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14.ヴァルリッカ落城


 南門は静かに開いた。

 内側に積み上げられた廃材や瓦礫も撤去を進めて、数人だったら十分に動くことのできる隙間が出来上がっている。


「合図を」


 自分の言葉に反応し、城門の上で松明が振られ始める。

 (さぁ、来い!)という自分の祈りを味方に続ける中、暫く続いた合図に少し遠い所で影が動いた。その動く影は徐々に増え始め、徐々に夜陰に紛れて近づいて来る。隣にいたフレディからも声が上がり、徐々に周りの者達も味方の存在に気が付き始めた。

 もはや誰にでも分かるような距離であっても、この南門で警鐘は鳴らない。最も見やすい位置にある南門とその両側の尖塔は、既に我々が占領している。


 下から落とし格子を巻き上げる音、続いて外門の閂が外される音、そして門が開く音が響いた。

 次々に雪崩れ込む味方の姿は、暗闇の中でも目立つほど黒い。その軍団が次々に入って来る。おおよそ50名以上が城内へと入ったところで、数える事を諦めた。恐らく200程度という事しか分からない。既に周囲に小部隊となって散り始めた部隊は、尖塔や城壁の上へと駆け上がっている。


「近衛騎士団の…?」

「団長、リデルです。ようこそ、ヴァルリッカへ」


 川近くに潜伏していたせいか、門の下で出迎えた味方は泥だらけであった。指揮官クラスの人物であれば見覚えがあってもおかしくないが、顔まで汚れているせいか分からない。ただ自分を見て驚いた顔をしていたので顔見知りだろう。


「我々はこれから全力で城内を掻き回します、リデル殿はこれからどうされますか?」

「西門へ向かいます……向こうの兵を迎え入れなければ」

「では、私から兵をお貸し致しましょう…どれほど必要ですか?」


 悩みながらも「20」と答えた。合わせて30を超えるとなれば奇策を弄すことなく、門とその周辺を制圧できるだろう。


「わかりました、こいつらを使ってください」


 融通された兵士達と共に、我々は西門へと向かった。余計な細工もせずに堂々と城内を走ったのだが、すれ違う兵士達が自分達を呼び止める事は無かった。城内は火災で大混乱で、既に南門から侵入している事に気づいていないのだろう。


 西門の制圧はこのヴァルリッカの戦いで、最も楽な仕事であった。

 優秀な部下たちが自分達より数の多い敵相手に、静かにそして素早く片付けていく。自分も弓で多少の援護はするが、奇襲を受けた西門は直ぐに我々の手の内に落ちた。西門に50人以上、周囲の尖塔にはそれぞれ10人以上いたのだが、あっという間だ。火災で予備兵が軒並み駆り出されている効果は大きかった。

 我々は素早く門を開き、城外の味方に合図を送る。この西門は河川港と繋がっている南門よりも多くの兵を隠す事の出来る沼地だ。先程よりも多くの影が動くことで、大地が風で靡いたように見える。


 南門の倍以上の兵士が次々に西門から流れ込み始め、その勢いはとどまる事が無かった。この数は500近くいるように見える。彼らは同じように城壁の上や尖塔、城内へと走り始める。既にヴァルリッカ落ちたも同然だった。


 我々はひと仕事を終えて、西門で休憩することとした。

 城門の上から見る景色は酷いものだ。街は焼け、そこかしこから悲鳴と怒号とウォークライが聞こえる。一応略奪の類は全て禁じられている為に変な事態は起きないはずであるが、事後の自分の処分も気にせずそれに走っている者もいるだろう。それが戦争というもので、それが興奮というものだ。そして、その混乱を起こしたのも我々だ。



 結局我々は警備にかこつけて、翌朝まで西門から動くことは無かった。

 あの時抜け道に入った11人が全員走り続け、戦い続けた為に疲労困憊で一つも気力が残っていなかったからだ。それにたった11人ぽっちが、この状況から戦況を変える訳がない。


 占拠した城の砦内で一晩越しに近衛騎士団の男達に会った。エドガーやカールを始め口々に「心配しましたよ!!!」「大丈夫か!?」などと声をかけて来る。彼らには待ちぼうけを食らわせる形になってしまったので申し訳ない事をした。ただ、今回の戦闘や放火に参加せず、良心と戦う必要のなかった彼らを羨ましく思う気持ちもある。

 全員集まったところで、エメリヒ第三王子と東方大公の下へと復命へ向かう。正直なところは、その時点で疲れと眠気とで朦朧としていたので、2人に言われた内容は大して覚えていない。「よくやった!」「素晴らしい活躍だ」などと、それぞれの口から誉め言葉が流れ続けたが、なんとか謙遜して返すので精一杯だった。

 今はただ抜け道を通る時にかぶった砂と城内で被った埃と、火をつけた時に受けた煤を洗い流して横になりたい気分だった。


「城内の火事はもうそろそろ収まるそうだ」


 それだけはハッキリと聞こえたのを覚えている。

 別に罪悪感が消える訳ではなかったが、昼前に収まる程度の火災で済んだのなら良かっただろう。「ご苦労であった」の一言で、我々は解放された。今は全て洗い流したい気分だ、体についた汚れも記憶も何もかも。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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