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6.処刑


 シャルトル城にて守備兵の指揮を執っていた家令は、その日の内に城内の処刑場所で速やかに処刑された。シャルトル伯の親族は捕らえられ牢に入っている。


「どうしてもか?」

「どうしてもです」

「必ずしなければならない事なのか?」

「必ずではありませんが、禍根を残さない為です」


 城主の執務室に入ったエメリヒ第三王子と東方大公が、険しい表情で言葉を交わしている。今この部屋に入って来た者がいたら、剣呑な空気に言い争いの最中かと思ってしまう程だ。


「シャルトル伯の子供まで処刑しなければならないのか?」

「はい」

「何故だ?」

「我々はたった今彼らの居城を奪い、身分を奪い、牢に閉じ込めております。これからも同じことをオロール国の貴族である者達に対して行う事になるのです。これから大きな戦が幾度も行われることは避けられません、その過程で必ず兵士を率いる貴族を討ち取る事になります。我々は必ず大きな恨みを買う事になるでしょう」


 エメリヒ第三王子は視線を外して少し頷いている。


「素直に投降するなら許すことも可能ですが、我々の足元を揺るがすような者達を残しておくわけにもいかないのです。シャルトル伯の子も大きくなるころには、陛下と私、そしてここに立つリデル団長も恨み復讐する機会を伺うに違いありません」

「必ずではないだろう?」

「そもそもでありますが、これから出て来るであろう投降する者達も直ぐに所領を移すべきなのです。それほど恨みを買う行動を我々はしているのですよ。エメリヒ王は冷遇した先王と兄上たちが投降したとして、赦すことが出来ますか?」


 モーラ辺境伯領を出港した時に恨みがあると言っていた表情を一瞬覗かせると、エメリヒ第三王子はゆっくりと首を横に振った。エメリヒ第三王子は復讐の為とも言っていたこの挙兵において、その動機を否定するこはは出来ない様子だ。


「……分かった」

「では一両日中にも内密に行います」

「しっかり弔ってくれ」


 立ち上がった東方大公は部屋を出る間際に一礼を残して出て行く。エメリヒ第三王子はゆっくりと背もたれに体を預けると、部屋に残った自分とカールに視線を向けないまま質問を投げかけた。


「……どう思うか?私は6つの子供と4つの子供をを殺そうとしてるぞ」


 ”最悪だ”と言いたい所であるが、自分はその二人の子供の父親を殺した張本人でもあるのだ。自分の父は既にこの世にないが、もし殺されたとなればその復讐に心を燃やしたに違いない。だから東方大公の言い分も理解できる。

 戦乱の世の定めと言いたいところであるものの、子供を憐れむ心を捨てたわけではない。だからこそ、口を開くことが出来ずにいる自分が居た。

 静かな沈黙が包む部屋の空気を切り裂くように、熊が唸るような声を持つカールが口を開く。


「……仕方ないのではないでしょうか?」

「……」

「俺には貴族のなんたらやら政治の詳しい事は分かりませんが、良くされた事は簡単に忘れても、悪い事は一生忘れないもんです」

「……」

「ですから、一度”まっさら”にしてしまうのも良いんじゃないでしょうか?」

「……そうか」


 エメリヒ第三王子はそれ以上の言葉を発することは無かった。表情は納得していないような厳しい表情であったが、それは覚悟を決めたものだったのかも知れないとも思う。

 城主の執務室で話していた予定通り、シャルトル伯の一族郎党は翌朝に処刑された。外戚まで含めて行われた処刑は8人の子供と6人の女性まで及び、計30人近くが一晩にして姿を消した。結局のところ、これでは恨みを持つ者の範囲が広がってしまっただけなのではないかとも思う。



 処刑の結果か落城が速すぎたせいか、結果として城内を含むシャルトル城近辺の治安は一日と経たず落ち着いた。脱走兵などが野盗になる事も多いのも戦いであるが、抵抗した兵士も含めてシャルトル伯の一族以外は全て解放され、元の生活に戻ることとなる。

 敗残兵が結集して抵抗することも警戒したが、一切の兆候も無かったためすぐに警戒は解かれた。彼らの中には既にそこまでの求心力のある人物が居ないのかも知れない。


 一方の攻め寄せた我々も、収穫されたばかりの食糧庫から十分な食事を確保することが出来た上に、城内に保存されていた保存食も大量に手にした。そしてここまで強行軍を続けて来た事で溜まっていた疲労も兵舎や空き家、城内を利用して束の間の休憩を取ることが出来ている。

 ここまでは全て東方大公とエメリヒ第三王子が諸侯と共に計画した通りの運びだった。続々と入って来る分散した部隊からの情報も良いものが多く、既に関は全て落ちていて砦も残すところは一つだった。

 城塞に関してはシャルトル城を含める3つが既に落城しており、残すところは兵力を多く派遣していた二つの城であった。この時点で予定の5日を既に過ぎてしまっていたが、食料は最寄りの拠点を攻略し終えた援軍と共に残る城塞と砦に向かっており、喫緊の問題は解決されようとしている。

 我々にとって順調すぎるとも言えるこの35日間の行動は、ひとえに練られた計画とよく訓練された兵士達だから成し得たものであった。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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