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騎士団のアーチャー~王国内乱編~  作者: 都津 稜太郎
1.リデル・ホワイト騎士爵
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7.帰郷


 辺境伯は戦勝晩餐会を終えた後も様々な催し物や祭典に顔を出し、他の北方貴族との交流を持った。それに護衛として同行することは、かなり気を張ったが後半には慣れて来る。

 エドガーを始めとしてカールやフレディとアントン、そのほかにも手練れの騎士団を連れて来ているので、顔なじみばかりなのも余計に”慣れ”を早めた。

 本当は信頼している森の手の者達やパウラも連れて来たかったのだが、森の手はあくまで傭兵という立ち位置で、パウラは一度エルフの故郷に戻って里の整理をしてくるらしく、そもそも辺境伯領にいない。


「”副団長”もうそろそろでしょうか?」


 自分を副団長呼びをしてくるのは、カールの紹介で選抜したライアンだ。カールの一番弟子を名乗る彼は、カールより二回りほど小さいが、膂力はカールに少し負けるくらいで、その力を利用して騎士団では珍しい両手剣を使っている。背中に差した両手剣は敵を切りつけると言うより、圧し切るという使い方をするんだと、ライアンが言っていた。

 ちなみに帝国戦で50人の中に選ばれなかったのは、目の下、鼻の上を横に割るようにある傷が示すように、カレリア砦の先頭で重傷を負っていたからだ。だが、その傷もどこか魅力に感じるような精悍な顔つきをしている。


「あぁ、辺境伯は間もなく戻られる。すぐに出発できる準備をしておいてくれ」

「承知しました。御者にも伝えておきます」


 辺境伯は出立の挨拶を北方大公と第一王子にするために、来た時と同じく綺麗な中庭のある居館を訪れていた。今回はすぐに終わるようで、自分を始めとする護衛は外で待たされている。


「すまない。待たせたな」

「いえ」

「もう挨拶は済んだ。帰ろう……我が家へ」


 戻って来た辺境伯はどこか浮かない顔をしていたが、自分がわざわざ詮索するような事でもない。


「はい。帰りましょう」


 馬車に乗り込み、辺境伯領へ帰宅の途についたのは、北方大公領に到着してから30日が経った頃だった。ここから更に12日かけて来た道を戻る。合わせて50日以上に及ぶ今回の滞在は夏の季節の真っ只中だった。あと30日もすると更に北に位置するカーマイン辺境伯領には、気温が落ち着き秋の風が吹き始めるだろう。



「タリヴェンド城は、どうでした?」


 帰郷してから一回目の貴族教育の時間に、ルーシーから質問を受ける。


「城を囲む街が大きくて、活気にあふれてましたよ」

「でも、貴方は近衛出身じゃない?王都の方が流石に大きいでしょ?」

「それはそうなんですが、引けを取らないくらいでしたよ」

「そうなのね、私は両方行ったことないから、ぜひ一度はこの目で見たいものね」


 逆にいろいろな場所を転々としている自分が、珍しいような気もする。恐らく自分も魔法を使えなければ、故郷の村から出て来ることもなかっただろうし、猟師として王都の東の森で一生を終えていただろう。


「今度一緒に行きましょう」

「それは、デートのお誘い?少し遠すぎない?」

「近場でもいいですよ?ノルデン城下でも」

「確かに、活気も戻ってきましたし」


 我々が帰って来て一番驚いたのは城下の様子だった。雨の時期に中断していた復興作業は、夏を通してほぼ元通りになったと言ってもいい状態まで進んでいた。


「いつ頃行きましょう?明日とか?」


 こちらの問いかけにルーシーは頭の中で自身の予定を思い出すように「そうねぇ~」と言って考えている。


「10日後なら行けるわ」

「では、是非行きましょう!昼頃にお迎えにあがります」

「しっかりエスコートしてくださいね?」

「それは勿論!」


 ついにルーシーとデートの約束をした事に小躍りしそうになったが、必死に感情を抑え込んだ。

 行くとなれば、完璧なプランを立てなければいけない。誰か詳しい者はいないだろうか?と頭の中でいろいろな人の顔を浮かべては消す。フレディから果ては辺境伯まで思い浮かべたが、流石に辺境伯や騎士団長に聞くわけにはいかないと思い直した。


「さぁ、今日からは算術ね」

「うぅ……はい」


 話は授業に切り替わったが、正直乗り気はしない。どうも数字というものは苦手で、魔法学校でもあまり成績が良くなくて、怒られた記憶がある。

 実際、今まで特に困ったこともないので「要らないのでは?」と思っている。が、それをルーシーとの時間を減らすことになるのであれば、言わないに越したことはない。


 そこから毎日のようにデートの日まで指折り数えながら、難しい計算の話を聞いて実践してみたのだが、ルーシーの教え方が良いのか、それとも自分の意欲の違いか、すんなり数字が頭の中に入って来るので驚いた。


「それじゃあ、今日はここまで」

「ありがとうございました」

「それで?明日はどうするの?」


 ついにルーシーとのデートの前日、授業の終わりで明日の予定を聞かれた。


「あしたは、昼の鐘の時刻にお迎えにあがります。行先は秘密ですよ」

「ふ~ん、じゃあ楽しみにしてるわね。また明日」

「また明日」


 街に詳しい人に、デートに詳しい人、美味しいものを知っている人など色々な人にアドバイスを求めて練り上げた準備は完璧だ。最後の仕上げに遅刻しないように早めに寝床に潜り込んだが、なかなか寝付けないのは仕方の無い事だった。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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