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12.積雪


 雪が降り続けた夜は、戦の疲れからか雪による静けさからかよく眠れた。

 翌朝には、膝程度の高さに雪が降り積もり、辺り一帯は既に冬の装いといった所だった。そんな中、我々近衛第二騎士団とカーマイン辺境伯軍が守るルイジア関に伝令が届いた。


「アルトゥール第一王子と北方大公が率いる北軍が、朝方に平原へと到達いたしました。そこで陣を敷き、周囲の木を伐り倒しております。恐らく野営と攻城兵器の準備かと」


 我々が威力偵察に赴くと共に、カーマイン辺境伯が森の中に潜ませた森の手の3人のうち1人が、北軍の到着の報と共に帰還したのだ。もう2人は、左右に潜んだ軍に伝令に向かっている手筈だ。


「ご苦労であった」


 カーマイン辺境伯が静かに頷く。


「始まりますね」

「あぁ、どうやら敵さんには伏兵の存在は露見していないようだな」

「はい、でなければルイジア関攻略の為の攻城兵器の作成など始めません」


 更に言葉に出さないが、我々にとって良い事がもうひとつ起きている。それが昨日の夜から降り続いた雪、積雪だ。騎兵が中心となる王国の軍において、積雪は機動力を奪う天敵だった。相手の機動力を制限するために選んだ戦場に積雪も加わり、より良い状況が出来上がった。


「我々も動くぞ」


 我々はいよいよ北軍との決戦に入ろうとしていた。

 事前の計画は、相手が平原に到達したその日の内に動き出し、左右から伏せた兵士達が襲い掛かる。これは、周辺の偵察と哨戒を行うはずの北軍に見つからない、若しくは見つかっても対処する時間を与えない為だ。

 伏せた兵士の奇襲で北軍を左右に2分割した後、中央部にて指揮を執ると思われる北軍の大将であるアルトゥール第一王子と北方大公に、我々近衛第二騎士団とルイジア関を守るカーマイン辺境伯軍500も合わせて突撃、その首を取るという算段だった。

 だが、アルトゥール第一王子と北方大公のもとには、北方騎士団と近衛を含めた大量の護衛が居るのは分かり切ったことで、北軍の間を縫い、突破するには相当の困難が伴う事は間違いなかった。その状況の打開を、自分の持っているマジックアローの威力を見た、エメリヒ第三王子が我々に託したのだ。


「我が軍、動き出します」


 昼を過ぎ、また雪がちらつき始めた時、ついにエメリヒ第三王子からの伝令が我々の下に駆け込んで来た。既に我々は部隊を再編し、準備を整えることが出来ている。多少エメリア関に兵力を残すために、総勢500の軍が出陣できる状態だ。

 降り始めた雪はまだ小降りではあるが、奇襲の足音を消してくれる上に、ただでさえ木が生い茂る丘陵地帯で視界が通らない所を更に制限する。ひとつ、ひとつであるが、我々に有利な状況へと傾き始めている。


 総勢500の軍勢が、ルイジア関の裏側へと揃った。

 騎兵が先導する形で、進軍する予定だった。もし途中で哨戒部隊と遭遇したならば、先頭集団にいる近衛第二騎士団の自分が、その敵を追いかけて射抜く。後方で全体の指揮を執るのはカーマイン辺境伯だ。

 静かに門の裏に整列する我々は、今か今かと”奇襲成功”の伝令が来ることを待ち侘びていた。


 寒空の下で近くの焚火に集合している我々は、長い事待っているせいで肩に雪が積もっている者もいた。そんな中ルイジア関正門が開き、ざわめきが広がっていた。 奇襲成功の報告であれば、盛り上がり、歓声が起こってもおかしくないはずだが、ざわめきだ。まだ出発段階でなく、後方でカーマイン辺境伯と話をしていた自分は、事態の把握が出来ていない。


「奇襲は成功だ」


 短い一言と共に、焚火にあたる自分とカーマイン辺境伯の元に顔を出したのは、なんとエメリヒ第三王子であった。第三王子の隣には、モーラ辺境伯領からついて来たボウデン近衛第一騎士団長の姿もある。


「陛下、なぜ…ここに……?」


 流石のカーマイン辺境伯も、言葉を口から出すので精一杯な様子であった。本来であればエメリヒ第三王子は、片方の軍の指揮を執っている筈なのだ。


「私にはやらなければならない事があるのでな」


 エメリヒ第三王子が自分に視線を向けた。


「リデル近衛第二騎士団長、私がアルトゥールを討ち取る」

「……しょ、承知いたしました」

「北方大公や取り巻きは、君のマジックアローに頼みたい。だが、どうしても”アイツ”だけは、私の手で討ち取らなければならないのだ」

「はい」


 力強い目でこちらに訴えかけてくるようなエメリヒ第三王子に、思わず同意の返事を返してしまう。

 敵の指揮官二人に本来であれば近づくことが困難であるために、マジックアローで狙撃するつもりだったのだが、そうもいかなくなったようだ。


「既に戦闘は始まっている。直ぐにでも出るぞ」

「「はっ!」」


 エメリヒ第三王子は我々近衛と行動することになった。我々が前衛で危険ではあるが、間違いなく敵に一番接近するからだ。

 エメリヒ関から3列となって総勢500の軍が整然と、新雪の中へと踏み出していく。ついに北軍との決着をつける時が来たのだ。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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