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11.出来事


「ケビ・シャルトル伯……」

「どうした?リデル団長」


 必死に思い出そうと頭の中にある記憶を探っていたら、声が出てしまったようだ。何か言いたい事でもあるのかと、東方大公がこちらを不思議そうに見ている。


「いえ……聞き覚えがある名前でして……」


 誰かに記憶を掘り起こす手伝いをしてもらおうと周りを見回すが、今日の警備を行うのは近衛第一騎士団の者達で、知った顔はどこにもない。貴族に詳しいエドガーなんかが居てくれると、思い出せるかと思ったがそれは叶わなさそうだ。


「うむ……シャルトル伯は元々北の4つの地域をまとめていたな。温泉がある事で知っているのではないか?カーマイン辺境伯領に近いぞ」

「温泉……あっ!!」


 頭の中にある男の姿が浮かんだ。馬上に跨る小太りの男、薄くなった髪に周囲をにらむような目つきをした貴族。

 カーマイン辺境伯領を出発してすぐ、温泉街で体を休めた後に遭遇した貴族と戦闘になった。そいつはケビ・シャルトル郡令伯と呼ばれ、自分を呼び止めてカーマイン辺境伯の騎士という事を言い当て、連行しようとした奴だ。


「どうした?」


 エメリヒ王子のみではなく、天幕内に居る者達の視線が自分に集まっている。皆、大事な話の最中に何だといった雰囲気だ。


「その……件のケビ・シャルトル伯ですが……私が倒しました……」

「ハハハッハハハッ!!いやいや、君は面白い冗談も言える男だったのか!近衛騎士団長にして正解だったか、私は笑うのに困る事はなさそうだ!」


 エメリヒ第三王子は大きく口を開けて笑うと、それに釣られたように周りからも笑い声が聞こえて来た。だが、途中でエメリヒ第三王子は、自分が困惑しているのを察してか、徐々に表情が真顔に戻っていく。


「……もしかして、本当なのか?」

「はい……カーマイン辺境伯の元を出発してすぐの事です。私の顔を知られていまして、連行されそうになったため止むを得ず」

「その表情を見る限り、本当みたいだ」


 場に何とも言えない空気が流れる。

 正直周りの貴族たちにとって気持ちの良い話ではないだろう。同じような位に居る者が、目の前にいる男に殺されているのだ。


「ふふっ……やるな。結果としてカーマイン辺境伯を救った訳か」

「当時はそのような意図はありませんでしたが、結果的に救う事になったのであれば良かったです」

「貴族を殺すという常人には出来ない無謀な賭けに勝ったという訳だ。何事も結果が良ければ”良い”のだよ」

「はい」


 エメリヒ第三王子はそれ以上貴族を殺したことについて深く追求してくることは無く、「あとで詳しく聞かせてくれ」と言われると、そのまま軍議が続けられ現状の戦力と南北郡の戦況を始めとした話し合いが続けられた。軍議は夜になるまで行われ、飯時となって解散となる。


 外に出ると膨大な数の天幕が見渡す限り広がり、本陣となる我々の天幕の外側にはいつの間にか軽い堀と土塁、それに木柵が張り巡らされ簡易的な陣地となっている。その陣地の外側にも天幕がいくつも並び、大量の火による煙が立ち上り、星をくすませるほどに空が白くなっていた。


「リデルよ」


 振り返るとエメリヒ第三王子が天幕から顔を出して、こちらを見ている。何事かと近寄ると「夕餉を食べ終わったら少し私の天幕へ来い」と言われた。

 だが、急ぎ夕食を済ませて戻ると、エメリヒ第三王子はまだ食事中である。


「これは失礼いたしました。後ほど伺います」

「構わん。座れ」

「はい」


 食事と共に暫く雑談が続き、食器がそば仕えの役をしている近衛によって運び出されると、当の近衛騎士達も天幕内の立ち入りを禁じられた。今、王子の天幕に二人きりとなった所で少し不安となる。

 今まで二人きりになった事など一度もない。それも、目の前にいるのは争っている最中と言えど王を名乗る者である。

 何かまずい事をしてしまったのか、言ってはいけない事を口から出したか。だが、その表情は叱責をするようには見えない。では、エメリヒ第三王子は男色であるのかと言われれば、そのような気は一度も感じた事も無い。


「そう硬くなるな」

「私に何用でしょうか?」


 思い切って単刀直入に問いかけてみる事にした。


「話題とは、それの事だ」


 自分の背中に向かってエメリヒ第三王子は指を差した、そこには矢が沢山詰まった矢筒がある。近衛騎士団長たる者、矢を背負っては体面が悪いという事を言いたいのであろうか。


「マジックアローとやらについてだ」

「あっ、はい」

「今の所この内乱で使用された噂は聞いていない」


 焦っていたこちらの様子を気にも留めずに、エメリヒ第三王子はゆったりと食後のワインを口にしながら話を始めた。


「その威力は戦況を変える……もし南北軍共に存在を知らないのであれば、こちらにとって好都合だ」

「はい」

「それの使用は余程のことが無い限り控えよ。切り札として取って置きたい」

「承知しました」

「なるべく知る者を少なくしたい……味方でさえもその存在を知らせる必要はない。私が許可するか、どうしてもという場面にならなければ使用しないように」


 自分はマジックアローをここぞという場面のみに大事に使って来たと思っているが、エメリヒ第三王子に言われた以上今まで以上に慎重な扱いをするべきだろう。

 大事な用件はマジックアローについてのみだったようで、それ以降はまた雑談へと戻った。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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