表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/113

10.狭間


 軍議では諸侯は存在を消す事に努め、東方大公でさえいつもより静かにしている有様だった。

 それほどにエメリヒ第三王子が発する怒気は大きいものだった。それでも、エメリヒ第三王子は努めて冷静に振舞おうとしているのが伝わる。これが他国との普通の戦であれば、彼は怒るような人間ではない。兄である、ダミアン・エーリヒ第二王子が相手だからこれだけ機嫌を隠せずいるのだ。


「南軍は、あと28日から35日程度で到着いたします」


 最初に軍議の口火を切ったのはいつも通り東方大公であったが、その声はいつもより小さい。流石の東方大公も、今回の事に付いて少し負い目を感じているようだった。


 エメリヒ第三王子は目前の机に視線を少し落としたまま「……王城の攻略準備は?」と問いかける。これには、攻城兵器の統括をしているパーシアン候が「まだ少し」と言葉を濁した。


「まだ?少し?その意味は?正確な日数は?」

「攻城塔と破城鎚共に損傷がひどく、我々が連れて来た職人だけでは……日数は分かりかねます」

「であれば、王都の職人を呼び寄せろ。我々は職人たちが住む工業区画も占領しているんだぞ?工具も十分ある筈だ」

「それが、南軍は王城に職人たちを入れたようで、扱える者達は見当たりません」


 静かにため息を吐いたエメリヒ第三王子は、顔を上げてパーシアン候を見た。「20日で完成させろ」と確かな圧と共に発した言葉に、パーシアン候はただ頭を下げて了解の意を伝えるしかなかった。


「第一に王城の攻略だ。それに城壁も兵士を動員して修復させろ」


 パーシアン候はもう一度頭を下げた。そこに東方大公が割って入る。


「野戦を避けるのですか?我々に援軍はありません、籠城する備えも」

「……東方大公、我々の兵力は?」

「1万を割りかけています…多少怪我をした兵士の復帰があっても1万500程度が限界です」


 やっと初めて東方大公に視線を向けたエメリヒ第三王子が「王都の周りは見晴らしの良い平原で、相手の兵数は2倍、かつ双方共にお互いの軍容は筒抜けだ。野戦が不可能なのは、分かり切っているだろう?」と静かに告げた。


 あまりに王都の周りは平坦で軍の展開が安易すぎた。そういった戦場では兵の強さや練度を兵数で無視できることがある。実際今回はそれに当てはまるだろう。

 南部の弱兵を集めた南軍も、少なくとも戦場を経験し勝利を経験している。最早簡単な相手ではない上に、兵数を覆す奇襲も仕掛けることが出来ない程の平地ときた。となれば籠城しか選択肢は無いのだが、自分の勘も籠城は危険だと告げている。我々には援軍が存在せず、囲まれた城を解囲してくれる軍はいない。


「ですが…」

「くどい、籠城だ。備えを整えろ、王城の攻略もだ」


 有無を言わさぬ口調のエメリヒ第三王子に強く出られるものはいなかった。諸侯はそれぞれダミアン・エーリヒ第二王子を逃した事に多少なりとも責任を感じている。いま、エメリヒ第三王子の機嫌の矛先になりたいものもいなかった。それを気にせず言う事が出来るのは東方大公のみであるが、彼もそれ以上言わなかったところを見ると、必勝の策は見いだせていないのだろう。


 東軍内で漂い始めた焦りに比例するように、あっという間に日は暮れて、また昇って行く。

 20日が過ぎたところでも、攻城兵器は完成せず王城の攻略には乗り出せていない一方、南軍は既にヴィアネッロ侯とカタラーニ侯が合流を果たしたという報告が入って来ていた。そして、その中に確かにダミアン・エーリヒ第二王子の旗とその姿が確認されているというのだ。

 彼らは王都に石を投げつけた東軍を討伐せんと、士気を高揚させて真っ直ぐ我々の方向へと向かってきているらしい。


 いま東軍は追い込まれている。

 軍議では何度も野戦を挑むことを議論した。だが、その議論は一度たりとも野戦の結果に決着しなかった。

 王都から南、ヴァストリバーを越えてさらに南に5日までは、ひたすら平坦な地形が続く、我々が決戦を挑む場所としては、ヴァストリバー対岸で陣を張るという選択肢のみで、他の場所はそもそも議論の俎上に乗らない。唯一の選択肢とも言えるヴァストリバーは、南軍のヴィアネッロ侯が最初から北岸側にいる為にそもそも防御の場所として機能しないのだ。


 東軍の中では既に籠城戦を行うしかないという空気が漂い始めている。

 城壁の修復が完了し、堀の中に放り投げた土やゴミは回収してその機能を回復している。トレビュシェットやオナガーは城内に運び込まれて、塔の上にあげられたり、道に設置されている。


 その中でエメリヒ第三王子は「土魔導士を集めろ」と指示を出して、それを各門に厚く配置した。城門を破られたら土魔導士で土塁でも構築するつもりなのだろうか?それよりも城壁の修復の為に分散させてほしい所だと、守備を担当する諸侯から少しばかり文句が出た。


 そして、30日が過ぎた頃、いくら準備をしても足りなく感じ、慌ただしく準備する東軍の前に南軍の姿が見える。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ