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5.敵中


 騎乗し突撃を始めた我々だったが、その前にいる近衛は歩兵は盾と槍を持ち寄り、騎馬に対して有効な槍衾を敷いている立派な防御陣形だ。

 ここでもう一度足を止められる訳にはいかない。少しの時間でも。


 自分の手元にはまだマジックアローがある。それに魔力の余裕もまだある。

 別に目の前でシールドウォールを展開した近衛騎士団全員を吹き飛ばす必要はないのだ。我々が勢いを殺さずに騎馬突撃できるような隙間を作ることが出来れば十分だった。

 腰の矢筒から今日2本目のマジックアローを引き抜いた。

 前をカールとエドガーの馬が走っているが、自分の正面には隙間がある。そこから目の前で2列の厚さで盾を構える近衛騎士が見える。マジックアローにかかれば、2列を射抜くなど容易い。


 指示を飛ばし、騎乗していた事で荒れた息を少し整える。


 息を短く吐き、魔力をこめながら弓を引き絞る。魔力量は先程より更に少なく。


 距離は既に200フィート(約60メートル)もない、盾の向こうの表情には気合の下に恐怖が見え隠れしていた。


 そして何よりその顔に見覚えがあった。


 「…弓兵隊長」


 目の前に居るのは近衛第三騎士団だ。となれば、歩兵の役割をしているのはアーチャーと騎兵の混成部隊30名ほど。

 一瞬集中が切れて、込めた魔力が抜けた。


「くそっ!!」


 この奇襲が作戦になった時点で近衛騎士団と戦闘になるのは予想が付いたことであるし、威力偵察では実際に戦い、この戦場に顔見知りがいる事は知っていたはずだった。なのにも関わらず、自分はマジックアローを目の前にいる”敵”へ向かって放つことを逡巡している。

 マジックアローを自分が放てば、そこにいる男は確実に死ぬことが分かっているからだろうか。自分が自分の意思でもって、目の前の知り合いを確実に殺そうとしている事に、どうしても抵抗を覚えてしまう。今までいくらでも”敵”を認めた者達に、自分の意思でもって矢を放ち、マジックアローを放ってきたはずなのに。


 だが、自分にはもはや迷っている時間はない。既に敵との距離は100フィート(約30メートル)を切っていた。


「だぁ!!」


 もう一度魔力をこめながら弓を引き絞る。


 狙いは……弓兵隊長の右側。

 自分には今の敵と言えども、世話になった人間に矢を向けることが出来なかった。弓兵隊長が、嫌な人間、嫌いな人間であればどれほど良かった事か。


「…風よ」

 

 自分の手から離れたマジックアローは、静かに、そしてあっという間に、狙いをつけた弓兵隊長の右列の男に着弾した。使った魔力量は極小で、視界を遮るような雪を巻き上げる事も無い。

 マジックアローに盾ごと撃ち抜かれた男と後列の男は後方へと吹き飛び、横にいる弓兵隊長と、その反対側の男は、態勢を崩した。


「崩れた!!」


 その一言で前を走る二人には意味が伝わった。

 カールとエドガーは僅かに開いた陣形の隙間に向かって急激な方向転換を行い、その後ろにいる自分達もそれに追従する。

 吹き飛ばされた両側の男達は、態勢を立て直す暇も与えられず。弓兵隊長は急いで構えた盾ごと我々の馬によって弾き飛ばされた。吹き飛ばされる直前、弓兵隊長と目が合ったような気がした。

 もう片側の男は頭上に掲げた、後方に続く我々の部隊に盾ごと我々に踏みつぶされている。それ以降、広がる陣形の傷口の姿を目で追う事は出来なかった。雪と自分の後ろに続く者達の影になったからだ。


 既に我々は敵軍の中央に突っ込んでいる。

 軍議を行う大きな天幕。アルトゥール第一王子が居室にしていたと思われる、王家の紋章が掲げられている天幕に、タリヴェンド城で見た北方大公の紋章が掲げられている天幕。あちこちで戦場に付いてきた従者たちが右往左往しているが、その中に目標の二人の姿は見えない。


 本来であれば天幕の中を一つ一つ下馬して改めたいところだが、敵陣ど真ん中、周囲から援軍が殺到することが分かり切っている場面ではそんなことはしない。走り抜けながら天幕に剣を突き立てて、切り裂き天幕の内を露出させ、更に支柱を切り落とし崩壊させていく。

 アルトゥール第一王子の天幕には荷物はあるが誰もいない。

 北方大公の天幕には、一人いたが我々の襲撃から必死に隠れようとした従者の一人だ。

 残る軍議を行う大きな天幕、そこには貴族が一人いた。だが、顔も見た事が無い奴だ。もちろん名前も知らない。


「アルトゥールは何処だ!!!」


 その貴族に、エメリヒ第三王子が馬上から剣を突き立てて詰め寄っている。


「あぁ!!い、命だけはお助けを!!」

「うるさい黙れ!!アルトゥールは何処だと聞いている!」

「も、もしやエメリヒ殿下ではありませんか?」


 目を見開いた貴族は、必死に脅されて参加したのだと言い訳を始めようとするが、エメリヒ第三王子は、明らかに苛立った様子でそれを制した。


「いいから教えろ!」

「命だけは!」

「分かったから!どこだ!!」

「たった今、南へ!来た道を戻りました!」


 その答えを聞いた瞬間に、その貴族の首は胴体から離れた。

 エメリヒ第三王子はこちらを向くと頷いて、南へと即座に走り始める。追撃する構えだ。


「続けぇ!!」


 自分も周囲へ大音声を発して、追従する。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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