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1.冬


 王国の内乱は本格的な冬の到来で、一時的に小康状態となった。

 最近”ルイジア平原の戦い”と呼ばれるようになった東軍と北軍の衝突が起きた頃から本格的な冬が到来し、特に北部で軍を駐屯させていた東軍は身動きが取れない状態だ。だが、身動きが取れないのは南軍も同様で、南方大公が亡くなったことによる内部の乱れを落ち着かせるための期間となっている。

 結果として東軍と南軍はひと冬を越して軍を維持することになったが、双方共に軍を動かす事は出来ない状態だ。


 その冬の間に起きた事と言えば、初冬にローシェンナ地峡で籠城していた諸侯が東軍へ下ったこと、我々は冬が来ると同時に南東方向へと向かい、北方大公の居城であったタリヴェンド城を落としたことだ。

 タリヴェンド城の戦いは、圧倒的に数の有利がある我々に分があったが、城内部の砦において最後まで籠城した、北方大公の忠臣達と北方騎士団との戦闘で、若干の犠牲が出た。当初は北方大公のお膝元ということで、かなりの反発が城内、城下問わず出たが軍力を持って鎮圧し、ひと冬を越す事である程度安定させることが出来た。


 他にはタリヴェンド城に駐留しながら、東軍は東方大公領との兵士の交代などを行っていた。

 勿論自分も第二の故郷とも言えるカーマイン辺境伯領へと、冬の最中であるがカーマイン辺境伯軍と共に帰還することが出来ている。


「いやぁ!!帰ったぞぉ!!!」


 ノルデン城に入って、嬉しそうな声を漏らすのはカールだ。

 耳元で叫ばれると吃驚してしまうが、自分も叫びたい気分だったので代弁してもらったようなものだ。


「懐かしく感じるなぁ」

「団長もですか?」


 背景に白く染まったノルデン城を抱えながら、フレディも顔をほころばせている。


「そりゃな、今回は特に長かった気がするよ」

「まだ、終わってないがな」


 我々が足を止めている所を追い越していくカーマイン辺境伯が声をかけてくれた。その存在に気が付いていなかった自分達は慌てて頭を下げる。


「そう畏まるな。皆、ご苦労だった。凱旋式が無いのは寂しいか?」

「いえ!まだ終わっていませんから」

「ははっ、そうか。皆もこの短い休暇をゆっくり楽しんでくれ」

「「「ありがとうございます」」」

「リデルは、あとで私の執務室へ」

「はい」


 カーマイン辺境伯を見送ったのちに「団長は大変ですね」「お先です」「また出発の時に」など気楽に言い残し、兵舎へ戻っていく部下たちと分かれ、自分はノルデン城への道を進み始めた。道中、自分の頭の中はどこかでルーシーと会える場所はないか、理由はないかを探すのに忙しかった。


 そんな思惑とは裏腹に、ノルデン城にあるカーマイン辺境伯の執務室に到着するまでに、ルーシーと再会することも理由を思いつくことも無かった。


「リデル・ホワイト、入ります」

「入れ」


 部屋の中にはカーマイン辺境伯の他にも、辺境伯領の顔役が集合している。

 ベゴニア子爵、バーミリアン男爵、森の手の団長コルソ、それにマクナイト男爵家のルーシー。カーマイン辺境伯の後ろ立つナッフート騎士団長。

 ここでルーシーに会えると思ってはいなかった。だが、今は彼女をデートに誘える空気ではない。


「そこに掛けてくれ」


 カーマイン辺境伯の言葉通り、末席に腰を落ち着かせると質問が飛んでくる。


「リデル、エメリヒ王はどうだ?」


 先の戦を勝利して、今更その話をしなければならないのかという疑問が沸いたが、ここに居るベゴニア子爵とコルソ団長、ルーシーはエメリヒ第三王子について何も知らない。

 ここは、自分の主観をもとにエメリヒ第三王子について話さなければならない。

 

「勇猛で武勇に優れますし、戦も上手いかと…政務はタリヴェンド城落城後に少し見届けた程度ですが、早く正確だと皆言っております。それは、カーマイン辺境伯もご存じでは…?」

「もちろんだ。私は長い時間エメリヒ王と過ごしている者として、彼の性格をどう見るかを聞いている」


 カーマイン辺境伯は頷きながら首を横に振り、勿体ぶるなと言いたげな表情だ。


「そうですね……少し不安定なところはありますが、尾を引きません。私を近衛の団長に任命した事で分かる通り、身分の差を関係なく扱いますし、普段はお優しい方です」

「不安定とは?」


 ベゴニア子爵が不安そうな表情で疑問を口にした。


「自らが敵と認める者…例えばご兄弟やそれに味方して北軍と南軍になった者達に対して容赦なく、その…激しい感情を見せる時があります」

「ほう……」


 自分はエメリヒ第三王子がモーラ辺境伯領からの船上で聞いた話や、先の戦場で見せた一面を思い出して、素直に話した。

 ベゴニア子爵は顎に手を添えて少し考え事をしてそうだが、それの先を制すようにコルソ団長が口を出す。


「放逐されていた期間が長いからだろうな、それが味方や領民に向いている訳では無かろう?」

「はい、味方には徹底的とも言える程に優しいです」

「それが、いつまで続くかだ」


 ベゴニア子爵がまたもや不安を口にする。

 言わんとしていることは分かる。味方となっても、一度疑いなどで敵と認められるような事があれば、終わりではないかと言いたいのだ。それについて自分は明確な否定な言葉を持たなかった。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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