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2.モーラ辺境伯


 翌日、まだ酒の残る体を無理やり引き摺りながら、ブルーエの街中で情報収集と用事を済ませた。これまでの旅で消費した矢などの物資は調達でき、北方樹海の前に怪我をしていたアイゼンデを含む三人の回復が順調だという医者の言質も得た。

 ただ一つ上手くいかなかったのが、第三王子についての情報収集だった。どこの場所で誰に聞いても第三王子は城内にいて、それに接触できる方法は正式にモーラ辺境伯を通らなければ無理だそうだ。当然の如く城に忍び込む方法など尋ねることが出来るはずもなく。我々は追い詰められてしまった。


「これ以上、日数を浪費したくはないな」

「はい、隊長。もう直接面会に出向く以外には……」


 エドガーも散々一緒に考えてくれたのだが、諦めの表情をしている。


「これ以上時間を浪費出来ない。正面から行こう」


 その日のうちにブルーエ城に出向き、第三王子への面会を要求すると、翌日の昼の鐘が鳴る時に登城するように申し渡された。

 カーマイン辺境伯配下の騎士であることを申し出ても、それについて特段の反応も追及も無い。詰問されると予想していた自分達はどこか拍子抜けになり、このまま順調に面会を出来るのではないかとさえ思った。




「それではお入りください。アナトール・モーラ辺境伯がご在室です」

「はい。ありがとうございます」


 案内役に通されたのは、ブルーエ城内の外から来た客を応接するための場所だった。中は特に飾り気のない普通の部屋のように思えるが、他の大陸からの貿易で手に入れただろう絵画や、珍しい彫刻、宝石が所狭しと並び、飾り気のない部屋を派手に見せている。

 その中では10人以上の人間が入室したこちらを注視していて、中央奥の椅子に座っている偉そうな態度を取る男が、アナトール・モーラ辺境伯であろうことは簡単に把握できた。他には貴族が2人と補佐の様な文官が2人に、武官と思われる鎧を着用した男が2人。

 あとは武装した騎士が警戒を緩めずこちらを見ていた。我々は既に武器を預けているにも関わらず、少しでも不審な動きをすると剣を抜いてきそうな気迫を感じる。


「アナトール・モーラ辺境伯にあっては、ご機嫌麗しゅうございます。私はラスティラバ・カーマインへん「挨拶はいい。既にカーマイン辺境伯の騎士という事は聞いている」」


 こちらの挨拶を遮るという物凄く無礼なことをしているが、モーラ辺境伯はどういったつもりなのだろうかと視線を上げると、その表情は少しも変わることなくこちらを見つめている。

 特に筋骨隆々という訳でもなく普通の体格に、見た目から伝わる底意地の悪く、狡猾そうな性格。実際こちらの挨拶を途中で切る無礼をしているのだから、ほぼ間違いないだろう。同じ辺境伯と言えど、豪快で明るい表情をしているカーマイン辺境伯とは真逆のように見えた。


「カーマイン”辺境”伯の騎士がこの東の”辺境”に何用だ?」

「……それでは本題から申し上げます」


 ここで自分は少し逡巡した。性格の悪そうなモーラ辺境伯に、我々がここに来た目的を素直に言って良いものなのだろうか。もしかしたらこのまま牢獄に繋がれてしまうかもしれない上に、カーマイン辺境伯領に危険が及ぶかもしれない。そう考えると口から言葉が出て来なかった。


「何用だと聞いているのだ。リデル・ホワイト騎士爵」


 逃げ帰る訳にもいかないだろう。最初にナッフート騎士団長に会った時「辺境伯は王国への高い忠誠心と、高い能力が無ければなれない」と言っていた。それを信じるしかないと覚悟を決めて、もう一度モーラ辺境伯に向き直る。


「第三王子に面会させて頂きたく……」

「ふむ。第三王子とな」


 既にモーラ辺境伯との面会を申し出る際に用件を伝えていたが、知らない振りをしているのか、こちらの反応を伺っているのか、初めて聞いたような反応をしている。


「はい」

「第三王子に何の用だ?」

「……それは、直接お話させて頂きたく存じます」

「随分と無理を言うではないか。分かっていると思うが、第三王子は名目としてブルーノの防衛指揮官として赴任したが、実際のところは王都からの放逐だ。第三王子には何の実権もないぞ」

「はい、承知しております。その上で面会させて頂きたく……」

「であれば、私に用件を話すしかない。その上で面会させても良いか考えよう」


 敵か味方か分からないモーラ辺境伯に、第三王子を国王として迎えに来たという訳にもいかない上に、そのまま東方大公の下へ走ると口を割ると、責任を問われる彼が断わる事は、火を見るよりも明らかだった。

 だが、このまま「話せ」「話さない」を繰り返しても進展が無い。


「分かりました。でしたら、第三王子をこの場に呼んで頂きたいです。辺境伯の面前で第三王子に用件を話しましょう」


 これが自分にできる最大限の妥協だった。


「……”先に”私に用件を話せと言っているのだ。この、私に」


 残念ながらこちらが最大限の妥協をしても、モーラ辺境伯は妥協するつもりがないらしい。一向に進まない話し合いに、ここで諦めて力尽くで第三王子を脱出させた方が楽なのではないかと思ってしまう。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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