8.近衛第二騎士団
近衛騎士団となるのは、我々が連れて来た人数に加えて東方騎士団の者達だ。
編成は王国の伝統に則り、騎兵と弓兵と魔導士の組み合わせだ。数が少ないであろう魔導士を借り受けるのは気が引けたが「遠慮なく!」という居合わせた騎士団長の言葉で要求する勇気が出た。
ボウデン騎士爵の「獣人が近衛か……」という呟きは、「私の最も信頼している者達なので」という言葉を返しておいた。
彼の言葉は獣人を嫌っているわけではない。
帝国程では無いものの、亜人種を王の周囲に置くことを忌避する者達は多い。歴史のある貴族では特にだ。自分が生まれるより遠い昔にあった獣人国家との凄惨な争いを、記憶に残している貴族が多いのだ。そこの反発を気にしていると言っていた。
獣人を仮初であっても近衛に置くことを嫌い、離れていく者達が居るのであれば、おおよそ味方として信用できるものではないし、エメリヒ第三王子が目指すと言っていた”賢く強く、優しいオロール国王”の治世の邪魔であろう。それほどに帝国を追われてきた者達を含めて、王国内の亜人種の数は多い。
翌日朝には、近衛騎士になる者達が中庭に揃った。
最も本来の近衛の様に爵位持ちの者は自分のみなのだが、それでもこの場に集まった者達は”近衛騎士”という王国の騎士の中で最も名誉ある役職を名乗ることが出来る。
編成は騎馬兵30名、弓兵15名、土、風、火魔導士各一名に、魔導軍医が1名の49名に自分を足して総員50名だ。
次に役職の発表。
「フレディは近衛弓兵隊長だ」
「えぇ!?」
唐突な指名に油断していたのか、フレディは裏返った声を上げた。
「私ですか!?」
「そうだ。返事は?」
「はっはい!大変な名誉です!!」
焦っている彼だが、その人柄は自分がカーマイン辺境伯領へ到着した当初からみているし、北方樹海の偵察に始まりカレリア砦の防衛、ここまでに至る旅を通して、弓の腕はかなり上達した。弓を使う場面があれば細かく指導していたので、自分のお陰であると言いたいところだが、今は関係ない。
だが、フレディを弓兵隊長に任命するにあたって、最も重視したのは彼の間合いの測り方だ。弓の腕はカンブリーには及ばず、目の良さは自分に及ばないが、矢の当たる間合いの測り方と、風の読み方は自分に次いで上手い。
本隊の指揮を執る事になる自分は、威力偵察などの弓兵のみが前に出て撃ち合う場面では関与出来ず、弓兵隊長に任せることになるのだ。何よりも間合いの測り方を重視する事にした。それに彼の大らかな人柄なら、急遽編入された東方騎士団の弓兵達とも上手くやれるだろう。
「騎兵隊長はエドガー」
「はい」
「頼りにしている。副団長も兼任だ」
「お任せください」
エドガーはその年齢に裏打ちされた経験と、それなりの地位の騎士だと言われても誰も疑ない貫禄がある。彼の優秀さと生存能力は今まで間近で見てきた分、疑いようもなく迷わなかった。
「あと……少し特例だが、もう一人副団長を置きたい。東方騎士団から推薦はあるか?」
通常は一人の副団長を二人置くのは、騎士団のバランスを取る為だ。確かに任命され、人選を任されたのは自分であるが、我々より人数が多い東方騎士団をいきなり部下の様に扱えば、反感を覚えるものが多いのは間違いない。
東方騎士団から来た者達にざわめきが広がり、それぞれの顔を見回しながら短いやり取りをすると、一人の男に目線が集中した。
「では、私が」
前に出て来たのはウェーブのかかった短い茶髪で翠眼、すらりと身長が高く若い男だった。騎士と言えば筋肉の塊のような印象だが、彼はどちらかと言えば貴族的な雰囲気を持っている。
「近衛第二騎士団、団長のリデル・ホワイト騎士爵です」
「東方第三騎士団、騎兵隊長の”トルガー”です。敬語はおやめください、団長」
「分かった……トルガー、よろしく頼む」
自分と二人の副団長を両脇に置き、今度は新設近衛騎士団へと向き直った。
「今日この時を以って、我々はオロール王国の近衛第二騎士団となる!近衛騎士団は、王の盾であり王の矛だ!!正当なるエメリヒ・フォン・オロール国王の為に!!!」
「おう!!!」
その日から始まったのは、地獄と言っても過言ではないほどの過酷な連携訓練だった。エメリヒ第三王子の出陣まで我々近衛騎士団が出来るのは、練度を少しでも高める事しかない。
隊列と隊形、号令などの基本動作を決定する事から始まり、基本戦術の話し合いに実践。これは唯一、実際に近衛騎士団に居た事のある自分の経験が活きた。形だけでも近衛騎士団の伝統や慣習に則ったものを習得できるのは、我々にとって大きいということで、ボウデン騎士爵率いる近衛第一騎士団も交えて行った。
編成日から始まった基本動作の錬成は、松明で周囲を照らしながら夜中まで行われ、丸二日掛けてなんとか形にした。次の日から始めたのは、午前の連携訓練と午後から日が傾くまで第一第二対抗での近衛騎士団戦闘訓練に、夜中まで続く兵科に分かれての訓練。一刻(1時間)も惜しい我々は、寝不足と疲労でボロボロになった体を引き摺ってでもこれを続けた。
はじめまして。都津 稜太郎と申します!
再訪の方々、また来てくださり感謝です!
今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。




