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6.追撃


「アイツは法衣貴族で、アルトゥールの腰巾着だ!」


 エメリヒ第三王子は自分が追い付いた瞬間に、いきなり言い放った。


「だが、疎まれていた!我が身がかわいい保身ばかりの奴だからな!!必ず助かる為に本当の事を言う!!」

「では、南へ!?」

「そうだ!!」


 ここでアルトゥール第一王子と北方大公を討ち取らなければならないのは分かっている。だが、正直に心の内を話すのであれば、これ以上深追いしたくはなかった。後方で待機となっているカーマイン辺境伯率いる歩兵隊とは、既に大分離れてしまっている。

 我々は騎兵のみで構成された部隊だ。二人を討ち取った後、無理矢理離脱することも可能であるが、足が遅い歩兵隊はそうはいかない。こうなるのであれば、ルイジア関で待機させ、連れてこなかった方が動きやすかったのではなかったかと思う。



「まだ見えないのか!」

「まだです!」


 自分とエメリヒ第三王子は後方の味方の事は考えずに、全力で天幕に左右を囲まれている道をひたすら南下していた。顔に当たる大粒の雪が痛い。

 自分もなかなかの駿馬を扱っているし、エメリヒ第三王子は自分より更にいい馬を持っている。我々の速度に付いて来れているのは、エドガーとボウデン第一騎士団長のみだった。特に体が大きく重いカールなんかは、いつの間にか遥か後方の味方の軍団に飲まれていた。


「誰かいます!走ってます!!」


 雪が降りしきる隙間に馬に乗る人影が見えた。そしてまた隠れてしまう。


「本当か!?」

「大将2人の確証はありませんが、数名に護衛されてます!」

「この戦場で護衛されるような立場の奴は少ない!!そいつらだ!!」


 先頭を走る自分とエメリヒ第三王子、エドガーにボウデン第一騎士団長は後方を顧みずひたすら馬を飛ばした。少しでも馬の重りになっている物を捨てて行ってしまおうかとも考えたほどにだ。


 そして、我々は逃亡する奴らの尻尾を捕まえた。


「アルトゥール!!!」


 エメリヒ第三王子の大音声にびくりと反応した、アルトゥール第一王子が後ろを振り向いた。

 確かにそこには、ヘルムのから溢れる見事な金髪と奥に見える碧眼が見えた。自分がまだ近衛騎士団に居た頃に記憶した姿そのままだった。その隣には、祝勝会でタリヴェンド城に出向いた時に見た北方大公がいる。


「くそっ!追いつかれたか!!」


 アルトゥール第一王子の声が風に乗ってこちらまで聞こえて来た。


「あとは我々にお任せを!おい!アーロン!!」

「はっ!!」


 そして聞き覚えのある、どこまでも太く響く第三近衛騎士団長の声。

 声と共に減速し始めた10人の内8人の騎兵は、我々4人の先頭集団と急速に接近した。聞き間違えでなければ、この減速した集団の指揮官はアーロンのようだ。となれば、その腰巾着のオリバーもいるだろう。


「リデル!!」

「分かっています!」


 エメリヒ第三王子の焦った声で自分を急かす。意味は分かる。

 このままでは奴らの近衛に邪魔をされ、集団を切り離し身軽になったアルトゥール第一王子と北方大公は逃げきる事は間違いない。その前に2人の足を止めろと言っているのだ。


 アルトゥール第一王子はエメリヒ第三王子の要望によれば、自分の手で討ち取りたいという話であった。この状況でそれを行うにはマジックアローを使うしかない。それも北方大公と合わせて2本だ。


 腰の矢筒に手を伸ばして、マジックアロー2本を手に取る。急に減速し迫りくる8人の近衛騎士達と交戦するまで僅かな隙しかない。集中が必要になるマジックアローを2連射、それも速射だ。


 足を使って馬上で姿勢を安定させると、射角の確保に少し右に体を傾ける。


 荒れている息を落ち着かせる時間はない。一気に浅く息を吸い込んだ。込める魔力は少なく。


 先ずは狙いやすいアルトゥール第一王子の右側にいる北方大公の背中に狙いを定める。


 迫る8人の近衛騎士達は、自分達が狙いかと抜いた剣を構えている。残念ながら、その予想は外れだ。この悪天候、かつ馬上であっても自分が持っているマジックアローならば、近衛騎士の先にいる奴らの護衛対象を撃ち抜ける。


「風よ」


 自分と北方大公の間にはオリバーがいた。いつもアーロンに付いて回って、横で薄ら笑いを浮かべていた奴からは、想像もできない真剣な表情だ。オリバーにも近衛騎士としての誇りが多少あったのかも知れない。それか死の恐怖が、表情を硬直させたか。


 自分がマジックアローを放ったとほぼ同時に、オリバーは身体を左に寄せた。

 丁度、マジックアローの通り道に。


 最初は矢を叩き落とすつもりで見ていたのだろう。だが、マジックアローはオリバーの目に捉えられない程の速度で、直進して奴の左肩辺りを貫き、いや…粉砕し、その奥を奔る豪華な鎧を着こむ北方大公の胴体に大きな穴を開けた。

 左肩から首から胸にかけてを丸々失ったオリバーは、左へと斃れる。その奥の北方大公は、一瞬体を馬の首へと凭れると、馬が走る衝撃で弾かれそのまま後ろの地面へと叩きつけられた。


 まだ終わっていない。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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