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2.偽装


 翌日早朝から東軍の動きは始まった……とは言っても奇襲の準備を始める訳では無い。巧妙な偽装を用いた準備段階だ。

 周辺地域で北方大公に通じている者がいないとも限らない状況で、我々の意図に気づかれるのは避けなければならず、兵力を一気に南西の関(通称ルイジア関)の北方に移動して野戦築城をすることから始まった。

 全ては川が流れるように、同時並行かつ流動的に進んで行く。


 偽装の第一段階は各城から集まる兵力を偽装するところからだ。

 攻略したそれぞれの城には、負傷兵と10名前後の僅かな兵力を残し、その上で貴族の象徴である旗を攻略した城門の上に残したまま、夜間に兵力を脱出させた。これによって周辺地域の住民に兵力の移動を悟られないようにする。


 次に偽装の第二段階だ。

 ルイジア関の北方の丘はなだらかではあるがそれなりの高さを持っており、開拓されていないその大半がまばらな樹木と低い草木に覆われていた。この丘を仮初の陣地とする為に、周辺の村や集落から北方地域の城の攻略で得た金を用いて、男女問わず大量の人員を雇った。その数は1000近くに及び、当初は東軍と同じ人数の領民がこの陣地の構築作業に従事した。

 木を伐り倒し、草を刈り、地面を掘り、土魔導士が土塁を造った。その上には伐り倒した木で柵を作り、低いが機能として十分な櫓を組み上げた。この陣地は丘の下からみると、それは10日余りの時間で作られたとは思えない程、大きく堅牢に見える物だった。


 この野戦築城に並行して偽装の第三段階として、奇襲の為の人員の配置を行う。

 1日の作業を終えて周囲の松明の数が少なくなる皆が寝静まった頃、300人ほどの軍団が細かく分かれ、夜の闇へと消えていく。この者達はルイジア関で合流し、平野の近くにその身を伏せる事になる。

 彼らは潜伏を悟られないために、調理に火を使えない。その為城の攻略で入手した大量の日持ちする携行食料を持っている。

 更には自軍の兵だと分かるように、天幕を解体して全員が雑な作りの白いマントを手に持っていた。今回諸侯はそれぞれの城に、偽装の為に自軍の旗を大量に残してきている。この白いマントを戦闘になった際に羽織る事で、味方の識別をする数少ない手がかりだった。


 陣地構築の為に雇った周辺地域の人間は、ローシェンナ地峡のビスコット侯を抑えていたマロカン侯爵軍が到着したと同時に解散となった。これ以降は目に見えて人が減って行ってしまう為、隠し通すことが無理と予想されるからだ。この時点で決戦までの残りの日数が5日ほどとなっている。


「おぉ!!もう到着したのか!!早いな!」


 そしてマロカン侯爵軍が到着した翌日、ほぼ丘の陣地が完成を迎えた頃に予定より2日も早くカーマイン辺境伯軍が到着したのだ。久しぶりに見るカーマイン辺境伯に挨拶する暇も無く、エメリヒ第三王子が彼を天幕の中へと迎え入れた。


「まずは此度の遅参をお詫び申し上げます。エメリヒ・フォン・オロール王におきましては、王国最北地域の平定の……」


 カーマイン辺境伯とそれに同行しているバーミリオン男爵が、到着の遅れについて許しを願うように跪いて、そのまま形式通りの挨拶をしていく。いくら忙しい場面と言えど、これを途中で止めるほどエメリヒ第三王子は弁えていない訳ではない。


「遅参どころか一番早かったのではないか?ここに居るリデル騎士爵は君が叙爵した部下であろう?」

「左様にございます。失礼などございませんでしたでしょうか?」

「ないぞ。それに辺境伯を飛び越えて申し訳ないが、今は私の近衛第二騎士団長をしてもらっている。もう少し借りてもよろしいか?」

「その者は役に立つはずです。存分にお使いくださいませ」

「もう役に立っているさ!さぁ、時間も限られている。挨拶もこの辺でこれからの戦について話そう」


 エメリヒ第三王子に役立っていると言われて思わず顔がほころんでしまうが、それは自分だけではない様で、カーマイン辺境伯もどこか自慢するような表情をしていたことが嬉しい。

 その後はこの戦の策の伝達が行われて、素早くカーマイン辺境伯は率いて来た彼の軍500を率いて南下、ルイジア関の守備に就いた。ルイジア関に居た500の軍も伏兵へと変わった。

 自分はカーマイン辺境伯と言葉を交わすことは叶わなかった。自らが近衛として王の護衛の担当をする日だったという事情と、素早く出発するためにカーマイン辺境伯はすぐさま自軍へと戻った事によって時間が全く取れなかったのだ。

 これまでの道のりや、カーマイン辺境伯領の様子などについて、エメリヒ第三王子についてなど話したいことは山ほどあったが、一つも語る事は叶わなかった。勿論ルーシーは領地に残っているために、話すことは出来ていない。そして意外にもパウラも領地に残っているそうだ。


 カーマイン辺境伯軍も到着し全ての準備が揃った我々は、東側の伏兵を指揮するエメリヒ第三王子と西側の伏兵を指揮する東方大公が、それぞれ残った兵士を率いて北軍が到着する2日前に出発した。二人は「あとは頼むぞ」という言葉を残し、陣地から伏兵を行う地点に向かった。


 最後に自分に残った仕事は近衛第二騎士団を前進させて威力偵察を行う事だった。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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