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7.西へ


「そうか!それは良かった!!」


 処刑に心を痛めたエメリヒ第三王子が明るい表情になったのは、シャルトル伯の一族を処刑した5日後の事であった。伝令から受け取った報告は残った最後の城塞の落城の報告で、損害は多少出たものの今回の進軍が成功に終わったことを意味している。


「これにてシャルトル伯が郡令として管轄していた地域は、全て我らに降ったこととなります」

「そうだな東方大公よ、良くやったぞ!」

「はい、ですが全ては陛下の力量によるものであります」


 お互いに普段は言わないくさい誉め言葉をかけあっている所をみるに、余程の嬉しさが心の内から溢れ出しているのだろう。東軍による初動の成功により、二人はこれまでに見た事のない安堵した表情も見せていた。

 更に我々が攻略した城に残っていた適齢の兵士を残らず徴兵した結果、損害を上回る兵力を200近く余分に確保できていた。結果我々は1300の軍、南方には1900余りの軍が駐在している。

 現状の東軍は全軍で4000となった。


 シャルトル伯の郡全域が東軍に降ったことによって、我々は次の行動へと移った。カーマイン辺境伯とモーラ辺境伯の両名との連絡線の確保だ。

 カーマイン辺境伯領との間にはセルリアン子爵が300の兵をもって城に籠り、モーラ辺境伯領との間に当たるローシェンナ地峡には郡令侯爵であるビスコット侯その人が500の兵を保持したまま同地を確保していた。


「まずは手近なところからだ、予定通りセルリアン城の攻略を行う!東方大公よ明朝の出陣を達せ!全ての諸侯に早馬を!」

「承知いたしました」


 早馬は全ての諸侯に向かって走った。

 東端の城塞へと向かったマロカン侯爵軍についてはそのまま700の兵力保持したまま、ビスコット侯爵軍への備えを行う。我々本軍はパーシアン侯爵と合流し1300の軍をもって300の兵が籠るセルリアン城の攻略を行う予定だ。残りの1900の軍は南方にある3つの関にそれぞれ合流、布陣を行い南方からの脅威に備える。


 翌朝、陽が昇ると同時に僅かな守備兵を残して出発した我々は、迅速に西へと走った。その距離は本来5日以上を要する距離であったが、我々は4日で踏破した。

 自分がカーマイン辺境伯領からモーラ辺境伯の元へ向かった時は多少の遠回りと、急ぎながらであるが慎重な行程を辿ったがために、7日近くを要した距離だ。自分がシャルトル伯の軍と戦いになった場所は、更に北にある。



「お待ちしておりました」

「皆、攻略ご苦労であった!」


 パーシアン侯爵は普段の砕けた口調は封印した上で、彼の軍に参加している諸侯と共に礼をもってエメリヒ第三王子を迎えた。彼らが攻略した城で出迎えられた我々は、1日の休憩を取りセルリアン城へと向かう事となる。

 シャルトル城とより高い城壁と少し多い尖塔に囲まれた城は、我々全軍が入るには小さくそれぞれの騎士団のみが入るだけでも、祭りの中にいるのかと思う程城内は混雑していた。


 混雑した城内の狭い部屋の中に近衛は詰め込まれたのだが、居心地が悪そうなのは東方騎士団から新たに加わった者達だけで、カーマイン辺境伯領から連れて来た面子はあっという間に熟睡している。その光景がエメリヒ第三王子の護衛を担当のボウデン近衛第一騎士団長に任せて部屋に戻った自分の目に飛び込んだ。

 自分の部下たちは、木の根が背中に当たり、湿った地面の上でも、良く分からない動物の鳴き声がこだまする森の中でも「いま寝るように」と言ったら眠ることが出来るのだろう。それが今まで北方樹海で共に歩んできた時間の分、簡単に予想できた。

 自分達の部下を比べてはいけないと思いながらも、それが何処か東方騎士団の男達よりも頼りに見えて、少し誇らしく思える。我ながら身勝手な優越感を覚えながら、すぐさま床に寝転がり目を閉じた。


 翌朝から我々東軍1300は西進を開始、セルリアン城まで5日の距離を慎重に進み始める。

 これは自分がモーラ辺境伯領に向かう時にかかった時間と同じで、これまでの進軍速度と比べると遅く感じてしまうが、何も準備されていない道を1300の軍勢が進むにしてはかなり早い速度だ。通常では7日は見ておかなければいけない距離である。

 シャルトル伯の領地を攻略したことで軍馬をさらに手に入れた我々は、道中の奇襲を警戒しながらも、十分な索敵と偵察を繰り返しながら安全に進んだ。

 そしてシャルトル城に到達したのは、当初の予定通りの5日後である。


「流石に大きいな」


 エメリヒ第三王子の口から洩れた言葉は本心であろう。

 これまでシャルトル城を始めとした守り難い城を見てきた我々には、高い城壁と聳え立つ尖塔の多さに少し心を圧迫された。このセルリアン城はかつてカーマイン辺境伯領が帝国領であった時に、王国の最前線として北方地域防衛の要となっていた城であった。

 セルリアン城は我々がこれから行おうとする攻城戦の困難を予想させるのに、十分な威圧感を放っている。これから東軍は初めてまともな攻城戦というものを経験しようとしていた。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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