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11.水飲み場


 先を急ぐ我々は、巨大な魔獣に遭遇しても歩みを止める事は無かった。

 実際それ以降、翌日の夕方までは姿を見かけることも、感じることもなく進むことが出来たのだ。そして無事、目標地点である湖に到着することが出来た。

 陽がある内に野営の準備を完了させて、途中で仕留めたワイルドボアを丸焼きにして夕食を終える。水も補給できて、行程の遅れも予測の範囲内で収まったことに、全員が安堵を覚えた。


 問題は翌日、目覚めと共に降りかかった。


「久々の水浴びは気持ちいんだけどな……少し寒くなって来た。もうそろそろ短い北方の秋だな」

「北方の秋は短すぎるんだよ。あっという間に寒くなりやがる」


 体の汚れを落とし軽い口調のカールと共に水浴びから上がると、既に朝飯は準備されていて、暖かい肉入りスープとカチカチのパンが水浴びから上がって冷えた体を、体の中から温めてくれる。この旅に出てから今日まで緊張し続けていたが、暖かい飯に、雄大な湖と打ち寄せる小さい波の音が我々の心を少し穏やかにした。

 少し長めに朝の時間を取ろうと談笑をしていると、今の今までテリアの面白い失敗の話をしていたカンブリーが、唐突に話を止めて背筋を伸ばして耳をくるくると回し始める。その姿を見て、にわかに緊張が走る。


「火を消して!荷物持って隠れて!!」


 カンブリーの叫びで、全員が目の前にある焚火に足元の砂を蹴り必死に消化すると、荷物を持って樹海の中へと飛び込んだ。それぞれが手近な木の裏に身を隠して武器を手に取る。

 先程とは打って変わって誰の喋り声もせず、ひたすら繰り返す小さい波の音が響く空間に、徐々に遠くから大きな羽ばたきの音が近づいて来た。威圧感を感じさせるほどの音圧を持つその羽ばたきは、我々の頭の上を数回旋回した後、滑りこむように我々の前に到着する。

 姿を確認しようと木の陰から覗き込むとそこに見えたのは、30フィート以上ありそうな翼をゆっくりと畳む大きな魔獣の姿。鋭い前足の爪と鳥の頭を持つ上半身は大鷲で、下半身は獅子という特徴的な見た目。森の手に尋ねなくても見ただけで分かるその特徴的な見た目は、数多くの童話や寓話に登場し、畏れられる”グリフォン”だ。


「……最悪だ」


 思わず小声で漏らしてしまったが、誰もそのことを気に留めないのは、目の前にいるグリフォンが自分達が居た場所の匂いをしきりに嗅いで、周りを見回しているからだろう。

 グリフォンは風魔法を使う魔獣で、その姿を見るすら稀な存在だ。主に使うのは風魔法だという事は知られていて、空気で周囲の人間を切り裂いただとか、空気の渦を生み出して高い所まで持ち上げた後に落とされるだとか、色々な使い方が有るらしい。それでも何十年に一度くらいは倒した話も聞くが、3個騎士団を使ってどうにか討伐したという話で、ドラゴンとも戦う事があると聞くグリフォンは、魔獣の中でも上位の強さを誇る。

 そんなお伽噺の中に登場する魔獣に遭遇する可能性を、万に一つも考えていなかったのは仕方がない。


 暫く我々が居た場所を不審そうに見回っていたグリフォンが、湖の方向に頭を向けると水を飲み始めた。丁度開けていて野営の場所に丁度いいと思っていた湖のほとりは、グリフォンの水飲み場だったらしい事に今気づく。

 大きく喉を鳴らしながら水を補給しているグリフォンに対して、我々は何も出来ず、時間が過ぎるのを待つしかなかった。一つでも大きな物音を立てれば、直ぐにでもその大鷲の頭がこちらを振り向き魔法を放って来るだろう事は安易に想像できたからだ。


 水を少し飲んで周りを見渡すという行動を繰り返すグリフォンの姿を木の陰から見つめながら、早くこの場から去ってくれという願いをひたすら祈り続ける。だが、現実はそれとは真反対の事が起こるもので、やっと水を飲み終えたかに見えたグリフォンが、またもや自分達が野営していた場所をうろつき始めた。

 どうやら、自分の安息の地を荒らされたことが余程気に入らないらしく、どこかその表情は険しく見える。そして不意に顔を上げたグリフォンが、自分達が隠れている樹海の中をじっと見つめ始めた。別に目が合っているわけではないのだが、どうにもこちらの気配が感じ取られているように思えて仕方がない。


ーーーーゴンッ


 真横から唐突響いた鈍い音に隣のカールの方向を見る。音の原因は急いで持ち出してきた鍋の上に、水筒がずれて落ちてしまった事だった。明らかにまずい状況を察したカールが眉間にシワを寄せて、顔を歪めている。

 今の音に気付いていない事を祈りながら、もう一度視線をグリフォンに戻してみるが、その祈りはまたもや通じなかった。こちらを真っ直ぐ見つめる瞳と自分の視線がぶつかった瞬間、グリフォンが我々の存在を認識したことを察した。


 グリフォンは大きな翼を一挙に広げると、後ろ脚で立ち上がり甲高い声で一つ鳴く。


〈あぁ、まずい〉


 状況を悲観したと同時に、グリフォンの周りに空気が渦巻くのが見えた。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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