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7.南進


 ヴィアネッロ侯爵が南軍1万1000の到着を待ち、ボルダックス城の包囲に入ったという報告を受けたのは20日後の事だった。それと同時に入ってきたのは、メイズ大公国がこちらの兵がいないという事を察知して、軍を動かし始めたという報告。

 いよいよ、ボルダックス城を含める東方大公の領地は、本格的な攻勢を受ける事になった。


 一方の我々はようやく各地から兵士が集まり始めたばかりで、合計の兵力は4000に届いたばかりというところだった。東方の領地から既に出発していた部隊と、近場の城や村から徴兵した者達しか集まっていない。

 それでも4000という兵数は北軍と相対した時と同じであり、一つの勢力を倒したことでなんとか兵数で圧倒的に勝る南軍に近づくことが出来たと言っても良いだろう。



 東軍はひたすら兵士が集まるまでタリヴェンド城で待ち続けた。

 ようやく全軍が集結したのは、ボルダックス城が包囲されてから55日後の事であった。この頃にはボルダックス城に南軍が数度攻め寄せており、そのたびに多大な犠牲を出しながらも撃退している。また、メイズ大公国も兵士の集結を完了し、オロール王国に進軍を開始していた。


「陛下!モーラ辺境伯からの援軍が到着いたしました」


 エメリヒ第三王子は静かに長く息を吐くと、「…そうか、ご苦労」と一言添える。

 伝令が退席すると共に、東方大公がエメリヒ第三王子の前に進み出て一礼した。

 

「これにて全軍の準備が整いました。騎兵5000、歩兵5000、弓兵2000の合計1万2000.......いつでも出発できます」

「良し、では明朝2つ目の鐘と共に出発!……此度の動きは先程の軍議の通りだ!皆の働きに期待する!!」


 エメリヒ第三王子の言葉に余計な鼓舞などは無い。

 この場にいる諸侯は既に半年もの期間を一緒に過ごし、共に戦って来た者達である。それに彼らが東方領地に残した家族がいる。誰よりも早い決着と勝利を願っているのは、今エメリヒ第三王子の号令に対して頭を垂れている彼らなのだ。


 明朝、我々東軍は南へと進軍を開始した。

 季節は早くも春の真ん中といった具合で、日蔭以外の雪解けは終わり、街道を我々の馬車が通る度に乾いた土を巻き上げている。その街道と畑の間では、芽吹き始めた草花が風景を鮮やかに見せていた。


 今回の進軍は速さを重視して北進した前回と違い、兵糧に十分な余力を持たせたものだった。その為に、東軍は大量の輜重馬車を従えており、進軍速度は遅い。我々の影響圏から出るまでの道のりは12日程であるはずだが、17日程も掛かっている。

 我々は北軍所属のそこから1日半に渡って、縦に長く伸びた軍の再集結を行っている。陣形の整理の為だ。

 本日の軍議も終わり王が自らの天幕に戻ったところに東方大公が入って来た。翌日以降の話をする為であったが、その話し合いの最後にエメリヒ第三王子が下を向き「じれったいな」とつぶやいた。


「致し方ありません、前回が早すぎたのです」

「それは分かっているさ」

「であれば、王として泰然と構えてください。上の方の不満は下の者の士気に影響します」

「……確かにな、気を付けよう」


 東方大公が初めてエメリヒ第三王子に諫言したのだ。

 自分が北軍の陣中にてエメリヒ第三王子の行動を諫めたが、その時の態度とは随分な違いだ。それが王に近づいている者としての自覚なのか、前回が戦場で血が上っていたからなのか、それとも東方大公の発言力が大きいなのかは分からないが、素直に納得するエメリヒ第三王子を見るのは新鮮だった。


 軍議を含めた1日の休憩をした我々は翌日、王国中央部へと足を踏み入れた。

 東軍はこれから足を止めることなく南下する…目標は王都。王都の名は旧王国以来、オレンジと呼ばれている。遥か昔に旧王国が勃興した頃、本格的に各地に浸透し始めていた”真実の色”教と結びついて以来の話だ。


 その王都”オレンジ”へと向かっている我々であるが、そこには南軍1万が集結しており、その指揮は西方大公が執っている。そこに付け入る隙がありそうだと判断した。

 西方大公であるシプリアン・ポンパドゥール公爵は、領地を持っているがほぼ政治家のようなもので、法衣貴族というのが正しい。彼は王都の西、王家の直轄地に囲まれている子爵程度の領域を持っている。領地は、帝国との隣接もしていない上に小規模領主程度の広さしかないが、彼の家の政治力と王妃を出している家であるということは、それなりの発言力を持たせている。

 そしてこの西方大公の弱点は”戦場に立ったことが無い”という点だ。初代国王の頃に召し抱えられたポンパドゥール家は、当初は戦働きもしたのだが宰相の地位を一家が務めるようになってから、戦場に立たなくなったのだ。


 守戦が得意なカタラーニ侯は南方でムタルド教国に対峙せざるを得ず、攻戦が得意なヴィアネッロ侯は、東方へと向かった。南方大公亡き今、南軍の有力な指揮官はこの2人しかいない。

 つまり一番大事な王都の防衛は、戦場に立った経験のない発言力が大きい政治家が担当している。これほど分かりやすい弱点があるだろうか。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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