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5.パーシアン候


 周囲に指示を飛ばし続けるエメリヒ王に追いつくのは一瞬だった。

 先程までの突撃の意気は落ち、先頭集団を味方の騎兵に任せる程度には熱が冷めている。むしろその熱を味方に伝播させるための演技だったのかも知れないが……演技も手札としたエメリヒ王にとって、本当のところは分からない。

 一方の自分と言えば、今度は先程までの遅れを咎められるのではないかと、違う場所で気落ちする程度には精神が不安定だった。全くカールのように割り切る事が出来る気持ちのいい性格であれば良いのだが、それは更に経験を重ねて行けば、年齢を加えて行けばそうなるものなのだろうか……分からない。

 ただ、今は迷いと共に走る事に決めた。


 エメリヒ王を中心に敵陣の中央にて突撃で乱れた軍の再編成が行われている。

 追い付いた騎兵2000が周囲を固め、機動力を生かして付近の残りの兵士達を追い立てるように狩っていた。既に南軍の最右翼は潰走状態となっており、遅れ到着した歩兵隊が敵右翼と交戦している。我々には最初の休憩をする余裕があった。


「再突撃だぁ!!先鋒はパーシアン候!!…パーシアン候!!!」


 最右翼側が片付き、騎兵が再編成を終えた頃にエメリヒ王が周囲を呼ばわった。

 少し離れた場所に居たパーシアン候は、部下に呼ばれてこちらを振り返ると素早く馬を寄せた。


「ここに!」

「居たか、先陣を切れ!」

「御意!!」

「突撃の足が鈍ったら手筈通り、敵陣の裏まで抜けるぞ!」

「委細承知!!」


 普段は文官のような見た目をしたパーシアン候であるが、体格が隠れた鎧姿は猛将のように、口調はいつもの砕けた雰囲気は鳴りを潜め、名将を感じさせるものだった。これが、東方を任される貴族というものなのだろう。

 素早く馬首を返したパーシアン候は「皆の者、行くぞ!!」の声と共に進み始めた。後続はその家名の通りパーシアン色の一つに纏められたクレストを付け、見事な統一された軍隊を表している。自らの家名を現した騎士団を持ち、先陣を切るのはさぞ誇らしい事だろう。



 エメリヒ王と我々近衛騎士団は、先陣に続いて次々に出立した騎兵達の中央部で敵陣へと突入だった。

 敵陣の中に木柵は設置されていない。まだ、細かく組み込むことが出来ていないのだ。天幕の間を通るような事はしない。障害物が多い状況では歩兵の方が有利であるからだ。


 通路か中へ入り込み続ける騎兵が通った後には、馬に踏まれた敵の死体が転がっている。パーシアン候が突破した痕跡だった。本来であれば対応してくるはずの敵騎兵は、未だ我々の前に立ち塞がる事は無い。

 順調に三つの通路を利用し突撃を続けた騎兵は、交戦していた歩兵を追い越し、敵の前線の裏にまで入っている。

 途中で横合いから突撃してきた騎兵の集団がいたが、それは横の通路を走る騎兵達に更に横を付かれて集団は細切れに撃破された。ここまで止まることが無ければ、前線は後ろを取られる恐怖で崩壊し、我々が対峙する部隊はいつの間にかは言っている敵兵に驚き逃げる。


「団長、敵が!」


 横に並ぶサルキが指さした先には、前線を支えようと右翼へ向かう軍団と、撤退を始めた右翼中央部の軍団が狭い通路で入り乱れている。

 もはや大きな通りの主導権は我々の騎兵が握っていて、天幕の間を縫うような狭い通路を使うしかないのだ。そこに反対に向かおうとする兵達が向き合っている。更にその乱れた状態の背後から、追いついた我々の歩兵達が襲い掛かる様子は、この戦場の趨勢を決したような光景に見える。


「進めぇ!もっとだ!進めぇ!!」


 この隙を突かんと味方を鼓舞するエメリヒ王の声と共に騎兵達が進み続けた。だが、この進撃も長くは続かない。


「左へ向かえぇ!!!」


 という声が我々のもとに届くと共に、十字となっている大きな通路を一気に旋回した騎兵達が流れる。その流れに我々も乗り、右側面を敵へと晒しながら前進した。


「パーシアン侯より報告します!!」


 騎乗した伝令兵がエメリヒ王の盾となっている我々近衛第二騎士団の右側面に取り付くと、声を張り上げた。


「なんだ!」

「右翼にカタラーニ侯の援軍!敵陣強固にて突破出来ず!後続は敵背面へ流れたし!!」

「分かった!」

「では失礼!」


 直ぐに離脱し馬首を返した伝令兵は自分達の後続へと向かった。

 パーシアン候は歩兵が追い付くまでの間、時間を稼ぐために王国一の堅守を謳われるカタラーニ侯の軍と交戦しようとしているのだ。その証拠に天幕の隙間や大きな通路には、パーシアン色のクレストを揺らしながら戦う騎兵達が見えた。彼らは騎兵の禁忌である足を止める行為をしながら、全軍の為に時間を稼いでいる。


 我々が敵後背面へと抜けようとするのを防ごうと、横を流れ去る天幕の間から飛び出してくる南軍兵は、自分やフレディ、カンブリーが放つ矢によって倒れていく。

 時々我々の横腹を突こうと突撃してきた騎兵の小集団は、先立って分離した騎兵によって阻止されて、その刃を川のように流れる我々に届かせることは出来なかった。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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