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1.決戦前


「皆の者、近衛第二騎士団の偵察の結果を聞いたな!!」


 城壁の上に揃っている諸侯は頷いた。


「奴らに休みを与える必要はない!我々は日が中天に登ると同時に打って出る!!」

「「「おう!!」」」

「ここに居ない諸侯に伝令せよ!直ぐに軍議を行うぞ!!」


 エメリヒ第三王子は自分に「呼ぶまで休んでいて良いぞ」と声をかけて歩き去ろうとするもので、自分は意地になり後ろに付き従った。自分達の成果がここで席を外す事で、横取りされるような気がしたのだ。

 近衛第二騎士団の部下たちは勿論休ませるが、自分にはその必要はない。


 軍議はいつも通り恙なく進んだ。

 違いと言えば、今回は東方大公がほぼ喋らなかったこと。いつも東軍の作戦の根幹に居た東方大公が、ただエメリヒ第三王子の作戦に頷くのみだった。今回は全体の立案と指揮を全てエメリヒ第三王子が受け持った。



「よう!団長ー、俺らの配置は?」


 軍議が終わり、近衛第二騎士団の宿舎としている宿屋に戻ると、入って直ぐの食堂スペースにカールがいた。「今回は流石に楽だろ?」と、椅子の上で腕に巻かれた包帯をいじりながら、話しかけて来る。


「楽だぞ、近衛第一と共にエメリヒ陛下の側付きだ。今回こそ安全さ」

「なぁ、俺ら少し酷使され過ぎじゃねぇか?」


 カールが食事も終わった後、部屋に戻らず一人食堂に残っていた理由が分かった気がした。彼は、皆の意見を代表して自分に言う役割を担っているのだ。エドガーは副官であって、サルキは種族が違う。フレディは年下で、東方騎士団は新参者。自分に忌憚ない意見を言えるのが、カールしかいないのだ。


「言わんとしている事は分かるさ、皆の気持ちもな。まるで俺達は近衛騎士団を名を”与えられ”ながら、小間使いだし、便利屋だ」

「せめて、近衛第一と分散してくれりゃあ、俺達は良いんだが」

「俺達は立場を与えられているんだ。”近衛騎士団”なんて、誰もがなれるようなものじゃない」

「それは分かっている」

「あと…俺達はまだ外様なんだよ。いま主に身辺を固めているボウデン団長なんかは、陛下がモーラ辺境伯領に居た頃から世話してたんだろう。ここで俺達がもうひと踏ん張りすると、間違いなくこの戦いが終わった後には重臣さ」


 カールが納得したかは分からない…だが、口をへの字に曲げて肩を竦め、席を立ったところを見ると。これ以上文句を言うつもりは無さそうだった。



 翌朝、朝1つ目の鐘はいつも通り王都オレンジに響き渡る前に、我々は起床した。

 窓から見える外は暗く、手元は覚束ない。暗闇に目がなれた頃に準備を始めると、周りの部屋から人が動き回る音が聞こえ始める。部屋を出ると、一つ一つの部屋をノックしながら、一階にある食堂へ向かう。どうやら数人はまだ起きていなかったらしく、ノックの音と共に慌てて起きる音がした。

 暖かい朝飯はない…炊事の煙を上げない為だった。城の中、暖かい部屋に居るのにもかかわらず、自分の口に運ばれるのは、水分を失い硬くなったパンに冷えて嚙み切りづらい燻製肉…ミルクが飲めるのは贅沢だが、硬くなったパンに吸わせると大して量を飲めない。


 朝食の帰りに外に出て、井戸の水で顔を洗った。外は星が未だに明るく瞬いているが、東の空はいくらか明るい色になり始めている。部屋に帰り装備を付けると、もう一度食堂へ。急いで食事を終えた寝坊野郎がひとりとすれ違い、食堂に入ると既にエドガーとサルキがそこに居た。流石の速さだ。


 言葉は交わさず、静かに視線を交わし顎で挨拶をする。


 それぞれの首元には自らが信じる宗派の”色”がいつも通り身につけられていて、自分もホワイトの苗字と同じ白色の首巻をしている。真実の色教徒には、特に出陣前の祈りなどは無い。ただ、その色を身につけるのだ。自分も敬虔な信徒という訳ではないが、昔から白色が好きでいるという理由だけで、その宗派に属している。


 近衛第二騎士団が揃ったのは、徐々に夜空が白み始めてからだった。

 我々は北正門への道を馬を曳きながら歩いていた、東の空が明るい…間もなく朝が来る。



 到着した北正門。

 兵士が狭い路地に所狭しと整列している。その正門から続く中央の道に空いた隙間を抜け、北正門の門裏へと到着した。

 まだ、エメリヒ第三王子はいない。最後に来る予定だった。


 静かな朝、太陽が昇り始めるのに合わせて、各地の教会から朝一つ目の鐘が鳴り響き反響する。

 それと、時を同じくしてエメリヒ第三王子が馬に乗って登場した。

 いつも通りの、磨かれた鉄の鎧に国花である”オロール ドゥ ジャックマリー”と王家の紋章が描かれ、その後ろからは王家の旗を持った近衛第一騎士団が続く。


 その姿には覇気がある。

 

 ゆらゆらと馬上で揺れるエメリヒ第三王子の姿に皆が釘付けになった。彼が王としてふさわしいと考えていた者も、そうでない者も、気にしていなかった者も、誰しもが彼の姿を見ることで自らが戴く王として相応しい御方だと感じたに違いない。もちろん自分もだ。


 エメリヒ”王”が我々が跪いた姿勢で迎えた我々近衛第二騎士団を見て「よい」と一言発する。それに応えて自分達は起立して、馬上の人となった。


 一気に見晴らしの良くなった自らの視界に捉えた兵士達は、エメリヒ王方向へと視線を向けて離さない。誰もが彼の姿をその目を離せずにいた。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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