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14.オリエンタル港


 沈没船と大きなウミヘビの事件が終わってからの航海は平和そのもので、多少の行程の遅れは生じたが、無事に目的地のスマルト共和国の南西側、オリエンタル港に到着した。


 ここで少し予想外の事が起こる。


 当初聞いていた話では、オリエンタル港はスマルト共和国の最大の港であり、大洋航路と呼ばれる貿易航路の終着点となっている場所で、それはそれは賑やかな場所という話だった。

 だが、港に人と船は疎らにしかおらず静かなものだ。これではまだモーヴ協商国で寄港した港の方が、規模は小さいが人通りが多かった。


「一体、何が起こっているんだ…?」


 自分の隣に立っているボウデン騎士爵に向かって、第三王子が話しかけている。ボウデン騎士爵は当然知る訳も無いという様子でかぶりを振った。商会の者達も初めて見たような様子で、港の様子を眺めて呆けている。

 水先案内人に誘導され停泊したものの、誰も寄って来る者が居なかった。モーヴ協商国で停泊した時なんかは、商魂たくましい様々な物売りが船の周りに集まって来ていたが、こちらでは港を管理する役人が寄って来たのみだ。


「オリエンタル港の割に随分と静かですね。何かあったのですか?」


 ポメラが水先案内人に問いかけている声が聞こえた。それは我々も興味があるところで、皆でその回答に耳をそばだてている。


「いやぁ……実は討伐軍が編成されまして……」

「……討伐軍?共和国で内乱でも起きているのですか?」


 聞き捨てならない言葉だ。

 これから共和国を横断して王国領に入ろうとする我々にとって、軍や戦闘の現場に遭遇することは避けたい。軍による徴発を受ける可能性や、戦闘に巻き込まれる可能性が否定できない。


「現在の我々の首長である共和国議会議長が、軍権を完全に掌握したのです。それに反対したオリエンタル港周辺の領主達が議員を辞し、ここから北にある領館に戻って来ました。それを反乱準備として糾弾した議長が、討伐軍を差し向けて来ています」

「では近々ここら辺は戦場になると?」

「はい……3日以内には間違いなく」

「何という事なの……では、他の港はどう?ここから更に西で良い港は無いかしら?」

「共和国南岸の地域はほぼ全て反議長派です。港は軒並み巻き込まれるかと…」


 頭を抱えたのは直接話を聞いていたポメラだけではない。自分を含めた、今回の本当の目的を知っている人間は、軒並み苦虫を噛み潰したような表情になっていた。

 このままオリエンタル港に停泊していても戦闘に巻き込まれてしまうだろうが、南岸全てという事は何処に行っても巻き込まれるのは変わらないという事だ。だからと言って引き返すとなれば、モーヴ協商国まで戻る事になる。先を急ぐ我々にとって、そのような選択肢は存在しない。


「そもそも何故議長は討伐軍なんて起こしたのかしら!?共和国の富は貿易が生んでいるのを議長も分かっているのよね?こんな討伐軍なんて起こしてしまったら、お金の流れが途絶えるじゃない!?」

「だからこそでしょう。議長は恐らくこうなる事は予想の上で動いたのだと思います。その上で素早く制圧すると、自らに敵対する勢力を消すことが出来る上に、その資金とその入手源を手に入れる事も出来ます」

「そうなれば王国がこの機を黙って……」

「はい、本来であれば。ですが今は……」

「王国の内紛が起きているから、干渉できないのね。議長は随分と素晴らしい情報網をお持ちなのね?」


 多少の八つ当たりが入った彼女の言葉は、ただの水先案内人に言っても仕方ない事だが、そうなる気持ちは少し分かる。非常に厄介な状況になってしまったのも、全ては王国が内紛を始めた事によるもので、言うなれば自らが撒いた種だ。

 だからといって何もせず、我々はオリエンタル港に留まっているわけにもいかないのだ。東方大公に接触するためには、迫りくる討伐軍を上手く躱すか、そもそも違う場所から再上陸を目指すかだ。そのためには第三王子を含め、周りの全ての者達と話し合う必要がある。


「……殿下」

「サー・リデル、君はどうするべきだと思う?」


 引き続き、水先案内人と役人、遅れてやってきた商人の3人で会話するポメラに視線を送りながら、第三王子は自分に問いかけて来る。


「すぐにでも出立するべきだと。予定では明日ですが、もし早くに討伐軍が攻め寄せてきた場合、門を封鎖され、我々はしばらく足止めされることになります」

「そうだな、直ぐにでもここを出よう。多少無理にでも馬車を調達し、偽装に使う荷物も少なく、軽くしよう。それで多少は動きに自由が利く……ボウデンも良いな?」

「はい」

「ポメラに直ぐに馬車の手配を伝えてくれ」

「承知しました」


 すぐさま走り出しポメラのもとに向かうボウデンを見届けた後、傍に控えていたフレディに向かって自分達も準備を始めるように指示を出す。

 船旅で疲れた体を癒す時間も、揺れない地面を恋しく思う時間も惜しい。

 何としても討伐軍がこの街に到着するまでに門から出る事。出た後は軍の展開の範囲からいち早く脱出し、このオリエンタル港の関係者と思われないようにしなければならない。



はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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