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10.セルリアン城攻城戦


 王の命令を受けた東軍は、翌朝早くから攻城戦に入った。

 突入する前段階として、盾に守られた兵士達が陣地構築の際に使った大量の土や、木の破片その他諸々のゴミを堀に投げ落とし堀を埋め始める。後ろでは王の命に従い突撃隊形を取った騎兵隊と、中に鉄の落とし格子があった場合に備えて火魔導士全員が、魔力を一切使わずに備えていた。

 もし落とし格子が木製であった場合にはマジックアローで一気に破壊できる。だが鉄だった場合は全火魔導士達が全魔力を注いで鉄を溶かす。勿論これは通常であれば簡単な事ではなく、頭の上から降り注ぐ石や油、そして矢の雨を防ぎ切らなければならない......本来であれば。

 今回に限って、マジックアローで一撃で破壊された正門周辺の兵士達は混乱に陥っていることは間違いない。その隙をついて一気に進入、落とし格子を破壊してしまおうという算段だ。


 正面城門前に守られながら次々と到着する埋め立て部隊は、負傷者を出しながらも着実に深い堀を埋めていった。ある時は降り注ぐ矢を盾が防ぎ、風魔導士が防ぎ、稼働する投石機とバリスタに向かって大量の矢が射かけられる。

 投石機の着弾と風魔導士の魔法により土埃が舞う中で作業は進み、昼を過ぎた所で正門の幅程度の埋め立てが完了した。本来だったらあり得ない速度で正門を突破する準備が整う。


「攻城を開始せよ!!」


 エメリヒ第三王子の指令で両翼に展開した各300の兵士がたった一人の風魔導士を伴い、城の両側から襲い掛かる。彼らは埋め立てられていない堀に急造の梯子を渡し、そのまま敵を誘引する役割だった。

 詳しい内容を知らされていない彼らは堀に梯子を渡し、そのまま少し下がった物陰で待機となっているが、待機している身になると無茶な攻城戦に命を賭けているようで、士気が下がっているに違いない。

 実際に両翼の兵士達のウォークライは小さく、圧倒的多数の軍とは思えない程の威圧感の無さであった。


「……近衛第二騎士団進みます!!」


 十分に両翼に敵兵が引きつけられたのを確認し、エメリヒ第三王子に声をかける。


「うむ……頼んだ」

「お任せください」


 エメリヒ第三王子も不安げな表情を浮かべており、むしろ自信がある表情をしているのは周囲でもカーマイン辺境伯領から連れて来た者達のみだ。


「近衛第二騎士団……前進、前進、前進!!」


 三号令と共に動き出した近衛第二騎士団は、カールを先頭に徐々に馬の歩様を早めて行く。

 前回と違い堀の埋め立てと共に整地され広くなった道を50人の近衛騎士と6人の火魔導士が進み続ける。

 セルリアン城は我々の突撃を見て多少の動揺があるが、攻城戦において騎馬が何の役にも立たない事が分かっている為動きが少ない。これは我々にとって好都合な事だった。

 バリスタの巨大な矢はどうやら両翼の兵士たちを指向しているようで、こちらに射かけられるものは無い。投石機から放たれた2回の石は、我々の騎馬の上を通り越し後方に着弾する。歩兵の前進速度と騎馬の前進速度は全く違うもので、事前の計算が狂った様子だ。


 3基ある投石機の最後の石が後方に3回目の着弾によって土を巻き上げた時、我々は既に正門から300フィート(約90メートル)の地点に到達していた。


「近衛第二騎士団!散兵隊形!!!」


 自分の叫びと共に馬上で巨大な盾を抱えたカールとサルキ、セッター、テリアの獣人達を残して散開を始める。彼らの後ろに着いて来るのは自分と6人の魔導士のみである。あとは自分の仕事をするだけだ。


 馬を徐々に減速させながら体に通していた弓を手に持ち変える。

 既に4人の盾は地上に降り立ち、正面城門に向かって2人1組で盾を突き立てていた。


「決して後ろに立たないで!!」


 その間に飛び込むように馬から下りながら、後ろの魔導士達に声をかける。


 駆け寄りながら矢を腰の矢筒から引き抜いた。

 その先には二つの綺麗な玉がある。


 重心を意識して、姿勢を整え、矢を番えて弦に指をかけた。


 弓を持ち上げ、矢に魔力を込め始めて。


 弓を引く時に鏃に向かって流すイメージに変えて引き切る。


 自分の両脇を守るカールとサルキ達の大盾に、城壁の上から放たれた矢が風魔法の防御を通り抜け突き刺さる鈍い音がした。魔導士達はその盾の後ろに隠れている。


 今回の的は大きい……狙いは正門の中央、裏側に閂があると予想される場所。


 全力で馬を駆った息が少し整うのを待ち……


 「風よ」


 魔力のほぼ全てを使い放たれたマジックアローは、凄まじい量の風と土埃を残しながら疾走した。自分は相も変わらず後方に吹き飛ばされ、命中を目視で確認することが出来ないが、この土埃の中では無駄だろう。

 だが、目視で確認する必要の無いほどの轟音が響き渡った。それは木を斧で伐り倒した時の音を何十倍にしたような音だ。更に砂埃の奥からは多数のうめき声が聞こえた。


「前だ!!進め!!!!」


 すぐさま立ち上がり、徐々に収まり始めた土埃の中を魔導士を伴い前進し始める。


「近衛第二騎士団集合!!」


 勿論声はこの混乱の中で届く訳も無く、あらかじめ用意していた鏑矢を天高く打ち上げた。


 

はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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