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第4章:日本海の敗北 2

第4章:日本海の敗北 2

奪われた空 —— 2030年5月18日、日本防空の終焉

________________________________________

2030年5月18日 午後2時ちょうど——

航空自衛隊に、かつてない命令が下された。

「全面出動」

これはスクランブルでもなければ、演習でもない。


2030年5月18日 午後2時。

小松、新潟、輪島——

日本海沿岸の全航空拠点から、

航空自衛隊の戦闘機が次々と大地を蹴った。

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その轟音は、“国の存続”を告げる空の咆哮だった。

•F-15J(長距離迎撃)

•F-2(対艦攻撃・多用途戦闘機)

•F-35A/B(ステルス性能・電子戦対応)

•E-2C(早期警戒)

•E-767(空中管制)

総数:220機超

任務:制空権の奪取/舞鶴艦隊の直掩

「日本海上空に空を創れ——

敵に、海も空も渡すな」

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▰ だが、その空は、既に獣に喰われていた

中国は、そのさらに上を行っていた。

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J-20A(ステルス制空戦闘機)

J-16D(電子戦対応・制圧機)

J-11B改(高高度空戦型)

KJ-500(早期警戒機)

H-6K改(戦域爆撃支援)

投入機数:420機

日本の倍。

さらに、各編隊の背後には、

ドローン母艦から放たれた無数の自爆型小型UAV群。

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▰ 空の炎、開戦と同時に交錯

午後2時18分——

日本機が日本海中央空域へ進出。

前方200km圏に、中国の制空編隊がレーダーに現れた。

数、規模、展開速度——すべてが異常。

「J-20A編隊、4波確認。

機数多数……推定、1編隊あたり15機以上!」

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「こちら“あけぼの07”!敵、視界に!ステルスなのに、編隊で堂々と!」

「……バカか、正面から潰す気か!?違う、これは“上から被せる”気だ!」

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▰ “空の密度”が違った

中国機は単に数が多いだけではなかった。

•電子戦型のJ-16Dが、F-35の探知範囲を攪乱

•J-20Aが高高度から俯角で侵入

•ドローンが下層空域を縦横無尽に埋め尽くし

•舞鶴艦隊上空の防空網を“空ごと剥ぎ取る”構成

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F-15Jミサイル発射直前、J-20を囲むようにドローンが現れ、ロックオンが外されてしまった。

F-2は、ミサイルを発射後、旋回中に、ドローンによる自爆の余波で墜落。F-35Bは、一度の交戦で43の無人機に追われ、バレエダンスの末に墜落。

E-767は護衛の機影を失い、

敵爆撃機のデータ照射を受けた後、通信を絶った。

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▰ “舞鶴の空”が消えた

舞鶴艦隊の頭上には、もう“味方の空”がなかった。

支援するはずの自衛隊機は、燃料を使い果たして退避し、

退避先の滑走路は、既に無人ドローンによる機能不全にされていた



▰ 敵は、国内にいた

最も恐ろしい事実は——

このドローンたちは、空母だけから来たわけではなかった。

攻撃型無人機の多くは、すでに日本国内で製造されていた。

その数、実に10万機

•登録は“産業用航空機材”

•登録地は、地方の過疎地、旧工場地帯、テクノロジー特区

•製造者名義は、複数の中国系企業の“現地法人”

違法ではなかった。

兵器ではない。

ただの“ドローン”だったのだから。

だが、爆薬は違った。

中国は外交特権を利用し中国から使節団が日本を訪問するたびに爆薬、爆薬の材料をもちこんでいた。中国の潜水艦が、沿岸部深海で定点ホバリング。潜航機(UUV)を使って、**密かに各地のドローン工場に爆薬を“受け渡し”**もしていた。

組み立て、武装、発進——

日本国内から放たれた、“自国製の敵”が、滑走路を日本各地の橋を、発電所を襲った。

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▰ 滑走路への“見えない爆撃”

舞鶴、小松、築城、百里——

いずれの滑走路も、爆発音とともに機能を失っていった。

•滑走路中央部に

•誘導灯が

•燃料タンクが

飛べない。戻れない。

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「これは**“帰還不能戦術”**だ。」

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▰ 最後の通信

百里基地上空を旋回していたE-2Cが、

最後の通信を残した。

「当機、着陸不能。滑走路使用不可。

燃料残、わずか。進路変更検討中——」

「不時着可能地帯、確認できず……高度を保てない——」

【通信途絶】

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▰ 空の喪失

その日、航空自衛隊が失ったのは、機体ではない。

“空”だった。

帰還不能。補給不能。離陸不能。

それは、空を失うという現代戦における最も恐ろしい形。

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「敵は、空を支配したわけではない。

空から“希望”を奪ったのだ。」

2030年5月18日 午後3時54分。

日本海上空の制空権は、完全に喪失した。

舞鶴艦隊上空から飛び立ったF-2もF-35も、

いまや、帰る“空港”を持たない、彷徨える矢となっていた。

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▰ 滑走路喪失

小松、百里、築城、輪島、新潟——


着陸できない。帰れない。助けもない。

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▰ それでも、空は飛び続けていた

燃料警告音が、次々とコックピットに響く。

一部の機は、日本アルプスを越え、本州中央部に向かった。

そこに、唯一の“未破壊空間”が残されていた。

「——高速道路だ」

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▰ 死を越える“着陸”

午後4時12分。

東北自動車道・下り線 区間95kmポスト——

交通管制センターが、**「軍用機が進入してくる」**との通報を受けた。

上空から、F-2がゆっくりと降下してくる。

車線に向かい、ギアを出す。

「接地確認。——ブレーキ故障。止まらない!」

前方の乗用車が必死に路肩へ避け、

道路脇の電光掲示板が翼にひっかかって吹き飛んだ。

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「機体、破損。だが、生きて降りた。」

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別のF-15Jは、北陸道上り線・敦賀インター手前で着陸を試みるも、

雨に濡れた路面でタイヤがロック。中央分離帯を突き破って停止。

パイロットは脱出時に肩を負傷したが、命はあった。

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▰ 高速道路という“滑走路”

この日、日本列島で確認された、高速道路への着陸数:7機

•着陸成功:5機

•衝突大破:2機

•民間車両との接触事故:3件(死者なし)

•整備可能:0機

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「彼らは帰る場所を失った。

それでも、地に降りようとした。

たとえアスファルトが滑走路でなくとも——

生きて“再び飛ぶ”ために。」

________________________________________

▰ 最後の一機

午後4時58分。

中央自動車道・双葉SA上空。

F-35A「さつき09」、燃料残5%。

滑走距離:2500mは必要。

前方に見える、高速道路の直線区間。

だが、そこには観光バスとトラックが立ち往生していた。

「当機、着陸断念。山間部へ進路変更。

高度保持不能——緊急不時着を試みる」

——通信、途絶。



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