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騎士団のアーチャー~王国内乱編~  作者: 都津 稜太郎
1.リデル・ホワイト騎士爵
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2.ベルディグリ大陸


 手元にある本の世界地図を指さしながら、こちらを見つめるルーシーへ説明を始める。


 大陸は北方を占める北方樹海と、中央に流れ出るレイトリバーで東と西に、レイトリバーが流れ込み、淡水と塩水が混じる内海と山脈によって区切られた南側に大別される。

 

 東側にはワイングラスを左に倒したような形でオロール王国が存在し、その南側にレイトリバーを跨る形で、旧王国の貴族や都市国家が糾合した”諸国家連合”が存在している。

 諸国家連合の東側には、大陸南側三か所の地峡でつながる”砂”で出来た不毛の大地から進出した”ムタルド教国”。この国家は砂漠を領土とし人口が少ないが、三か所の地峡を利用した国を跨ぐ交易で莫大な利益が上がっているらしい。


 そこからさらに東、王国のワイングラスの持ち手部分から下は二つの国家が上下で分かれていて、南側に存在するのは、”スマルト共和国”。

 スマルト共和国は議会制で動く国らしく、王国とも仲が良好だ。ただ最近は首長が権力を握って内部分裂しそうという噂がある。


 その北側、王国と共和国に囲まれた急峻な山間部とその中の盆地に国を置くのは、旧王国の名門のメイズ大公家が作った”メイズ大公国”だ。これは元々大陸東側で一番大きな国だったが、オロール王国の急拡大によって山間部に追いやられた。なので王国とは常に仲が悪い。


 そして大陸の南東端、ワイングラスの底の下側に存在するのが、貿易国家”モーヴ協商国”。

 協商国は他大陸との航路を持つ2つの国家連合で強大な財力を持つ。元々は3つの国家連合体だったが、王国が港を求めて東に遠征を始めた時に内一つを見殺しにする形で和平を行った。


 大陸の東側最後の国は、ワイングラスの底の上側に存在する友好国であるが海賊国家の”ヴァトー”。

 大陸北東端の半島の先を拠点とするヴァトーは、貿易船を襲う事を生業とするならず者国家だ。王国と国境を接する前から協商国と常に戦争状態だったため、国境には長大な城壁が築かれている。 


「すごいわね。完璧じゃない」


 一つずつ国家を指さして説明する様子を見ていたルーシーは目を丸くして驚いていた。


「記憶力が良いみたいです」

「それじゃあ、大陸西側の国家も説明してもらえる?」


 期待するような微笑みを向けられては、それに答えない選択肢はない。


「はい」


 大陸西側は3分の2を”スプルース”帝国”が占めている。

 とは言っても、元々旧王都を始めとする都市が沢山あった東側と比べて人口は少なく、3分の2を支配していても、兵力は王国と大差ない。

 帝国は強力な専制政治を敷いており、それは絶対長男が皇帝の座を継ぎ次男が宰相に就くという揺るがないルールと、”人間の誇り教”を利用した、皇帝の神格化により行われている。


 次に大陸西南にある鍛冶国家”エカルラート”

 この国家は山岳地帯に守られていると同時に武器製造技術に長けた国家で、帝国・王国共に南の教国を経由して武器や兵器を購入することが多い。


 その上にある大陸西側沿岸の遊牧民族連合体の”シャモア”

 山脈を超えた先にある広大な草原で馬を駆り、家畜を飼う民族の集合体であるシャモアは、山越えをしなければいけないという制約を持つ帝国を、機動力を生かして何度も追い返してきた。


 最後に大陸北西に勢力を持つ獣人国家”モルドレ”

 元々あった獣人の勢力が、”人間の誇り教”の迫害から逃れた獣人達を保護する形で、勢力を拡大した国家だ。もちろん帝国とは犬猿の仲で、年中戦闘が起こっているらしい。


「こんな感じでしょうか?」

「完璧ね。今日の授業は終わりかも知れないわ」


 この時間が終わってしまうならば、最初から知らない振りをしておくべきだったと後悔が湧いてきた。


「いや!知らない事もあるので教えてください!」

「そうねー……じゃあこの大陸の宗教については?」

「分かりません!」


 これも記憶の片隅にはあるが、”今”忘れた。


「本当……?じゃあ、説明しましょうか」


 彼女が一瞬疑った後、得意気な表情になるのを見逃さなかった。


「大陸の国家は”人間の誇り教”を国教とする帝国と、ムタルド教を国教とする教国以外は、それぞれ”真実の色”教の分派を信仰しているわ。王国はオロール派ね」


 基本的な国名や貴族の苗字に色の名前が入っているのが、この大陸における”真実の色”教の影響力を物語っている。とはいえ、新興貴族や新しく出来た勢力に関してはこの限りではない事も多い。


「といった所かしら」

「勉強になりました」


 こちらの嘘を見透かすように、ルーシーは目を細めた。


「リデルさんは優秀過ぎるわ」

「魔法学校が厳しかっただけですよ」

「そんなに?」

「はい。日の出と同時に起床して午前は授業、午後は日没まで訓練。夜は蝋燭2本分まで勉強です」

「噂には聞いてたけど、王都の魔法学校はそんなに厳しいのね」

「15覚醒の者達は、数年分を一気に詰め込まれるので」


 これだけの勉強をさせて貰えたのも、北方樹海から切り出した木材で作られた安価な紙と、広大な土地で取れる植物油から作られた蝋燭のお陰だ。あとは……悔しいが王都の魔法学校には貴族の子が多く在籍しているのもある。


「私はすぐ忘れちゃうから。見てこの書類の量」


 ルーシーにいつも授業を受けている戦術・兵器開発室は、彼女の部屋と言っても過言ではない。そしてこの部屋は凄まじい量の本と書類が積まれている。


「努力の証ですね」

「そういってくれるのはリデルさんだけだよ。騎士団長なんてこの部屋を見る度に嫌な顔をするわ」

「騎士団長は文字が嫌いなだけでは?」

「ふふっ、それもそうね」


 雨音の中で静かに響くルーシーの笑い声は心地の良いものだった。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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