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5.騎兵突撃


 我々騎兵は徐々に加速しながら、右へと馬首を向けて戦場を斜めに突っ切る形を取る。視界不良の中に突っ込んでしまっては、味方まで吹き飛ばしてしまう可能性があるからだ。

 馬の荒れた息と自分の荒れた息の音以外は、風と雪に吸収されて何も聞こえない。

 未だに弓兵たちはお互いに矢の応酬を止めていなかった。それで味方のアーチャーに配慮してこの好機に突撃を止めるような騎士団長でない事は身をもって知っている。

 

 中央に吹き荒れる地吹雪を無視するように右へと、我々はひたすらに駆けた。


「あぁ……くそっ!!」


 やってしまった。

 荒れた息の中で思わずつぶやいた。


 自分が予想していたのは敵騎兵は初期の布陣から動いていないか、既に地吹雪の中に突っ込んでいるか、その最中かであった。その予想に反し、そこに見えるのは自分達に向かって左斜め前から突撃を始めている騎兵の姿。

 近衛騎士団の団長は、自分達が騎兵の迎撃に向かってくることを分かっていた。それを利用するために、地吹雪が起きてすぐに前進、その後ろに隠れていたのだ。

 この行動によって出来上がった状況が、敵騎兵部隊に無防備な横っ腹を無様に晒した自分達騎兵といった具合だ。方向転換をするには遅く、逃げ出せば我々の”尾”から敵に食いつかれて、たちまち食べきられてしまう。

 出来る事は我々の手元になかった。


「右だぁ!!!右へ!!!」


 必死に遠ざかる方向に味方を誘導しながら、自分が先頭集団と共に彼らの正面を通り過ぎた後、瞬きする度に近づいて来た近衛騎士団は、我々の陣形の横っ腹に突っ込んだ。

 その衝撃に味方は中央で完全に頭と尻尾へと分断される。後列の味方は急停止した馬の上で必死にバランスを取り、その隙を逃さず一気に包囲するように北軍の騎兵が包囲した。さらに残りの包囲に加わらなかった10名ほどの部隊が、するりと分かれると分断された頭の部分である我々の首元に食いつこうとしている。

 相手と変わらない人数攻勢である筈だが、倍の兵力を相手しているような感覚だ。自分が近衛騎士団に居た時に戦った帝国軍の絶望が良く分かった。それと同時にこのままだと負けたふりではなく、壊滅する事も。


「カァール!俺と来い!!エドガー・トルガー!!味方の包囲を解いて離脱を支援!」

「「「了解!!」」」


 右へと斜めに走り続けていた味方騎兵から、カールを伴い左へ離脱する。

 既に頭に追い付き始めた北軍の騎兵は、剣が届きそうな場所だった。その更に先に包囲されている尻尾の部分で、最後列に居た大柄な獣人達が四方から迫る剣と必死に戦っているのが見える。


 彼らを心配する前に自分の身を何とかしなければならない、馬首を左へと切りながら、自分を追いかけて来た3騎の騎兵に向かって弓を放った。

 正面の遠距離から射かけて、簡単に食らってくれるほど近衛騎士団は甘くない。立て続けに放った二本の矢は、剣で弾かれ避けられる。


「カール!!」

「わかった!!」


 長い付き合いのカールはその言葉だけで察して、馬の速度を落として敵騎兵の中に突っ込んでいった。そして二つの戦鎚を使って、ふたりを相手に馬上から相手の事を力押しする。その圧倒的膂力をさらに発揮しやすいように、自分はもう一人に矢を放ち注意を引きながら連続でカールの右側にいる、たった今剣で戦鎚を受けて手がしびれたような動きをしている男へと弓を引いた。

 自分の手から離れた矢は、手が痺れた男のこめかみを射抜く。力なく叩きつけられる味方に視線を奪われたもう一人は、対峙するカールに戦鎚で頭を殴られ落馬した。そして最後の一人は自分の矢に注意が向かった瞬間に、カールにこの世から追い出された。


 敵騎兵の追撃を振り切り、味方の弓兵に撤退を促すために地吹雪の中へと突入しようとすると、北軍のアーチャーたちがその白い世界から出て来た。


(ひとりかふたり、仕留めなければ!)


 やられてばかりでは気に障る。

 唐突に表れた2騎に敵のアーチャーが驚いたような目を見せる。自分は後列中央の杖を持った男に狙いを定めた。

 アイツが風魔導士だ。

 貴重な魔導士を仕留める事が出来れば、向こうの被害は大きい。素早く腰の矢筒から引き抜き、放った矢は、魔導士の眉間を撃ち抜いた。カールも後ろで後列の一人を吹き飛ばしている。

 次にその奥、近衛騎士団であれば弓兵隊長が立つ位置の男に狙いを定めた。

 そして弓を引こうとした時、大声で号令を出すために下にずらした布から覗く顔を見て、動けなくなる。見覚えのある顔……近衛第三騎士団の弓兵隊長の顔だった。


「団長!!どうした!?」


 矢を放たずにただ敵の前を通過した自分を心配して、もう一人アーチャーを吹き飛ばしたカールが追い付いて声をかけて来る。


「昔の知った顔だった!!」

「あぁーーなら、仕方ねぇ!!!」


 カールはそれ以上何も追及してくることは無かった。

 もちろん自分も戦う相手が、近衛第三騎士団なのではないかと考えの中にあったが、いざ目の当たりにしてみると別だ。正直騎兵に居た奴らは嫌いなので何とも思わないが、同じような身分と立場だったアーチャーには、無感情で矢を射かけることが出来るかと言われればそうではない。

 自分は初めてこれが”内戦”なのだとう言う事を実感した。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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