9.終結
我々がルイジア関に到着した後、両翼に奇襲を掛けた部隊から勝報が届くまで大した時間はかからなかった。
アルトゥール第一王子と北方大公の討ち死にの報が戦場を駆け回り、北軍は戦闘していない部隊から崩壊し、続いて前線の戦闘していた部隊が撤退を開始する。
統率を失った北軍は散り散りにあらゆる方向へと散っていった。もはや、軍とは言えない状況である。ある者は東や北の自らの領地へ、ある者は前日の陣地の場所へ、ある者は自らの生まれ故郷の南へと動き出し、戦場で入り乱れた。
これを両翼の部隊が徐々に包囲を狭め、包み込むように壊滅させた。勿論、その中で投降した貴族や兵士達も大量にいた。投降した兵士はそのまま東軍へと吸収され、投降した貴族はその命と所領を何とか守ろうと、エメリヒ第三王子にお目通りを願って捕らえられる事になった。
貴族の処分は内戦終結後に延期され、後方の城へと送られることとなり、主君の死に殉じる事とした北方騎士団や、今回アルトゥール第一王子のお付きであった近衛第三騎士団と近衛第四騎士団は、自らを恥じながら戦場の中で全滅した。
我々は散り散りになった北軍を追撃していない。同じオロール王国の軍であるというのは前提であり、既に北軍勢力の実質の長たる北方大公と、大義名分を持つアルトゥール第一王子はこの世に居ない。よって残党が南軍に付くか、東軍に付くかは別として彼らがもう一度旗を上げる事は無いのだ。
一方、東軍全体での損害は、300名の死者に500名負傷と少なくない犠牲が出た。だが、我々は勝利したのだ。これ以上の成果はない。
この東軍全体が再びルイジア関後方の丘に集合したのは、戦闘の終結から2日後の事であった。
「皆の者、ご苦労であった!!」
エメリヒ第三王子の労いの言葉から演説は始まった。
一応自分はエメリヒ第三王子の後ろに近衛第二騎士団長として立つことが出来ている。エメリヒ第三王子の護衛の順番も我々が外されるような事は無く。これまで通りの状況に戻っていた。それは赦されたからなのか、処分を延期しているからなのか自分には知るすべはない。
「よってここで我々は……」
演説は今までに比べると長いものだった。
初の大勝利にエメリヒ第三王子の気持ちが昂っているのか、政治的判断をしてこの機会に演技をしているのか。どちらにせよ我らが東軍の大勝利に盛り上がったまま、彼の演説は進んで行く。
「次の目標は、ダミアンと西方大公が率いる南軍だ!!南の弱兵など粉砕して見せようではないか!!」
「「「「うおぉぉ!!!」」」」
寒空の中で行われた演説は効果的で、周囲に積もった雪を溶かしてしまいそうなほどの熱気に包まれている。いつの間にかエメリヒ第三王子の演説能力は格段に上がっていた。
「リデル」
「はい」
演説台から天幕へと帰る道すがら、歩きながら顔をこちらに向けずにエメリヒ第三王子が声をかけて来た。今は自分とボウデン騎士爵のみがエメリヒ第三王子の真横に居て、他の者達は少し離れて周囲を囲みながら護衛している。
「アルトゥールの件は君の言う通りだった」
「……」
「それだけだ。これからも励んでくれ」
「お任せください」
エメリヒ第三王子はそれ以上の言葉をこちらに伝えて来ることは無かったが、これは前回の事は水に流してくれるという意思表示だろう。自分は暫く近衛第二騎士団の団長を名乗ることが出来そうだ。
はじめまして。都津 稜太郎と申します!
再訪の方々、また来てくださり感謝です!
今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。




