた。

「どしたの?美奈子?」

「あ・・・いや。何でも無いよ。」

 私は美奈子達を直視できなかった。彼女達は私にとって、あまりにも眩しい光だったのだ。そして光が強ければ、また影も強くなる・・・私は彼女達の闇だ。嫉妬、焦り、空虚感。その心の闇が、私の心を支配していた。

 


 駐車場で美奈子達と別れると、私はクルマでスーパーへ向かった。夕食の材料を買うためだ。「野菜炒めくらいでいいか・・・」

 スーパーに着くと、私は一通りの材料を適当にカゴの中へ入れ、手早くレジに行って買い物をすませた。あまり長居をする気分じゃなかったからだ。だけど外に出ると、もうすっかり日が落ちていた。さっきのことをまだ引きずっているのだろうか。足取りが重かった。

「私は、駄目だなあ」

 そうぼやいて、適当に視線を向けたその先に小さな店が見えた。よく見ると「宝くじ」と書いてあった。

「宝くじかあ・・・」

 今まで、宝くじを買ったことはなかった。正直お金の無駄だと思うし、テレビかなんかでみたけど、当たる確率は交通事故に何回もあう確率だとか。そんな低い確率なのに「なんで宝くじ売り場はつぶれないのだろう?」と真剣に考えたことが何度かある。でも今はよくわかる気がした。


 ーすがりたいんだ。ほんのわずかな可能性だとしてもー


 私は引き寄せられるように、宝くじ売り場まで歩いていった。そして売り場の前に立つと、売り場の壁に書かれているくじの種類を見た。


 スーパーウルトラ宝くじ  五億円

 リトルヘビー宝くじ   三千万円

 ナト5   毎月一千万円


 いざ買う。となると結構悩んでしまう。ウルトラ宝くじは金額は高いから当たる気がしない。そんなふうに考えるとナト5が当たりやすそうだけど、もし当たったとしても「ウルトラにしておけば」となりそうだ。私なら。

「間を取ってリトルかな・・・?」

 私はしばらく悩んだ。そしてもう一度壁に書いてあるくじの種類を確認した。

「あれ?」

一等 十年

 時間くじ   二等 一年

 三等 一月

「変わってる?」

 目の錯覚だろうか?さっきまでこの壁には「スーパーウルトラ宝くじ」と書かれていたはずだった。それが今は「時間くじ」と書いてある。もう一度壁を見直した・・・やはり変わっている。

「時間を戻して、人生を変えよう・・?」

 煽りにはそう書いてあった。ひどい冗談だと私は思った。時間を戻すことができないなんて、そんなのは誰でも知っている。騙すならもっとまともな嘘を書けばいいのに、よりにもよってこんなわかりやすい嘘を書くなんて。正直腹が立った。

「時間・・・か。」

 嘘だとは十分にわかっていた。それでも、人間という生き物のサガなのか、もしくは私の心の弱さがそうさせるのか「もし時が戻ったらどうする」ということを私は想像していた。そしてこのあと、私は吸い寄せられるように時間くじを買ったのだった・・・あの時間を想像したからだ。


 ・・・色々考えたけど、やはり私が戻りたいのは、あの時間しかない。


 今でも、まるで昨日のことのように思い出す時がある。高校三年の二学期の夏、ある日の放課後の出来事だった。

「三木原。俺、おまえが好きだ」

「・・・え?」

 教室の掃除中だった。その日の掃除当番だったことを私が忘れてて、先生に急遽「掃除しろ」と言われて、泣く泣く放課後に掃除をしている時だった。体操服を着てたこと、掃除道具をフル装備していたことがいまだに忘れられない。もっといい格好で告白されたかった・・・。

「一年の時から好きだった。付き合ってくれ三木原」

「え・・・で・・・でも、優人君イケメンだし、私なんかよりいい女の子なんていっぱいいるし・・・」

 宮原優人。私の同級生だけど、正直彼と私では住む世界が全く違う。彼は小さい頃からモデルとか俳優の仕事をやっていて、よくテレビとか雑誌に載っているのを見たことがあるし、彼がたまに学校に来ると、彼の話で話題は持ちきりになった。私は高嶺の花だと思っていたから大して興味を持たなかったし、あまり持たないようにしていた。でも、こんなことになるとは全くの予想外だった。私は驚きと嬉しさのあまり体が硬直してしまい、思うように口が開かなかった。

「俺のこと嫌いか?」

「いえ!そんな訳じゃないのれす!」

「・・・じゃ、はっきり言ってくれ。俺と付き合ってくれるかどうかを。お前の口で」

「え・・・」

 最初はドッキリかなんかの企画だろうと疑った。もしくは冗談かとも思った。でも優人君の顔をみて、それは間違いだ。とはっきりわかったのだ。彼は本気で私が好きなんだ。そしてもしこれが演技でも、私はそれでいいと思った。あんな必死な顔で見られれば、多分誰でもそう思うはずだ。

「本当・・・こんな・・・初めてで・・・」

「・・・」

「えとね・・・わた・・・こういう・・・であって・・・」  

 喉がカラカラだ。次に何を言えばいいかすらわからない。体操服の下は汗でびっしょり濡れてしまい、顔からも滝のように汗が流れ落ちていた。優人君はまっすぐな目で私を見ている。私のあの言葉を待っているのだ。「好き」たった二文字。あの時、たった二文字の言葉が私には言えなかった。そして突然何を思ったか、私はこのあと、

「あの・・・やっぱり無理です」

 ・・・何を言ってるんだお前は・・・この・・・この・・・


 私の馬鹿あああああああ!


「わかりましたその時間がお望みですね?」

「・・・は?」


 ナビ?でか・・・!


「ぎゃあああああ!」

 ガッシャーン

「失礼しました」

 正面にはナビがいた。というか、私の顔に張り付いていたと言ったほうが近い。私は思わず絶叫し、座っていた椅子から転げ落ちた。

「失礼ですが、三木原様の頭の中を覗かせていただきました。これも職務の内の一つであり、当選者様のもっとも幸せな時間を選んでいただくための措置であることをご容赦願います」

 やっぱり心が読めるんだと思ったけど、今更そんなことはもうどうでも良かった。さりげにナビは浮遊していたが、それももう突っ込む気になれなかった。私は倒れた椅子を起こして、座り直した。何故か怪我は全くしていなかった。地面が柔らかかったから?固い感じもしたのだけど・・・もう考えるのはやめておこう。

「・・・もうなんでもいいです。それよりも、本当に時間が戻せるのですか?」

「それは心配ありません。現に三木原様はもう、この時間から切り離されかけていますから」

「え?」

 ナビがそう言った直後だった。気付くと、私の周りを取り囲むように青い光が現れ、鈍く発光し始めた。

 ブィーン

「なにこれ・・・」

「先程強く望まれましたね、あの高校時代に戻りたいと。その願いがくじに浸透し、伝わっているのです」

「これに・・・」

 当たりくじは動いていた。当選番号七十七組、五八二六八七番。その番号の周りに描かれていた時計の針が動きだし、くるくると回転している。しばらくするとその時計の絵はくじから飛び出し、私を中心として回り始めた。それが一つ、二つ、三つと次第に増えていき、時計の回るスピードも徐々に速くなっていった。

「すごい・・・」

「三木原様、本当に時間をお戻しになるのでしたら、そのままくじに想いを込めてください。ですがもし思いとどまるのであれば、そのくじを手からお離し下さい」

「ここにとどまる理由・・・」

 一瞬、美奈子が頭に浮かんだ。彼女は私がいなくなったら悲しいだろうか?生きていけなくなるだろうか・・・多分それはない。彼女には健人君がいる。私はここにいても幸せにはなれないだろう・・・だけど、私の手には当たりくじがある。未来を掴む・・・鍵がある。そう思った瞬間、私の周りを回っていた時計達が胸の中に飛び込んできた。そして、その時計達は青白い光を放ち、私を包んで・・・


 バシュン


「いってらっしゃいませ三木原様。よいお時間を・・・」


 ・・・時計の音が聞こえていた。無数の時計が闇の中をただよい、その中を波をかき分けるようにして私は進んでいく。体に力はなく、まるで浮遊しているような感覚だ。次第に視界は黒から白に変わっていき、やがて真っ白になっていく。視界も、聞こえる音も、匂いも、そして体も。全てが白になって、白に溶けていく。黒に始まって、白に帰結する。次第になにも感じなくなって、私は白そのものになっていく・・・。


・・・ン・・・音が聞こえる・・・。


ミーンミーン・・・蝉の音・・・?


ミーンミーン

「・・・はっ」

 気付くと私はそこに立っていた。しばらく呆然としてそこに立ちつくしていたけど、次第に体の感覚が戻ってきた。そしてようやく、自分がどこにいるかがわかってきた。

「この服・・・この景色・・・この場所・・・!」

 私は体操服を着ている。勿論、掃除道具もフル装備だ。窓の外では生徒達が部活をしていて、夕日が空をオレンジ色に染め上げている。そして私の今立っている場所は・・・教室だ!

「時間が・・・戻ってる!」

 正直信じられなかった。時間が戻るなんて、本当のことを言えば信じられなかったし、実際こうして時間が戻ったという事実を目の当たりにしても、いまだに信じ切れない。どこか夢物語な感じがするからだ。

「本当だよね・・・」

 私はおもむろに視点を動かした。机、黒板、スピーカー・・・何もかもが懐かしい。黒板には今日の掃除当番が書いてある。三木原・・・私だ。机には、私の学校カバンが置いてある!その机の上には相合い傘が書いてあった。美奈子と京子・・・誰が書いたんだ。ふとスピーカーの方をみると、時計に目がいった。

「六時・・・二分?そういえば確か・・・」

 思い出した。六時二分と言えば、私が掃除をしていた時に突然・・・。

 ガラッ

 私の右横にあったドアが開いた。そう、前もこんな感じだった。あの時はぼーっとして窓からの景色をみていた矢先だったけど。そして、この後の言葉も覚えている。確か・・・。

「三木原。突然なんだが話したいことがある。時間いいか?」

(き、来たああああ!)

 確信した。優人君は私の目の前に立っていた。深刻な表情で私をみつめながら・・・時間は確実に戻ったんだ。


 そうだ・・・この時を、私は待っていたんだ。今までずっと後悔してきた、この時を。優人君に向かって「好き」という、ただそれだけのために。何度夢に見たかわからない。何度うなされたかもわからない。でも、今こうしてこの時が来た、私にチャンスが与えられたんだ。だったらやる・・・やるしかないじゃないか・・・。シミュレーションも何度もした。頭の中では百発百中だ・・・いける。私は拳を握りしめながら、自分に気合いを入れた。

「・・・なんだ」

「え?」

「何度も言わせないでくれ。お前の返事が聞きたいんだ」

 なんということだ、興奮してなにも聞こえてなかった・・・。でも、優人君がなにを言っていたのかはわかっていた。そして、なんと言えばいいのかも。そう、あの日いえなかった言葉。簡単な、でも大切な・・・この言葉だ!

 私は鼻から息を大きく吸い、口から息を大きく吐いた。体をリラックスさせて、そして視線を優人君にしっかり合わせた。優人君も私をしっかりと見ている。二人の意識は繋がっているように感じた。そして、その二人の望む一言・・・私はしっかり口を開け、

「私も好きです!付き合って下さい!」

「三木原!」

 がばっ

 私の答えを聞くと同時だった。優人君は私の元へ走ってきて、がっしりと私の体を抱きしめた。その拍子で私は持っていたホウキとバケツを手放してしまい、バケツがひっくり返って辺りが水びたしになった。でもそんなことは気にならなかった。いや、気にも止めなかった・・・優人君の温もりが私に伝わってくる。彼も私の温もりを感じている。夕日の光が二人の体を真っ赤に染め、次第に私達はその赤に溶けていく。まるで雪が溶けていくように、ゆっくりと・・・死んでもいい。この瞬間なら。


―これからあとは、まるで夢のようだった―


 文化祭で優人君が歌を歌うことになって、みんなとても喜んでいた。途中私が呼ばれて、付き合ってることを学校中にバラしてしまったのは凄く恥ずかしかった。でも、ほとんど知られてたみたい。


 遊園地へ遊びに行った。仕事が多いからたまに休みが取れると、優人君はすぐに私をどこかに連れて行こうとする。それがとても嬉しかった。でも、ジェットコースターが怖いというのは知らなかった。大丈夫、私が隣にいるから。


 写真の撮影について行かされた。そんなつもりはなかったんだけど、カメラマンさんが私を撮りたいと言うので、何枚か撮ってもらった。来月になってふと雑誌をみると、私が表紙にデカデカと載っていた。これにはさすがに驚いた。

 

 凄い結婚式だった。芸能人や、ミュージシャンとかが私達を祝福してくれて、私はとても幸せだった。そういえば美奈子を呼んだのだけど、姿がみえなかった。人が多かったから、いないように見えただけかな・・・?


 ああ・・・私は今、最高に幸せだ!


「あなたー早く起きてきて、ご飯できたわよー」

 昨日は一二時まで仕事だったから、もう少し眠らせてあげたいと思っていた。でも八時からドラマの収録があるから、これ以上寝させてはあげられなかった。優人はのろのろと寝間から出てきて、食事が用意してある居間の方までやってきた。

「うう・・・おはよう」

「おはようじゃないの。もう七時よ、収録遅れちゃうよ」

「最近スケジュールきついからな・・・お前がいないと寝過ごしてるよ」

「私は目覚ましじゃないわよ。おきる時間には起きてきてね、寝ぼすけさん」

「あいあい。今日の朝飯はなんだろな」

 今日の料理はスクランブルエッグと食パンだ。優人は卵料理が好きで、私は料理に絶対一品卵をいれる。優人はふらふらしながらテーブルの席につくと、その料理をみて目をこすりながら笑った。

「おお、こいつはいいな」

「いつもそういってる」

「悪いかよ」

 そういうと優人は、スクランブルエッグを口にいれた。顔を綻ばせながら食べる姿を見ていると、料理を作ってよかったな。としみじみ思う。

 私達は結婚した。都内から少し外れたところに、私達は小さな家を建てた。あまり大きいと、何かと不便だからと優人が言ったからだ。私もそれに賛成だった。彼とは何かと話が合う。大体優人が何かを言うと、私の考えていることとほぼ一緒なことが多い。逆もまたしかりだ。正直、これが理想的な夫婦なんだ。と自画自賛している。私は幸せだ。

『・・・しかしね。なんでこんなことやるのかねぇ』

 テレビでニュース番組をやっている。なんとなく私は、視線をテレビに合わせた。

『年々増加傾向ですからね、やはり思い悩む方が増えてきているのでしょう』

『なんでかねぇ。それでどうして自分の命を絶っちゃうんだろうねぇ。わからないよ僕には』 テレビの番組には『今増えている自殺。我々はどうするべきか』と大きくロゴが書かれ、元気そうな老人と、生真面目そうなアナウンサーの人がゲストを含めて話し合いをしていた。色々な意見を出し合いながら話をしていたけど、朝早くからやるような内容ではないなと思った。

「自殺か・・・いいことじゃないね」

「朝っぱらからこんなのやってんだな」

 私がテレビのリモコンを手にとり、番組を変えようとした時だった。ふとテレビのアナウンサーが手紙を持っているのに目がいき、なぜか私はチャンネルを変えるのをやめた。理由は自分でもわからなかった。

『これは、つい先日自殺された方の遺書です。一部抜粋して発表させていただきます。』

 そう言うと、アナウンサーはその遺書を読み上げ始めた。

『確か高校三年の二学期頃だったでしょうか?貴女が私を遠ざけ始めたのは』

「・・・!」

 全身に悪寒が走った。まるで私に言われているような感じがしたからだ。私は食い入るようにテレビをみた。

『私は正直、貴女を祝福していました。だからあの時『ようやく幸せになれたんだな。がんばったねK子』と言ったのです。でもそれを聞いて貴女がいったのは』

「あ・・・」

「どうした?」

 覚えがある。この言葉には覚えがあった、聞いたことがあったのだ。戦慄した表情でテレビを見ている私が気になったのか、優人は私に声をかけてきた。だけど私は反応できなかった。確か次の言葉は・・・そう・・・私は、

『明日から彼と学校行くから』

「うぁ・・・」

 その言葉を聞いた瞬間、私は崩れ落ちた。視線はテレビに固定され、体の力が抜け、痺れたように動けない。全身に鳥肌が立っているのがわかった。息が詰まって声が出ない。まるで取り憑かれたように体が重かった。『正直苦痛でした』『ああ、私は捨てられたんだ』アナウンサーの声が、彼女の声に聞こえた・・・美奈子だ。私はそう確信した。同時にあの時のことも思い出していた。それはあの時、優人に告白した次の日のことだった・・・。



 ピンポーン

「はーい」

 呼び鈴の音が聞こえ、私は玄関のドアを開けた。そこに立っていたのは美奈子だった。彼女はいつも通りの元気な顔で、私を見ていた。朝、いつも通学する時は彼女と一緒に行っていた。大体八時位に美奈子は私の家に来て、それから学校へ行く。今日もそんないつも通りの朝なのだけど、何か違っていた。美奈子が右手に小さな箱を持っていたからだ。

「おはよー」

「おはよ・・・ねぇ何それ?」

「何だと思う?」と、ニヤニヤしながら美奈子は言った。

「ん・・・?」

 びっくり箱を一度持って来たことがある。あの時は私が腰を抜かして大変なことになった。「もうやらない」と涙顔で言っていたからそれはないと思った。だったら何だろう?

「わかんないよー」

「だったら開けてみ」

 美奈子はそう言って私に箱を差し出してきたので、私はそれを受け取った。その包みは綺麗に包装され、リボンが飾られていた。これでびっくり箱だったらある意味凄い。

「なんだろ・・・」

 ニヤニヤしながら美奈子はこっちを見ている。私はそんな彼女をチラチラ見ながら包装を取っていった。そして箱を開けてみると、そこには時計が入っていた。

「これ・・・」

 私が欲しかったものだった。近くの小物屋で売っているもので、値段が八千円もした。当時高校生だったから欲しくても買えなかった。雪だるまをかたどった小さい時計。ちなみにお小遣いは月三千円。

「おめでと」

「え?」

「知ってるよ。昨日優人君に告られたって」

「あ・・・ウン・・・」

 もう知られてるんだ。内心そう思った。放課後で誰もいないと思って、二人で帰ったのを美奈子の友達が見たのか、美奈子が見たのか。どちらにしても世間は狭い。そう感じた。

「だからそれはその記念として。プレゼントって奴よ」

「でも、こんな高いもの・・・」

「いいっていいって」

 正直これは欲しかったし、貰えてすごく嬉しかった。でも、美奈子に悪いなとも思った。彼女もそんなお金持ちではないし、欲しいとも言っていたからだ。

「嬉しくないの?」

「そうじゃないけど・・・」

「じゃあ貰っときなよ」

「ン・・・なら・・・」

「でも、ようやく幸せになったんだね。頑張ったね京子!」

「よう・・・やく?」

 その言葉にカチン。ときた。見下された感じがしたからだ。多分、今考えてみれば結婚した未来の美奈子と、そこにいた高校生の美奈子をごっちゃにしていたからだと思う。私は彼女にオルゴールをつっかえした。

「やっぱいらない」

「もう、遠慮すんなよ」

「てか、一つ言っとくの忘れてたけど」

「どしたの?」

「私、明日から彼と学校行くから。だから明日から来ないでくれない?」

「・・・!」

 美奈子はぽかんとしていたが、次第に顔が青ざめていくのがわかった。私の顔をまじまじと見て、私が怒っていることがわかったのか、彼女は必死にこう言ってきた。

「ごめん・・・!私なんか悪いこと言った?」

「言ってない」

「じゃ、なんでそんなこと言うのよ!」

「優人がそう言ったから。別に、美奈子のせいじゃない」

 私は美奈子に時計を無理矢理渡すと、そのままドアの方まで彼女を押した。美奈子は私のなすがままドアの外まで押された。呆然とした顔で、視線が泳いでいたのがわかった。その時私は思った「ざまあみろ」と・・・何て浅ましいのだろう、私は。

「じゃ、ごめんね美奈子」

「・・・」

 美奈子は何も言わないまま私に背を向けると、そのままトボトボと歩いていった。泣いていたのだろうか、目をこすっていたのが見えた。

 そして、美奈子とはあれきり疎遠になった。一度謝ろうと思って美奈子に声をかけたことがある。その時は「別に気にしてない」と言って、笑っていたから許されたと思っていた。でも、こんなことになるなんて夢にも思わなかった。自殺する性格には思えなかったからだ。もし過去に戻って、やり直しがきくのならやり直したい・・・やり直したい?


―やり直したじゃないか、もう―


『何故あの時助けてくれなかったんでしょうか?』

「違う・・・」

『何故私を捨てたのでしょうか?私は幸せにはなれませんでした』

「違う・・・!」

『私は貴女のことが・・・』

「やめてぇぇえー!」

 言葉が胸に突き刺さる。違う・・・私のせいじゃない。幸せだったのは美奈子の方だったじゃないか!私はテレビに掴みかかるように叫び、そして吠えた。

「何でそうなるのよ!あんただって結婚したじゃない!私は・・・私は幸せになりたかった!だから時間くじを買った!あんただって私を捨てたじゃないか!自分を差し置いてそんなこと言わないでよ!私は・・・私は・・・!」

 優人が私の体を掴んで何度も「落ち着け!」と言っていたのがわかったけど、そんなのは気休めにもならなかった。美奈子が・・・美奈子が私に捨てられたと思っていた?なんで?私はそんな・・・ああ、心が痛い。体が締め付けられる。目が開かない・・・息もできないよ。苦しい・・・こんなの嫌だ、こんなの・・・。

「いやだよこんなの!嫌!嫌ああぁぁぁー!」



「はっ!」

 目を開けると、そこは私の家ではなかった。白い空間、無数に漂う時計、どこまでも続く地平線・・・忘れるはずがない、全てはここから始まったからだ。正面には彼がいた。ふわふわと浮きながらこちらに体を向け、彼は私を見ていた。

「お帰りなさいませ」

「ナビ・・・」

 私はあの時のままの服装をしていた。服は汗でびしょびしょになっていて、手に握っていたくじは、自分で握り閉めたのか、しわでぐしゃぐしゃになっている。まるで悪夢でも見たかのように・・・夢、だったのだろうか?

「いいえ、夢ではありませんよ」

「え?」

「美奈子様のことですね?」

「!」

 ナビは心が読める。というのを私は思い出した。でも私が恐怖したのはそれではなかった。そう、美奈子のことだ。やはり現実に起こったことなのか。私は硬直して、声が出なかった。

「先程、といっても、三木原様には数年前に感じるでしょうが、私がこう言ったのを覚えておられますか?『時間を戻して未来を変えるということは、必ずしも幸せなこととは限らない』と」

 勿論覚えていた。だから覚悟していた。あの時告白を受け入れても、いつかはふられるかもしれない、そうしてまた同じ人生を辿るかもしれないということを。でも私は幸せになった。優人とも結婚できたし、色々な友達も増えた。家も建てたし、子供だって作る予定だったんだ。私は幸せになった。でも、なんで美奈子が・・・!

「だれかが得をすれば、誰かが損をする。これはこの世界においての理です。お金持ちの方がいれば、貧乏な方もいる。というように、必ずどこかに『しわよせ』というものは来るものなのです。そしてその流れは、どうやっても覆せません」

「しわ・・・よせ?」

「たとえば三木原様が過去に戻り、美奈子様の仲を取り持ったとしましょう。すると『しわよせ』は別の人を求めて動きます。三木原様の知人か、あるいは別の誰かに。得るものが大きければ、その分失うものも大きいのです。だから三木原様も美奈子様を手に入れたぶん、何かを失います。それが何かは、私にはわかりませんが・・・」

 ナビははっきりとは言わなかったが正直、答えは明確だった。私は優人を失うんだ。美奈子を手に入れる代わり、私は優人を失う。美奈子と優人、どちらが大切で、大切ではないか。決まっている、どちらも大切だ。だったら私はどうすればいいのだろう。どうすれば、この答えが出るのだろう。誰も答えられはしない。時計の針の音だけが虚しく聞こえていた。

「三木原様」と、静かにナビが私に声をかけた。

「え?」

「答えが出ないのであれば、このままお帰りになるのもよろしいかと思います。」

「帰・・・る?」

「ええ、私が何故時間を元に戻したのかおわかりですか?時間くじ協会の規定では、当選者様の時間逆行後に干渉してはならない。と厳しく定められております。ですが、あれだけ嘆かれている三木原様を見て、私は思わず時間を戻してしまいました・・・正直これが初めてです。これは私の勝手な意見ですが、時間くじはただ時間を戻すだけではなく、当選者様にとって最も幸せな時間を提供し、そして、必ず幸せな人生を送っていただくものでありたいと願っているのです。」

 意外だった。今までずっと業務的な態度を取っていたナビが、いきなりこんな私事を言ってきたからだ。でも正直嬉しかった。ナビは当選者の事を大切に思っている。自分の仕事に誇りを持っていて、当選者に幸せな人生を歩んで欲しいと願っているんだ。時間を戻しても幸せになれない、だったら帰った方が幸せになる可能性はあるかもしれない。ナビはそう言っている。それもありだと思う。このまま帰って、美奈子と変わらない日常を楽しく過ごす。それもある意味幸せの一つかもしれない。でも、優人と暮らしたあの幸せな日々、毎日が輝いていたあの時間が、私の足を止めさせる。だけど優人の時間には、美奈子の・・・。

「先程の時間に戻りたいと思われるのでしたら、念じてください。それで先程の時間に戻ることができます。」

「ナビ・・・」

「そしてお帰りである場合は、そのくじを破いてください。そうすればこの当選会場は消え、イカサ坑道の方へ戻ります・・・どちらが幸せか、よく考えてください。私はもう時を戻すことはしません」

「はい」

「それでは・・・私の役目は以上です。よいお時間を。三木原京子様」

 ブゥン

 そう言ったあと、ナビの体を纏うように白い光が現れた。その光はナビの輪郭を徐々になくしていき、最後にナビは跡形もなく消えた。

 ナビが消え、ただ一人この空間に残された私。周りに浮かぶ時計の音に耳をすましながら、私はそっと目を閉じ、深呼吸をした。「チッチッチ」「スゥーハァー」「チッチッチ」「スゥーハァー」音と呼吸が重なり、徐々にこの空間と私は重なっていく。過去、現在、未来。全ては時間と言う概念で繋がっている。そして、私もその時間の中に存在する概念の一部。「なら答えは、私の中にある」私は時間に身をまかせ、そして探した。私の本当に大切な時間、幸せな時間を・・・。



「ねぇ京子・・・」

「ん?」

「ちょっち話あんだ・・・今から行っていい?」

 普通じゃない。電話越しからでもすぐにわかった。美奈子のあんな弱々しい声を聞いたのは、私は初めてだった。私が「いいよ」と答えると、美奈子は電話を切ってすぐに家にきた。多分十分とかかっていなかったと思う。玄関のドアを開けた時に見た美奈子の顔は、いまだにはっきりと覚えている。私はすぐに彼女を中に入れた。ソファーにこぢんまりとして座っている彼女は、まるで子犬のように怯えていて、私の手をずっと握ったまま離さなかった。こんな彼女を見るのは金輪際ないだろうと、その時思った。

「・・・結婚?」

「・・・うん。」

 何十分かの沈黙が続いて、美奈子が口にしたのはその言葉だった。話を聞くと、健人君が昨日の夜プロポーズをしてきたのだが、答えられず逃げてしまった。とのことだった。美奈子は私の手を強く握りながら、話を続けた。

「なんかさ・・・凄い怖くなったの」

「何が?」

「・・・私達の関係」

「え?」

「結婚したらさ、京子と距離ができる気がして・・・それが凄い怖い。私、京子のこと親友だと思ってるし、大好きだから・・・。だから嫌なの!一番の友達がいなくなるなんて!そんなのだったら私、今のままでいいし、結婚なんかしたくない!でもあいつのことも好き!プロポーズされた時、凄い嬉しかったし!でも・・・。どうしたらいいの?どうしたらいいの・・・?わかんないよ・・・私、壊れそう・・・」

 嗚咽交じりに美奈子はそう言った。彼女らしいと私は思った。純粋なんだ。純粋に健人君が好きで、そして私のことも好き、だからどちらを優先するという考えなんてできないし、選択もしない。だからどうすればいいのかわからないんだ。私は震えている彼女の背中をさすり、こう言った。

「しなよ」

「え?」

「した方がいいよ。健人君のことも考えてあげなよ。せっかく勇気を出してプロポーズしてくれたんでしょ?」

「京子・・・」

「それに、結婚したからって私たちに距離なんかできないよ。昔からずっと一緒だったじゃない。だからこれからもずっと一緒、だって私たち親友だもん」

「京子!」

 私が喋り終わった直後だった。美奈子は私を強く抱きしめ、大きな声で泣いた。わんわんと、まるで子供のように。右肩がじわじわと湿っていくのがわかった。私は美奈子の頭をさすりながら、しばらくそのままでいた。

 ・・・何十分経っただろう。美奈子はようやく落ち着いたのか、私から離れた。彼女の涙が私の右肩をぐっしょりと濡らしていた。

「馬鹿だよね、京子は」

「はは・・・第一声がそれか」

「本当、馬鹿。でもそれが大好き」

「美奈子・・・」

「本当、嘘じゃないから・・・一生親友だよ、京子!」

 そう言うと、美奈子は私に向かってVサインをした。いつも通りの元気な顔だった。私はそんな彼女を見て、本当に幸せになって欲しいと願った。そうだ、本当にそう願っていたのだった。私は・・・忘れていた。

「・・・私が言ったんだったな・・・」

 ゆっくりと目を開け、私はそう呟いた。そうだった。全ては私のせいだったんだ。それを忘れて美奈子を羨んだり、そして嫉妬したり・・・。この白い空間は私自身だ。空虚な自分自身。そして、絶えることない欲望が渦巻く空間。ああ私は、自分の曲がった欲望を叶えるために、本当に大切なものを捨てようとしていたんだ。

「本当、私は馬鹿だよ・・・美奈子」

 右手に持っている当たりくじは、かすかな光を放っていた。優人、美奈子、天秤に乗せられた二つの時間。「決断を」とせかすように、その光は点滅している。決断・・・答えは決まっていた。

「私は・・・!」











『 ・・・しかしね。なんでこんな事やるのかねぇ』

『年々増加傾向ですからね、やはり思い悩む方が増えて・・・』

 ブツッ

 テレビが消えた。その正面に私は立っていた。リモコンをテレビに向け、静かに私はそこにたたずんでいた。

「ん?京子。どうしてテレビを切るんだ?」優人は不思議そうな表情で私を見ている。

「だって、朝からこんな番組見るなんて気分悪いじゃない。それに、あなたと静かにご飯食べたいなって思ったの」

「なんだそりゃ」

「いけない?」

「んや、いいよ」

「ねえ」

「なんだよ」

「愛してる。あなた」

 私は優人に溢れんばかりの笑顔を向け、そう言った。心からの笑顔だった。

 ・・・私は優人を選んだ。自分が幸せでなくても、美奈子がいてくれればいい。と思いもした。でも、私は幸せになりたかった。他人が幸せだとしても、自分が幸せでなければ生きる意味なんてない。そう、たとえ・・・たとえ親友を蹴落としてでも!


「じゃあ、行ってくるわ」

「行ってらっしゃい」

 玄関に出て、優人は私に軽くキスをしたあと、クルマに乗って仕事に行った。私はクルマが見えなくなるまで手を振り、優人を見送った。

「ふう・・・」

 ふと正面を見ると、道路越しを挟んで立っている街路樹に目が行った。その街路樹の横に、私は彼の姿を見た気がした。

「ナビ・・・」

 目の錯覚だったのかもしれない。すぐにその姿は消えた。私が幸せかどうか確認しに来たのだろうか?「幸せですか?」今ならはっきり言える。

「幸せだよ」

 後悔はしていない。でも、覚悟はしている。私は一生、美奈子を心に引きずって生きていくだろう。でもそれでいい。それが、私の選択した時間だから。そしてこれが、私の望んだ、幸せな時間だから。


 帰ってみると、もう夜の一二時だった。正直、時間の感覚なんてわからなくなっていた。私はアパートの駐車場にクルマを止め、その中で一人、自分の選択について考えていた。

「これで・・・良かったんだよね。」

 納得したはずだった。それでもどこかやりきれなかった。

 私は美奈子を選んだ。自分が幸せになって、美奈子を不幸にするなんてできなかった。臆病。と言われたらそれまでだけど、美奈子を犠牲にする位なら自分が犠牲になった方がいいと思ったからだ。それでも、優人を選ばなかったことに多少なりとも後悔はあった。破いた当たりくじが助手席に散乱していた。もう、戻れないんだ・・・。

「考えたって仕方ないか」

 私はクルマの中で一人、そう呟いた。そう、考えたって無駄だ。当たりくじは破いたし、もう時間くじも当たることはないと思う。なら、全てが夢だったと思えばいい。少しの間、楽しい夢を見ていたと考えれば、幾分マシに思えるはずだ。「そうだよね、美奈子」私はそう言って自分を励ました。

「何が?」

「ぎゃっ!」

 気付くと、運転席のパワーウインドー越しに美奈子が立っていた。驚いている私を不思議そうな顔で見ている。私は顔を若干赤らめながらドアを開け、外に出た。

「どしたの京子?変な顔しちゃってさ」

「美奈子・・・」

 ひどく懐かしかった。過去に戻ったり帰ったりしていたから、実際会うのは数年ぶりだったからだ。私は美奈子の顔をしばらく見ていた。彼女は「どしたの?」「大丈夫?」と心配そうに声をかけていたが、正直耳に入っていなかった・・・何も変わっていない。

「美奈子!」

「うわ・・・ちょっ!」

 私は美奈子を抱きしめた。彼女の温もりが私の体に伝わってくる。「生きてる・・・死んでない!」私はそう叫んで、そして泣いた。

「ちょっとまってーよ!」

 ゴンッ!

 鈍い音と衝撃が私の頭に響いた。美奈子は私を振りほどいて、そのまま警戒するように一歩距離を置いた。

「い・・・痛・・・」

「突然なにいってんのよ京子!私が死んだとか生きてるとかさ」

「ご・・・ごめん」

「全く・・・もう、せっかく感動の再会をさせてやろうと思ったのに、これじゃ台無しじゃない!あーもーいいわ!」

「・・・感動の再会?」

 美奈子は時間くじのことは知らないはずだ。だったら一体・・・。

「もういいよ出てきて。京子が変なことして台無しにしたから、ムードも何もないけどね」

 私のクルマの横に、いつの間にか美奈子のワンボックスカーが止まっていた。運転席には健人君が笑ってこっちを見ている。そのクルマの後部座席の方に向かって、美奈子はそう言った。

 ガチャ。ウィーン

 後部座席のパワースライドドアが徐々に開いていく。窓にスモークフィルムが貼ってあって、おまけに夜だったから乗っている人の顔が見えなかった。でも、少しずつドアが開いていき、姿が見えてきた。そして、そこにいたのは・・・
























「なるほど、結局は彼と出会う運命だったのですね」

 光の円に写る映像は、美奈子達を見下ろすように映っていた。ナビはそれを見ながら、若干嬉しさを含んだ声でそう言った。

「ですが、どちらが良いとは私は申しません。全ては、三木原様がご選択された未来ですから」

 白い空間。時計の音だけが鳴る白の世界。彼は京子の結末を見届けたあと、その円を消した。そしてこちらに振り向いた。そう、我々の方へ向かって・・・。



 さて、みなさんはどちらの結末をお望みですか?時間を戻して幸せを掴みますか?それとも、今を信じて生きていきますか?もしも時間を戻したいとお望みでしたら、我々の販売する「時間くじ」をお買い求め下さい。「幸運」であれば、過去を戻すことができるかもしれません。



 ですが、お気をつけ下さい。「幸運」はあくまでも幸せになる「きっかけ」でしかないのです。幸せを掴むのはあくまでも「あなた自身」であることを忘れないで下さい。








それでは・・・よい・・・え?








 三木原様がどちらの未来を選ばれた?それは私の口からは申せません。そう、あなたのご想像にお任せします。それもまた「あなた自身」の選択なのですから。それでは、よいお時間を・・・。


かなり昔に書いた小説です。表現も稚拙で、文章もまだまだ改善の余地がありまくるものです。ですが、へたくそなりに頑張って書いてます。もしもこの作品を読んで、面白かったと思ってもらえましたら、それだけでうれしいです。これからもちょこちょこと作品を書いていくつもりですので、よろしくお願いします。

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