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13.火の手


 素早く片付けた男達から使えそうな鎧を頂き死体を隠した。その上で地下道の入り口を、上にすぐに動かせる棚を置いて塞いだうえで、我々は城内へと動き出す。

 どうやら石像は城壁に取り付いた我々の頭の上に降らせるための物らしく、ある程度の大きさに砕いたうえで、手押し車で運搬していた様子だ。それにならい我々も適当な大きさの石をわざわざ積み込んだ。これで砦内を乗り切る。


 我々は静かに急いだ。

 城内で出会う兵士は少なく皆城壁の守備に就いているのは本当だった。その代わりに侍女のような者達が着慣れていない鎧を付けて、頼りない武装をしている。その姿からは焦りと緊張が伝わって来た。何せ、我々の姿をみても全く気に掛ける様子も無く見逃すのだ。

 そのお陰もあって素早く砦内の門をくぐり、城内へと歩みを進めることが出来た。その後は適当な場所に手押し車を放置し、夜襲の歓声が聞こえる方向へと駆け足を始める。

 

 徐々に大きく聞こえはじめるお互いのウォークライは、我々が徐々に戦闘へと近づきつつあることを示している。夜襲が始まってからそれなりの時間が経っているのは間違いない。早いところ我々の仕事を始めるべきだろう。


 城壁の上で揺れ動く松明が少し見える場所から火をつけ始める。燃えやすいものはある程度撤去されているが、松明を残ったものや建物に近づけてしまえば関係ない。

 徐々に火の手が上がり始める城内を駆け回り、新しく火をつけていく。これはなかなか罪深い事をしているような気になる物だった。

 兵糧庫は城の反対側で安全な場所である西と南側に寄っていた。そちらで火を起こすと、兵士が寄ってしまう為にできない。

 いくら戦争中といえど、城内には普通に暮らしている者達がいる。その住人の自宅に対して火を放っているのだ。自分達のせいで焼け死ぬ者達もいるかもしれない。もはや放火犯と変わらない事をしているのだ。人殺しと変わらない事もしているのだ。我々が勝つために手段を選ばないのは正解なのだろうかと自問する。


 そして、答えが出ないままにひたすらに火を点け続けた。

 石造りの家には松明を直接投げ込み、藁が置いてあった場所ではいくらか抱えて持ち運んで利用した。そのまま北から東門の方向へと移動し、大体つけ終わった頃には星空が隠れるほどの高い煙が立ち上っている。これで城外の味方に、我々が城内で動いている事が伝わっただろう。


「これでいい!離れるぞ!!そのまま南へ行く」


 急いで火元から離れそのまま南下する。

 途中何度も南から来る兵士とすれ違った。時たま消火を手伝うように言われたが、その度に適当な理由をでっち上げて、そのまま無視するように進んで行く。


 そのまま南の城門へと到達すると全員がそれぞれ2人組に別れ、少し離れた場所にある尖塔の下から上へと駆け上った。自分とフレディは門の上へと向かう。


「おい!なんだお前ら!!」

「伝令だ!城内で火災が起きている!!南門から消火に兵士を回してくれ!!!」

「はっ?」

「早く!何人出せる!?」

「もう出してるんだよ!これ以上出せない!」

「だったら上に聞いてくれ!何人出せるんだ!?」


 急かすように話す自分に焦ったのか、兵士は「何人って…隊長!!何人出せますか!?」と上の階に登りながら話かけている。そこから暫く「またか!?」「本当なのか?」「どこの奴だ?」だったりと疑う声が聞こえて来るが、周囲の尖塔から次々に来るお伺いの兵士に、段々と隊長と呼ばれた男の断りが弱くなってきた。周囲の尖塔にも圧を掛けるという我々の策が嵌った形だ。


「分かった!こちらには一度も奴らは来ていない、50だ!50人を連れて行け!」


 上階から自分達の下へ降りて来た隊長と呼ばれた男は、南門に詰める人間を15人残して出した。

 それを我々は連れて行く振りをして、途中で他の場所に伝令に行くと言い残して分かれる。そのまま取って返すと、再び南門の様子を伺える場所に集合した。


「構造は見たな?」

「はい、隣の尖塔は5人程いました。そちらも倒さなければ、開門は難しそうです」

「よし…南門を10人で襲う、その後に両側の尖塔だ。片付いたら松明で合図を出して門を開ける」


 静かに頷いた皆の顔を静かに見まわした…我々はここからが本番だ。

 先程は騒々しく入って行った南門に息を殺しながら静かに入り込んだ。一階層には4人が狭間から外を見ている。その背後から静かに忍び寄った4人の部下が、静かにそして同時に喉を切り裂き倒した。

 その間に残りの者達は上の階層に登り、2人の兵士を見つけて同じように倒す。そして一番上の階層にいる3人…南門の隊長とその脇を固める2人がいた。自分とフレディともう一人のアーチャーで3人を狙い、暗闇の中で息を合わせて放たれた矢はそれぞれの命を奪う。


 その後は流れるように決められた作業を行うかの如く南門を制圧し、両側の尖塔を人数を半分に分けて開門の準備が整った。もはや、このヴァルリッカは我々の手に落ちたと同然だった。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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