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7.余計な思考


「突撃いぃ!!!」


 エメリヒ王の声はこの喧騒の戦場でも遠くまで響いた。

 それに反応するように東軍騎兵全軍の歩様が一気に早まった。


 加速する我々の前には強力な味方の背中と、白い煙と黒い煙と青空が広がっている。

 南軍の水魔導士が消火活動と、東軍の火魔導士が放つ火魔導士による新たな火災が入り乱れている事が良く分かる空模様だ。


 周囲には焦げる臭いと前の馬たちが踏み折った青麦の匂い、それに味方から漂う僅かな血の匂いが香っていた。それに男臭い匂いも随分と……まさに戦場の真っ只中と言った感じだ。


 エメリヒ王の右側面を守る自分の視界には、彼の表情が目に入る。

 それは、初めて出会ってすぐに話していた、復讐心にそれを実現する喜びと、緊張と、焦りを少し合わせた複雑なものだった。今、彼は王都を放逐されて以来、若しくはそれ以上の年月の中で願い続けた宿願を叶えようとしているのだ。



 自分の眼には東方騎士団が凄まじい密度と速さで突撃している様が映った。

 それぞれの諸侯の苗字や、信仰する宗派を表す色とりどりの布を身に着ける。

 東方大公の軍はその名の通りバーガンディー色を基調にした装備が多いが、その中でも先鋒となるマロカン侯の騎兵達は、鎧を明るいマロカン色に染め上げたもので非常に戦場で目立つ。もはや、それぞれの貴族旗を確認しなくてもマロカン侯の軍だけは見失う事はないだろう。

 自分も騎士団を所有することがあれば、鎧を白色に染め上げるか……?いや、それなら白色のマントで良いだろう。


 突撃の前方に居ないだけで余計な思考が入り込み、周囲の状況が良く見える。

 東方軍の装備に今更ながら目が行った。メナウリオンや幅広の穂先、鋸型の穂先等、全員が穂先の形は違えど長めの槍を持っている。それにヒーターシールドやカイトシールド等の盾も持っていた。これは、近衛騎士やカーマイン辺境伯領のノルデン騎士団にもなかった特徴だ。自分の近衛第二騎士団に参加した東方騎士団出身者を確認してみると、彼らは数人だけ槍と盾を持っている。

 確かに馬上では槍が有利だ。であれば、何故に近衛騎士団の中で持つものが少ないのだろうか?


 ふと、昔の事を思い出す。まだ自分が”王都で”近衛騎士団のアーチャーをしていた頃の話。


 そうだ、マルセラが最初に話してくれた気がする。

 近衛騎士団は王の近侍や警護をする場面が主で、必然的に室内において武器を使う事が多いのだ。よって取り回しのしやすい片手剣が制式として採用され、それは馬上でも使用できるように片手剣として扱える物としては限界まで長いものを与えられた。

 それを使わず両手で扱う剣や戦斧やメイスなどを持つものが多少居たが、槍は非常に少なかった。


 これは近衛騎士団が盾を持たない理由とも重なるのだが、己が剣技で敵を討ち取る事を名誉とする騎士団であり、定期的に剣術大会が開催されるなどの伝統による側面と、槍が近衛騎士団の戦い方と連戦に向かないという事側面がある。


 近衛騎士団が戦う場面は、戦場の前哨戦である威力偵察と王に危機が迫った場合だ。

 まず王に危機が迫った場合は、自らの体を間に入れ込み盾となり剣となる。つまり、自らの肉体のみが王に迫る刃を受ける盾なのだ。これには己が剣技に対するプライドもあるのだろうが、今考えたら全くの不合理だ。盾はあった方が良い。


 もう一つは威力偵察の場合……こちらは先程と比べたら少し合理的だ。

 大きな馬産地をいくつも抱え、非常に豊富な軍馬を持つオロール王国と比べ、他国…特に馬産が少なく、よく敵対する帝国などは、騎士団とは名ばかりで重装歩兵が主な事が多い。歩兵を槍で突くと、重厚な鉄の鎧を身に着けた大人の男を、一人持ち上げて振り落とす力が無い限り、槍が持っていかれるのだ。

 それに何度も突撃し、違う戦いを連戦するほど槍は折れやすく、破損しやすくなる。それは剣でも同じであるが、木材の使う量の違いで槍の方が寿命が短かった。

 よって、練度の低い騎兵ほど、長いリーチを持つ武器を持った方が良いが、練度が高くなればなるほど、武器は選ばなくなるといったところか。

 

 まぁ、正直誰がどの武器を持とうと、シールドを持とうと、一番敵を倒しやすい装備が良いと思う。自分なんかは”弓”を使ってるが、今の立場は近衛騎士団長だ。結局それが一番王の力になるだろう。

 このまま近衛騎士団長の職を続けられるならば、エメリヒ王に相談してみる事にしよう。彼は合理主義的な男だからきっと許可してくれそうだ。



 余計な思考から意識を戻すように、味方のウォークライが戦場に響き渡る。

 騎兵全体が斜め右下向けてに槍を構えて突撃体制を取った。自分達も武器を抜いて、それに呼応するように野太い叫び声をあ上げる。


 完全に速度に乗った東軍騎兵軍団は「どうっ!!」という音と共に、敵の前線に居た兵士達を吹き飛ばし、接触した音がここまで聞こえて来た。

 昔の思い出に浸り、将来の考えに頭を巡らす余裕はついに終わりを迎えた。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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