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11.陥落


 鏑矢で周囲の近衛第二騎士団が集まるのを待たずに、我々は正面城門へと堀を埋め立てた不安定な足場を頼りに進んだ。

 柔らかい土の上に敷かれた木材を踏みしめて進んだ先に見えたのは、中央に大きな穴をあけて破城鎚に破壊されたのかと見紛う正面城門の姿だった。その奥には落とし格子が見える。

 前進を止めることなく正面城門の中に入っても、上から降って来る油も石も矢も無く、完全に彼らは未だに混乱している様子だ。


「木製だ!」


 城門内に入った我々の目の前にある落とし格子は、正確に言えば木製の格子を鉄で補強したものだった。それも所詮木でしかなくマジックアローはその中央に大穴を空けている。そしてその向こう側では正門警備の兵士達が多数転がってい僅かに動く者や、指一つ動かさない者が数十人転がっていた。


「魔導士!!焼いてくれ!!!」


 頭の上に大盾を構えた4人に守られながら火魔導士が杖を手に城門の中に入って来ると、その手にした杖の先にある魔石が僅かにきらめく。瞬間、落とし格子が凄まじい勢いで燃え上がり始めた。

 木製の落とし格子であれば鉄の半分以下の時間で焼き切る事が出来るだろうが、それを見逃すほど城の守備兵達も甘くない。徐々に頭上から大きな叫び声が聞こえ始めた。


「突破された!!!」「石だ!!」「矢を!!」「油を!!」


 口々に叫ぶ声が上から聞こえて来る。

 本来であれば破城鎚の屋根に守られながら進める作業は、4人の怪力男達の大盾に我々の命がゆだねられている状況だった。その中で自分が出来る事と言えば、弓を引き矢を放つことくらいだ。


「まだか!?」


 頭上を覆う大盾の隙間から見えた顔に向かって矢を放ち続けるが、その頻度は徐々に高まり、一つまた一つと頭上の大盾に人の頭ほどの石が当たり揺れていた。


「開いたぞ!!!」

「やっとか!!」


 正面に視線を戻すと焼けた落とし格子の木片が足元で燻っている。我々が正門の中に突入してこの状態になるまでに大した時間は立っていないだろう……感じた時間はゆっくりとした貴族の食事を眺めているようだった。


「行け!!進め!!」


 早くこの落石地獄から逃げ出したい一心で、全員に対して前に進むように怒鳴り声をあげた。本来であれば魔導士を最前線に出すなど以ての外だが、今回に限っては配慮している余裕も無かった。

 足元に残った落とし格子の燃え滓の熱さを気に留めることなく城内へと突入すると、周囲の城壁の上にいる兵士達から注目を浴びているのが分かった。目の前にいる負傷した歩兵達を運び出そうとしていた、兵士達も突然の乱入に唖然としている。


〈まずい〉


 このままでは全身に矢が突き刺さる未来が見えると同時に、後ろに戻れば良かったと言う後悔が湧き出て来る。既に城壁の上に立つ兵士は呆ける時間を終えてこちらに弓を指向し始めており、目の前に立つ兵士達も腰の剣に手を掛けた所だった。


「もっと前だ!!」


 その言葉を待たずして大盾を投げ捨てたカールとサルキ、セッターとテリアは正面の敵兵に突撃を始めた。あいつらと乱戦に持ち込むことが出来さえすれば、簡単には弓を引けないはずだという目算がある。我々には既に魔導士の事など構う余裕がなかった。寧ろ彼らにもその腰の飾りとなっている剣を抜いて欲しいほどだ。


「「おぉぉぉ!!!!」」


 自分の叫びと重ねるように後ろからウォークライが聞こえた。

 それと同時に両側を激しく地面を蹴る蹄の音が通り過ぎる。


「お待たせしました!」


 自分の隣に馬を付けたのは、近衛第二騎士団のトルガー副団長だった。今まで東方騎士団をまとめる副団長に任命した割に大して会話も出来ておらず、どちらかと言えばその貴族的な佇まい故に若干敬遠していた節もある彼だが、今この場に限ってはこの世の大英雄のように見えた。


「城内を掃討するぞ!!」

「了解!!」


 自分の指示を聞いた後に敵陣に突撃していく彼は、その背中に優秀な副官になると書いてあるように見える。

 城内に50人の近衛騎士団が突入したが、いくら騎兵と言えど城内では身動きが取れず、結局のところ50対300の人数差は埋められない。我々にできることはせいぜい城内をかく乱して、後方に待機する東方騎士団300の突撃を待ち侘びるくらいだった。


「もっとだ、もっと掻き回せ!!」


 城内を3人の小隊を組んで騎馬で駆け回る近衛騎士達の頭の上に、少し遅れて敵の矢が降り始める。自分達徒歩組は敵兵を倒して物陰へと入れるが、騎兵は全力で城内をかく乱しながら走り回り当たらないようにするのが精いっぱいだ。

 相変わらずの苦境が続く中、今度は貴族の食後の会話のような悠長な時間が過ぎた後になり、後続の東方騎士団が突入して東軍が城内を満たしてゆく。そして東方騎士団に続いて両翼を包囲して待機していた歩兵部隊が突入した所で、我々は城の中をほぼ掌握し切ることが出来た。


 城内の見当たる場所に敵はおらず、城壁の上は東軍の兵士が満たし城門の上には東方大公の旗が掲げられている。

 これにて我々はセルリアン城における攻城戦の大部分を終えた。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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