表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/106

3.突撃


「見えました」


 風で波のように揺れる雪の奥に、ひと際大きな馬とそれに跨った騎士の影が見え隠れしていた。

 確かに先程エメリヒ第三王子から聞いた話の通りかもしれない。馬がかなり大きく見えるのだ。正確に言えば、跨っている人間の影が小さく見える。

 停止命令を出すと隣のエメリヒ第三王子が、こちらに雪だらけになった睫毛をしばたかせながら、顔を向けた。


「本当か?」

「間違いなく……姿かたちは、先程お話しいただいた北方騎士団かと」

「であれば、そこにアルトゥールと北方大公がいる」


 敵の居る場所へと向けたエメリヒ第三王子の視線は鋭い。


「エメリヒ王、我々はこれより敵中を突破します。ついて来て下さい」

「分かった」


 自分が率いる近衛第二騎士団は、カーマイン辺境伯領軍とノルデン騎士団から騎兵を借り、増強されている。近衛第二騎士団は騎兵のみの約150名となり敵に突撃、これの深くまで食い込む。相手は歴戦の近衛騎士団に北方騎士団という強力なものだが、そこは自分のマジックアローの出番だ。我々は足を止めずに敵大将ふたりを狙い、それを討ち取る。その後は来た道をひたすら引き返す。

 その間に残りの歩兵と近衛騎士団のアーチャーを含む400近くの兵士は、我々が後退するための退路を維持する役割をこなす予定だ。出来ればこの退却の時に、両翼の兵士が押し寄せてない事を祈る。


 味方の騎兵は行軍の段階から隊の前面へと集合していた。

 後ろを振り返っても、降りしきる雪でそのすべての人間の表情は確認できないが、皆覚悟を決めた様子だ。ここから我々は死地へと足を踏み入れる。


 自分がゆっくりと剣を抜き、右手を掲げた。

 周囲の視線が自らの右手に集中している事を感じる。

 敵との距離を考えれば、雪を越して聞かれる事は無いと思うが、突撃の合図は口には出さない。素早く右手を前方へと振り下ろし、突撃の合図とした。

 事前に共有した意図はしっかりと伝わっており、誰も気合のウォークライを上げる者はいない。だが静かに、そして確実に一歩一歩率いる部隊は加速していく。今頃後方では、カーマイン辺境伯が兵達を指揮して防御陣形を作っているだろう。


 馬が加速することで、徐々に顔に当たる雪が痛くなって来る。それを避けるために顔には布を巻いているが、隠せていない目元には強く雪が当たり、更に積もる形になり、たびたび手で払い落した。口元に巻いている布も、自分の息と溶けた雪でぐっしょりと濡れている。

 我々が進んでいるのは平原の中央部、敵が天幕を立てていない往来の為の道だった。無限とも思えるほどに続く横の天幕が、どんどん後ろへと流れている。天幕が白い色な事も相まって、雪で出来た城壁の間を進んでいるようだ。


 雪の降りが少し弱まった瞬間に視界が通り、北方騎士団の男と目が合った。馬に見劣りしてしまっているが、明らかに大きな体格を持った筋骨隆々の男、重厚な鎧、そして重装備の首が太く大きい馬。話に聞いていた通りの北方騎士団の男だ。


「前をあけろ!!」


 我々の部隊と北方騎士団の距離は天気が晴れであれば、気づかないはずのないものである。先頭を切っていたカールともうエドガーが横にはけると、自分とそこに壁の様に並ぶ北方騎士団の兵士のみの空間となった。


 少し馬の速度を落とし、腰の矢筒からマジックアローを一本取りだす。


 馬上から落ちないように、鐙でしっかりと踏ん張り、太ももでしっかりと馬の腹を挟み込む。そして馬の上に立つ勢いで体を立てる。体に当たる風圧と雪が痛いほどだ。


 深く息を吸い込んだ。

 最早冬の空気。吸い込んだ空気が、体の内側を凍らせるように染みわたる。お陰で熱くなっていた体も頭も冷やされそうだった。


 息を短く吐き、魔力をこめながら弓を引き絞る。魔力量は少なめだ。


 距離は300フィートもない、周囲に敵襲を伝えようとする騎士の焦った表情が見えた。


「風よ」


 一瞬周囲に振る小ぶりの雪を吹き飛ばしながら進むマジックアローを捉えると、もう慣れっこになった衝撃が体を襲い、腕に巻き付けておいた手綱で何とか踏ん張る。お陰で馬は急に止まってしまったが、マジックアローの行方は良く見えた。

 真っ直ぐ進んだマジックアローは、こちら向きで陣形を組んでいる北方騎士団の一部を、文字通り消し飛ばす。

 その状況が見えたのは一瞬。今度は広がった惨状を隠すかのように、マジックアローが進む風で巻き上げられた雪が、視界を完全に奪い吹雪の中の様相となった。

 停止してしまった自分の馬の横を、少し後ろから来た我が騎兵が次々と追い越しては、白い壁の中に消えて行く。その様子をただ見ている訳にはいかない。


 馬の横腹を足で叩き、前進を促して一気に軍団の最前列へと向かい始める。

 先頭に追い付く過程で見えたのは、一面に飛び散る人間と思しき破片と、馬の一部だと思われる欠片、更に広がる血の海。なんど見ても見慣れないマジックアローの威力の痕だった。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ