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15.離脱


 すぐにでも出発すると決めた後の我々の動きは早かった。

 ポメラはその場にいた商人にすぐさま馬車の手配を要請し、我々は自らの荷物と偽装に使う積み荷を急いで下ろす。本来積み込み予定の積み荷の量を3分の1とし、残りの荷はアンサをこの港に残し売却する方針を立てた。だが、決めた方針など、そのまますんなりと行く訳もない。我々が入手できた馬の数が予定の3分の2ほどに、金額は倍になってしまったのだ。

 原因は討伐軍によるもので、これに対峙するために大量に迎え入れた傭兵と、連絡の為に領主が買い取ったことにより、どこの商会も商人も馬が不足していた。この話を聞く限り、徴用せずに買い取りというところが、商業・貿易都市であるオリエンタル港周辺の領主の在り方だろうと感心してしまう。

 いくらか馬を残している商人が居るのは、野戦をせず城壁に籠る事を選んだ領主のお陰だが、それでも商人自身が必要な馬を高額で買い取っても、到底必要数は満たさなかった。


「これでは護衛の騎乗馬がありません。馬車を曳く予備も足りないです」


 ボウデン騎士爵が深刻な顔をしている。これでは第三王子を守るという自分自身の任務が全うできないといった顔だ。

 実際、我々の進む予定は全員騎乗か馬車に乗る事で、ある程度早い速度を考えていた。徒歩で周りを歩いていては当然かなりの遅れを生じさせることは間違いない。それに、そもそも護衛をする事自体の難易度が上がるのは明白だ。馬が無ければ先行偵察も、遊撃も、追撃も機動性が必要な全ての行動が出来なくなってしまうのだ。近衛騎士団が平民出身のアーチャーであっても、必ず騎乗、馬術を叩き込まれるのはこのためだ。


「だからと言って、この場に留まることは出来ない」

「それは承知しておりますが……これでは無茶です。もう少し馬を集める時間を下さい」

「ならぬ。この問答の時間でさえ惜しいのだぞ」

「ですが……」

「別に商人の護衛に騎馬がいないでも不思議では無かろう」

「普通の商人とは違いますので……」


 くどいほど言い続けるボウデン騎士爵の気持ちは痛いほどわかる。自分もカーマイン辺境伯と共に北方大公の下へと向かう際の行動計画を立てたが、その時に馬が足りなければ護衛など出来なかっただっただろう。だが、今は状況が違う。我々はこのオリエンタル港で無駄な時間に時間を潰す訳にはいかないのだ。そのことを分かっているボウデン騎士爵もそれ以上、第三王子に対して反対することは無かった。


 朝早くに到着したオリエンタル港を後にしたのは、昼を過ぎる頃であった。

 周辺からかき集めた馬の数は到底足りず、護衛と荷物を含めた馬車の台数は4頭立て馬車4台のみ。護衛の騎馬はおらず、御者の隣に一人護衛が並ぶことで警戒も兼ねた。

 荷物はたった1台半分ほどしかなかったが、遠方から滞在しに来ていた商人が、護衛を雇い戦火が及ばない場所に離脱する事にして口裏を合わせる。元々傭兵の装いをしている自分達カーマイン辺境伯領の者達は、それに便乗して脱出する流れの傭兵という事にした。


「お前ら、何者だ!」


 討伐軍と遭遇したのは、その日の夜であった。

 なるべく遠くへと馬車を飛ばしに飛ばし、距離を稼いだ。日が暮れても松明を頼りに限界まで走った結果、予定の町に到着すること無くその手前で討伐軍と当たってしまったのだ。先頭の馬車を御していたポメラと護衛の自分の前に現れた歩哨は10人程、それぞれの手に松明を持ち、我々を照らしている。


「私たちは、ジョンブリアン商会の者とその護衛になります」

「ジョン?なんだって?聞いたことない商会だな」

「お見知りおきを……して、何用でございますか?」


 歩哨は松明を持ちあげると後ろに続く馬車を照らした。


「護衛の騎馬が居ないな」

「大きな商会でないもので……それに、この情勢だと雇うにも高くなりますので」

「まぁ、良い。荷と人を改めさせてもらう」

「はい。構いませんよ」

「おい、お前ら!全部細かく見ろ!木箱、樽の中身!全てだ!!」

「…商品なんで大事に扱ってくださいね!」


 馬車一つ一つに群がり、松明で照らす歩哨たちだが、我々がこの討伐軍に対してやましい所は一つもない。歩哨の隊長と思われる男が一人一人の顔を松明で照らし、舐めるように見て来るが我々も堂々としている。


「なんもないな」

「ないです!怪しい荷物もありません!全て商品でした」

「……そうか」


 部下からの報告を受けて、隊長がこちらに向き直った。


「もう構わんが、これ以上進むのは翌朝以降、軍が通過してからにしろ。それまではここで野営しておけ」

「はい、ありがとうございます」


 歩哨隊の隊長は「もし誰かに咎められたら」と自分の名前と所属を言い残すと、その場を去って行った。その名前は討伐軍の者達に誰何された際に、何回か使わせてもらった。結局その場所を離脱できたのは、翌日の夕方だったのだが、それでもこれまでの行程に比べると、順調と言って良いものだ。


 我々はスマルト共和国の横断を始めた。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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