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11.静寂と


 一番上まで登った木板にフレディがゆっくりと手を掛けて押しあげた……ように見えたのだが、一つも身動きをしていない。気のせいだったのだろうかと思ったが、フレディは静かに松明を振って自分を呼んだ。


(どうだ?)


 梯子を慎重に登り、身動きだけで話を聞こうとジェスチャーすると、フレディは静かに(動きません)首を振った。では協力して持ち上げる事を試さなければならない。

 2人の体重に耐えられなさそうな梯子を更に登り、狭い円筒の中で二人で並ぶ。もはや恋人のような距離で密着している。木板に力を掛けようとした時に足元の鉄梯子が軋んだ気がして、フレディと踏ん張る段を変えて、もう一度木板に力を入れる。


 円筒のレンガに背中を任せて、鉄梯子で足を踏ん張り、手先から肘までに全体重をかける勢いで踏ん張ってみる。フレディと二人で思い切り力を入れているが、木板はミシミシと音を立てるだけで動く気配はしなかった。

 そこで更に体を寄せて、首から肩にかけてを木板に密着させて思い切り押してみた。今度は木板が軋む音と共に少しだけ持ち上がった気がしたが、そう思いたかっただけなのかもしれない。力の限り押してみても変化は無かった。

 感覚として木板自体の固定はないが、東方大公の言っていた通り、上に重たいものが乗っているといったところだ。その間には少し隙間が有りそうで、そのお陰で人間の力で押しても動いていると思われる。


(どう思います?)


 口の動きと目でフレディは自分の動きを伺っている。

 これ以上は無駄だろう。夜襲で出る味方の犠牲には申し訳なさがあるが、これ以上出来る事はなさそうだった。


(撤退しよう)


 静かに首を振り、目線を下げてフレディに意図を伝えた。

 頷いたフレディは自分より今度は自分より先に下り始める。


 その時だった。上から話し声が響いて来た。この地下で聞こえるという事は、余程大きな声で喋っているのだろう。それを聞いたフレディは動きを止めて(どうしましょう)といった表情で自分を見上げた。


(静かに…)


 目線で合図を送ると一切物音のしない地下に、上から大人数が歩く足音が響く。それが徐々に近づいて……多分上は広い空間なのだろう。そこで何か人に指示をしているような声が聞こえた。

 更に少し待つと、3~4人の足音が自分達の方に近づいて来た。梯子の裏に回して固定した左手に松明を持ち換えて、自らの腰から静かに剣を抜き取る。


(バレたか?何故?バレていない?では何のためにここに大人数が?)


 考え始めた途端に響く『ドン』という鈍い音と、何かが砕ける破壊音。それがいくつか続く。

 頭の上では城を破壊しているような大きな音がしているのに、自分の頭の中だけに自分の唾を飲み込む音が響く。


 そして更に近づいて来る数人の足音。

 足音は自分の頭の真上で止まると話し始める。内容は聞き取れないが時々「勿体ない」だとか、「いくらになるんだ?」とか言っているのが聞こえる。自分の城が夜襲を受けているにもかかわらず、どうにも楽天的すぎる奴らだ。

 軍議では城内のほぼ全ての兵士が城壁で戦っていると話していた。もしかしたら、上にいるのはその隙を狙う盗人なのではないだろうか?それならば、この大きな音が鳴っている隙に下まで降りてしまうしかない。


 フレディと目を合わせて一歩目を踏み出そうとした時に、頭の上で何かが倒れた大きな音が響いた。

 その音の正体は予想することが出来る。東方大公が言っていた、隠し通路の入り口を塞ぐ石像であろう。それを塞ぐ木板の存在に気付くのも時間の問題だ。彼らは確実にこの通路を塞ぐことは予想に難くない。


 となれば、自分がしなければならない事はひとつ。今、この時に飛び出して城内へと乱入する事だ。

 そこからゆっくりと時間が流れたように感じる。頭上で何かに砕けた石像を積み込んで、運び出していた。その間に静かにフレディが再び梯子を登って来る。その肩には下に置いて来た自分とフレディの弓が引っかけられていた。次に、自分達の上にいる奴らが更に槌で石像を砕いているような音。その間に砕いた石像が徐々に運び出されるような喋り声。


「ん?なんだこれ」


 木板を覗き込んでいるのか、上にいる兵士の声がはっきりと聞こえた。


「補強でもしているのか?他のところは?」

「……無いな」


 兵士は取り付けられている鉄の取っ手を引っ張り上げようと力を入れたのか、頭上の木板が軋み土埃が顔の上に落ちて来た。顔に土埃が降ろうとも、目に入ろうとも決して目を離さない。

 

「お前も手伝えよ」

「ほら、せーの!!」


 2人で引っ張っているのか、更に何度か軋む音が響く。面倒くさくなって叩き壊さない彼らは、自分達より相当辛抱強い。4回目、5回目と木板が軋んで……


 目の前に現れたのはまだ寒さが残る夜に汗ばむ男。髭面のそいつは目が合うと、目が落ちそうなほど見開いた。もう一人の男は引っ張る時に転んでしまったのか足だけが視界の隅に見える。


 驚き仲間を呼ぼうと口を開けた男に、剣を突き出した。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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