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4.北方騎士団


 敵の惨状はしばらく続いた。

 自分のマジックアローは北方騎士団の3段の備えを丸々撃ち抜いたのだ。

 マジックアローが止まったのは、更に奥に備えていた北軍の最後の砦である、近衛騎士団の一人が乗る馬だった。その馬は地上に横たわり首元に大穴を開けて、苦しんでいる。


 そして我々の部隊は、そこで近衛騎士達と交戦を始めていた。と言っても、突然の奇襲に近衛騎士達の反応は遅い。周囲から部隊は集まっておらず、陣形の層は2列と薄くなっている。

 彼らを抜いてしまえば敵の大将首は目前だろうが、それでも流石は近衛騎士といった所か、初撃で倒れることなくこちらの勢いを削いでいた。だが、速度の乗った我々の突撃を止められるものではない。

 自分がエメリヒ第三王子を追い越した頃には敵の陣形を突破していた。


「またかよ!!!」


 先頭のカールとエドガーが発した声が、こちらに響いて来る。

 その声の意味は目の前の状況から察することが出来た。またもや木柵と逆茂木がこちらの行く手を阻んでいる。敵本陣の最終防衛線だ。


「サルキ!どこだ!!」

「ここに居る!」


 自分の後方にいたサルキが追い付いた。


「あの木柵をお前の戦斧でぶった切れ!」

「了解!」

「カール、セッター、テリア!!援護するからその逆茂木を折るか引っこ抜け!!」

「おう!」「「了解」」


 逆茂木は戦鎚を持っているカールと怪力の獣人二人の出番だ。


「全軍、敵の援軍に備えろ!!」


 周囲の者達に忙しく指示を飛ばしていると、エメリヒ第三王子が追い付いた。


「どうした!」

「敵の設置物です!少し時間が掛ります!エメリヒ王は、こちらに居てください!!」

「分かった」


 エメリヒ第三王子は周囲を警戒するように、ぐるりと首を回した。

 徐々に自分の周りには、後方から追い付いて来た騎兵達が徐々に溜まり始める。それに合わせて周囲から集合し始めたと思われる北軍の騎士達が徐々に集まり始めた。

 本陣側の方向でも、こちらの奇襲に感づいたアルトゥール第一王子と北方大公の側付の騎士達が集まり始める。まだ数人しか見えていないが、恐らく近衛騎士団のひとつと北方騎士団の1部隊合わせて100くらいが殺到してくるだろう。通常の本陣にはそれくらいの兵士がいる。


「まだか!?」


 腰の矢筒に手を伸ばし矢を手に取る。こちらの撤去作業を妨害しようとする騎士達を、一人づつ射抜いてゆく。向こうは雪でこちらの存在が見えていないのか、雪の奥から飛んでくる矢に対応できていない。

 

「もう少しです!!」


 サルキはその手に持った戦鎚で、木柵を破壊しながら怒鳴っている。

 だがその声とは逆に、地面に深く埋め込まれ、麻紐で固く結ばれた木柵は簡単には倒れず、逆茂木に至っては、カールが必死に戦鎚を振るっているが、我々が耐えている間に無力化出来たのは、4~5本といった所で、まだ人がひとり何とか通ることが出来る程度しかない。


 我々の後方では近衛師団のみならず、マジックアローで被害を受けたばかりの北方騎士団の姿が見えた。自分以外にこの場に弓を扱っている者はいない。後方の支援も自分がしなければならない状況だ。せめて騎射出来る者だけも引き連れて来るべきだったと後悔する。


 北方騎士団の騎兵がこちらの騎兵と剣戟を交わしているが、隣に並ぶと馬の大きさがそもそも違う為に、上から一方的に剣を振り下ろされているように見えた。それで余計に騎兵同士の体格差も際立つ。

 自分も何とか踏ん張っている後方の騎兵達を援護しようと矢を放つが、北方騎士団は全員がチェーンメイルを装備した上に、プレートアーマーにフルフェイスのヘルムだ。自分の矢を避けるまでも無く、彼らの重装備の前には無力であった。先程思った後悔もすぐに引っ込んだ。


 マジックアローでも使えば、もう一度打撃を与える事が出来るであろうが、既に乱戦の上に魔力を無駄遣いすることは避けなければならない。あとは、カール達の作業が早く終わる事を祈るしかない。


「よっしゃ行けるぞ!!」


 カール達からその声が聞こえるまでにかかった時間は、半日経ったかと思わせるほどの長さだ。

 実際のところで言えば、我々がこの場に到着して作業を始めてから四半刻も経っていないの筈だが、体感は別だ。


「進め!!進めぇ!!!」


 我々が木柵と逆茂木の破壊と突破を試みている内に、敵本陣側ではアルトゥール第一王子側付の近衛騎士団が、しっかり陣形を固めていた。

 自分の矢で数人被害が出始めたところで、歩兵となりどこからか盾を持って来ていたが、それも十分な数が集まり、既に立派な陣形だ。とても相手にしたくないが、我々の目標は前にあり、後ろからは巨体の馬と騎士に挟まれてるときた。


「目指すはアルトゥールと北方大公の首だ!!間にあるものは全て踏みつぶせ!!」


 正直時間を掛け過ぎた、もう敵の大将2人は奇襲を受けて、既に逃げているのかも知れないとも思う。そうならば、それで良い。残る軍隊は頭を失った蛇だ。いくらでも狩りようがある。

 だが、今我々にできるのは、目の前の敵近衛を突破することだ。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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