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8.ヴァルリッカ


 進軍を再開した我々東軍は、各地に少数の守備兵で籠る城を無視して前進している。

 目標としているのは王都の攻略であるが、その前に1つの障害が立ち塞がっていた。王都から北に5日に位置するヴァルリッカという中規模の都市だ。

 このヴァルリッカは街の規模に似合わない大きな城を持つ古い都市で、過去メイズ大公国との戦争があった頃、王都オレンジを奪取し旧王国を滅ぼした後の対メイズ大公国戦争の最前線だった。

 そのため王都と連携するように太い街道と街を包み込む大きな城郭を持ち、その城壁に並ぶ尖塔の数は100を超えると言われている堅い城だ。


 ここに1500の兵士が籠城していた。指揮官は不明。

 街道上に存在するこのヴァルリッカという都市を、原野を無理やり迂回する方策もある。が、後背面に1500の敵兵を抱えて進むのは怖い。よって、ヴァルリッカが東軍の最初の目標となっていた。


 東軍の先鋒がヴァルリッカに到着したのは、我々がタリヴェンド城を出発してから32日後のことである。


「これは…骨が折れそうだ」


 軍団の最先鋒として、城塞都市のヴァルリッカが見える丘の上に登った。横のエドガーが朝日に目を細めながらヴァルリッカを見ている。


「いや、想像以上ですね」


 エドガーも同じ考えのようだ。といっても、ヴァルリッカをひと目見る機会があれば、全員が同じ感想を抱くに違いない。


「南に深い川、西に沼地」

「我らが攻撃できるのは、北と東だけか」


 いつの間にかサルキも横に並んでいて、城の攻略法について話している。


「街道の入口と出口に布陣してすることになるな、最初の本陣は我々が今いる丘といったところか?」

「折角の兵力差でも、結局2つの方向からだとな……それにあの尖塔の数だ。相当堅いぞ」


 エドガーとサルキがなんやかんやと攻城戦について言い合っている。

 自分の意見も同じくだ、なにか簡単な攻略法を見つけ出せないかとも思う。だが、我々近衛第二騎士団が斥候で見れるのはこの程度だ。あとは、地形や見た感覚を正確に諸侯に伝えるのみ。


 翌日夕方には東軍の全てがヴァルリッカに到着した。

 最初の布陣は事前に斥候した丘の上で包囲陣の準備を始めて、次の日から二日を使って包囲陣形の完成だ。陣形は単純で街道と門がある北と東に4000ずつ、残りはその間の原野に布陣だ。


 いくら堅い城と言われていても、こちらはほぼ相手の10倍の兵力。軍議でも普通に攻めるという話で纏まり、包囲陣完成の翌日早朝から攻城戦が始まった。堀を木材と土やゴミで埋め立てた後に、梯子を使った力攻めだ。


 だが、これが全く上手く行かない。


「堅い…な、随分と堅実な守り方をする奴が居る」


 エメリヒ第三王子が北側包囲陣の天幕で、斜め前に座っている東方大公に向かって呟いた。


「そんな有力な指揮官はもはや残っていないはずですが……」

「士気も旺盛だ、城壁の上に見える数を見ると、城内の砦からも兵士を持って来ているな」


 風魔導士による上空の守りに勝りそうなほどの重厚な矢の雨に、城壁の上の守備兵は十分な数を揃えて石や油を城壁の下に投下している。


「東方大公、バーガンディー家はこのヴァルリッカから始まったのであろう?なにか秘密の通路などないのか?」

「ヴァルリッカについてはタリヴェンドを出発する前に確認いたしましたが、一応南の川向うに人ひとり通る事の出来る隠し通路が存在します」


 自分達がタリヴェンド城を出たのはもはや半年も前になろうとしている。その時に東方大公は、こうなる事を予想していたというのだろうか。思わず驚きの表情を出してしまっていたらしい自分を、東方大公が自分をチラリとみて笑った。


「ハハッ!随分驚いた顔をしているな、リデル団長よ」

「あっ、いえ。失礼いたしました」

「いいんだ、最近私の周りの者は驚いてくれなくなってね。面白くなくなっていたところなんだ」


 少し得意気な表情を見せる東方大公は、この厳しい戦場の中でも茶目っ気があり、自分のような格下の者にも親しみやすさを感じさせる。それが公爵という立場だからなのか、フロレンツ・バーガンディーという男だからなのか。


「これは準備なのだよ…リデル団長。あらゆる方向で準備を進めておくと、いつか自らを助けるのだ。戦場は事前の準備が9割……それで勝敗が決する」

「な、なるほど…」

「とは言っても、今回の南の通路は使えないのだがね!!」


 真剣に納得していた自分に、冗談めかして肩を竦めるのを忘れない東方大公は、どこか同輩と話しているような感覚にさせて来る。

 一瞬であるが(この人が王様であれば気楽でいいな)と頭の中を過った時に、エメリヒ第三王子が「そうなのか?」と口を開くものだから、頭の中から慌てて今の考えを追い出した。


「はい、砦内の城主の間から川向こうの旧宗教の教会跡に続いていますが、そちらから入っても砦側の入口上に乗っている石像を動かせないので無理です」

「まぁ……当然か。隠し通路が砦外から入る事が出来る訳がない」


 エメリヒ第三王子は仕方ないといった顔をして、また話し合いに戻った。


次回は、1月5日から週5回の掲載となります!


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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