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12.城内


 自分の顔面に大量の血が滴り落ちて来る。手にかかる目の前の男の全体重。

 手首の骨が折れ曲がる前に剣を傾け、なんとか男の体を横へ避けた。そのままの勢いで梯子を駆け上がり、抜き身の剣を転んだ男へと突き立てる。

 その男は不意を突かれたのか、焦りで未だに剣を半分も抜けていない。両手で首に突き立てた剣の先から伝わる男の動きは、暫く抑えていると静まった。ゆっくりと抜き取った自分の剣は、血が蝋燭の光を反射して、静かに暗く光っている。


「何してる!!」


 良く響く広い空間だった。

 声の主は100フィート(約30メートル)先に手押し車を押したままの二人の男だった。彼らは鎧を着ていて腹部にある紋章は見えないが、どこぞの貴族の騎士なのかもしれない。

 二人の男は自分の足元に転がる二人の死体を見て、手押し車から手を放して慌てて剣を抜く。


「何者だ!?」


 ワザとなのか焦っているのか分からないが、この状況で誰何される。味方の死体の側に立つ血に濡れた剣を持つ男はどう見ても敵だろう。そんなことを考える程度には余裕があった。


「…フレディ」


 剣を土がむき出しになっているたった今這い出た穴の横に突き立てて、視線をフレディに送り手を伸ばす。まだ顔しか出ていないフレディだが、見ただけで状況を察したらしい。肩にかけていた弓を上に投げるようにして、自分に渡してきた。

 それを空中で受け取り、洞窟を抜ける為に背中に回した矢筒に手を掛けた。自分の様子を見てようやく敵と明確に認識し、剣を持ち走り出した二人の男がこちらに迫る。


 あいつらが自分の首に剣を振り抜くまで、たった100フィートの距離で大した時間は無い。だが、それは同時に矢を避ける時間も無いという事だ。


 引き抜いた二つの矢を弓に素早く番える。


 マジックアローを使う必要もない程の距離だ。走り出した男達の油断した表情も良く見えていて、集中できていた。彼らは自分がわざわざ持ち出した弓を見て、自分達に分があると判断したようだった。


 1本目を前傾になってこちらに駆ける左の男の眉間に向かって素早く放ち、そのまま中指と薬指に挟んだ2本目番えて二人目の振りかぶり始めて露出した首に向かって放つ。

 外す理由の無い距離。狙い通りに命中した二つの矢が2人の命を奪う。


 眉間に刺さった男はその場に頭から滑り込むようにして倒れた。首に刺さった男は最後の力を振り絞り、思い切り剣を振り下ろしてくるが、もはやその剣に勢いも力も無い。避けるのは簡単だった。そのまま足元の剣を引き抜いて止めを刺す。


「行くぞ!」


 手を差し出してフレディを引っ張り上げる。その後に続く9人もだ。


「本当にやるんです?人数が…」

「これを見ろ、今やらなきゃ、必ずこの道は塞がれる」


 足元に転がる4つの死体を指さして皆の目を見る。


「夜襲が始まってるんだ。この機会を生かすしかない」

「でも、門を開けるには敵兵士が多すぎます…」

「なにも、いま攻めている2つの城門である必要はない。裏だ、火の手を東門と北門の裏で起こして、西と南の門を狙う」


 東方大公は出発前に、足場が悪く包囲できていない西側と河川港に面する南側に小部隊を伏せてくれると言っていた。それを最大限利用するためには、西と南門から兵を引きはがさなければならない。


「ですが、我々は10人ですよ!?」

「10人で攻城戦を終わらせられる可能性があるなら、やるべきでしょう?」


 渋々といった様子で従う東方騎士団出身者に比べて、同調するフレディは気合が満ち溢れる顔をしていた。自分達だけの力で、戦局を変えるという経験を共有しすぎてしまったのかも知れない。カーマイン辺境伯の下で随分と無茶をさせられたのだと今更ながら思う。


「死体を片付けよう。もっと人数がいた筈だ、そいつらを待ち伏せするぞ」


 まずは周囲の状況を観察すると、どうやら我々が出たのは砦内の中庭に繋がる渡り廊下のような場所であることが分かる。両側に石像が並べられるほどの広さと天井の高さを持った空間だ。両側には腰より上の位置から天井の高さまでの大きな窓がある。それはガラスがはめ込まれている高級なものだ。

 背後には松明の火に照らされた中庭が控えていて、目の前には城内へとつながると思われる出入口がある。

 やる事が決まった我々は、死体をまだ倒れていない石像の裏へと隠しその鎧を剝ぎ取って自分達の物とした。そして大きく開いている出入口の両側に騎兵たちを陣取らせ、アーチャーの自分とフレディは少し離れた位置のまだ倒れていない石像の裏に身を隠した。


 完全に準備が終わってから大して待たずに、入り口から話し声が渡り廊下の中へと響いて来る。おそらく4人以上の男達。鉢合わせする寸前だった。

 城が攻められている最中だというのに、戦闘に参加していないからか呑気に話しながら渡り廊下へ入った男達は、「おーい、あいつらサボってんのか!?」などと文句を言っていた。


 5人が入って来る。その先頭を見逃し、最後尾が渡り廊下に入ったところで松明を消して陰になっている場所から味方が飛び出し切りかかった。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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