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10.遠回り


 デンドロの群れを避けるために、我々は湿地帯の更に奥。なるべく遠い場所から川に合流を図った。水は既に残り少ないが致し方ない。多少の渇きよりも、安全に進むことを優先した結果だった。

 樹海の樹木に詳しい森の手の助けもあって、何とか渇きを誤魔化しながら到達した川は、今まで見た中で一番澄んで見える。ここにもデンドロがいるのではないかという不安は杞憂で済み、特に何事もなくそこからさらに2日間川沿いに進んだ。


「隊長」

「ん?どうした」

「地図を見て下さい、これなんですけど」


 夕食時、途中で仕留めた角兎の丸焼きを齧っていると、先に食べ終えたエドガーが地図を片手に隣に座った。隣にいたサルキも何用かとその地図を覗き込んでいる。


「ここが我々の現在位置です。あの特徴的な大木が目印となっています」


 エドガーは自分達の目の前に生えている太く高くそして、3つの木が絡み合うように天へと向かう木を指さした。目印であることを裏付けるように、木の下にあるエルフの文字を書いた石板が立っている。


「我々は元々の速度とデンドロとの遭遇によって3日の遅れを生じています」

「そうだな。だが想定の範囲だろう?」

「えぇ、あと合計10日の遅れは想定範囲内というお話でした」

「何か問題があるのか?」

「はい。我々のここまでの進み方を見るに、あと5日の遅れは間違いないかと思います」

「そうだな……うん、それくらいかかりそうだ」

「5日は道に何もなければという話です。これを見て下さい」


 エドガーが指さす先には魔獣のマークがあった。我々が明日通る予定の場所から大分北側にあり、今まで意識していなかった。


「遠い……が、今回のデンドロの遭遇場所を考えると、か?」

「はい」


 デンドロの魔獣のマークがあったのは湿地帯の真ん中ら辺だったので、湿地帯の端から合流したのだが、端か真ん中というのは関係なしで今回遭遇してしまったのだ。当然大分北側にある魔獣のマークも、注意する必要があるだろう。


「サルキ、ここで出る魔獣はなんだと思う?」

「周辺の地形は普通ですね……もっと北に行けば急峻な崖とかですか。だとすれば……うーん。難しいですが、鳥系とかでしょうか。急な崖に巣を作る魔獣が数種類いる筈です」

「飛んでいる魔獣か……北方樹海だと厄介なことこの上ないな」


 鳥型の魔獣は王都周辺でもいたのだが、特に脅威ではなかった。それは平地が多く森も少ないために、弓矢で狙ってしまえば簡単に撃ち落とすことが出来たからだ。だが、北方樹海のような深い森で遭遇すると、樹木の陰や葉の陰で姿が捕らえづらく、葉と枝の間からいきなり魔法が降って来ることになるのだ。その不意打ちによって、父親が森の狩りで怪我をしていたのが記憶の片隅にある。


「私もサルキ殿の意見と同じです。鳥系の魔獣は行動範囲も広く、迂回するにしてもかなり距離を取りたいところです」

「だが、南側に行き過ぎると今度は製紙産業の道に当たってしまいそうだな」

「はい、なのでギリギリを攻めましょう。3~4日遅れで済ますことが出来たら御の字です」

「安全策でいこう。多少の遅れは平地で取り返す」



 話し合いを持った翌朝、我々は南東側に向けて出発した。

 最初の1日は南下する為に使い、道に当たる前に東に向かって方向転換する。その次の日はひたすら東進、魔獣の活動範囲と思しき場所をぐるりと迂回するように、今度は北進を開始した。そして3日目、順調に北進が終わり、あと半日も経たずに目標の川だという所で、またもや厄介事に見舞われた。


「今の、聞こえたか?」


 カンブリーの一声で集団に緊張が走る。サルキを始めとする森の手の者達は耳をクリクリと動かして必死に周りの音を集め、騎士団の普通の人間はなるべく音を出さないように、その場で静止した。こういう場面では、人間の耳では到底聞こえない小さな音を、聞き取ることが出来る獣人に頼りきりだ。


「……何か聞こえる」

「なんだこの音……羽ばたき?」

「近づいて来るぞ!」


 森の手たちが口々に呟く言葉に、全員が近くの木に体を寄せて姿勢を低くし身を固めた。これが鳥型の魔獣に対して、気づかれにくくする最も有効な方法なのだ。全員が空を見上げて、枝葉の隙間からその羽ばたきの主を探そうと、必死に目を凝らしていた。

 徐々に我々人間の耳にも届くようになってきた大きな翼が羽ばたく音に、必死に姿を見つけようとするが中々見えてこない。そして静かに息を潜めて待つ我々の真上を、何か大きな影が通過した。大きな羽ばたきの音と、一瞬だけ落としていった影が、かなりの大きさをもつ魔獣であることを理解させる。

 徐々に離れていくその魔獣の羽ばたきが聞こえなくなってきたところで、詰まっていた息がようやく出来るようになった。


「なんだあれ!相当デカいぞ」

「分からないですね……一瞬過ぎて見えませんでした」

「サルキも分からないか?」

「いやぁ、何とも……北方樹海の魔獣は大きいですから、種類は分からないです」

「まぁ、今回遠回りしたのは正解だったみたいだな。遠回りした分先を急ぐことにしよう」



はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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