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8.西側砦・中州砦陥落


 エメリヒ第三王子の早急な攻略を求める必死の言葉は虚しく響いた。

 我々の戴く”王”とは言えど、率いる軍は実態として諸侯の所有物であり、東方大公を含めたその諸侯たちは、この勝ち戦でこれ以上の犠牲を出す事を渋った。結局エメリヒ第三王子は強く説得される形となり、エメリヒ第三王子は早急な攻略は諦めた。


 この軍議以降5日に渡って西側砦攻略戦の準備が行われ、6日目にはオナガーの投石が始まり、翌日トレビュシェットの投石が始まった。目的は西側砦と城壁の破壊ではなく、塔の上に設置されたバリスタやオナガ、尖塔の破壊である。トレビュシェットの設置から更に10日に渡って行われた投石で、これらほぼ全ての破壊が終わった。一部破壊できていない場所は、城外にまで居住区が広がっている西正門前の尖塔と塔のみである。


 気温が徐々に上がり、夏の気配が感じられる季節になった王都で、西砦の攻略戦が始まった。

 破城鎚が用意できなかったこと以外は、至って普通の城攻めだ。攻城塔を城壁へ付け、それ以外の場所では梯子を用い、堀を越えて無理やり城壁へとよじ登る。頭上を通過していく味方の投石の援護を受けて、ひたすらに力攻めを行うのだ。

 遠くから放つお互いの矢は魔導士によって届かないが、魔導士の影響を受けない城壁の下へ張り付いての射撃や、城壁の上からの射撃はいつも通りに行われ、お互いの被害は膨らみ続けた。


 この攻城戦が8日に渡って行われ、一向に状況が変わらないと報告を受けた時、自分は「私のマジックアローで城門を叩きましょう」と進言したが、東方大公とエメリヒ第三王子は「大軍には大軍の戦い方がある」と、取り合う事は無かった。


 自分の進言が却下された時には不満があったが、自分の機嫌など関係なく物事は進んで行くもので、更に4日後には状況が動き、西城壁を突破し2日後には西砦の攻略まで終了した。この一連の攻略戦で南軍800人の兵士が捕虜となり、300近くの兵が死亡、残りの400は中州砦へと撤退した。


 これにて王都の南軍は中州砦と王城のみに籠るとなり、翌日からは中州砦の攻略が開始された。

 王城がある東側からは破城鎚を先頭とした軍と、王都とその周囲からかき集められた小舟に乗った即席の水軍によって行われた。西側からは攻城塔2つと、同じく即席の水軍が攻略に向かう事になる。

 川の南北ではダミアン・エーリヒ第二王子が船で逃げた時に備えて、1000づつ合計2000の騎兵が置かれていた。


「かかれ」


 憂う表情を見せるエメリヒ第三王子が下命すると、川の両岸から8000近くの兵士が中州砦へと殺到した。中州砦に籠るは約2000の兵士。この中にはダミアン・エーリヒ第二王子と、それを守る近衛騎士団がいる筈だ。


 中州砦に続くのは横幅30フィート(約9メートル)、長さ500フィート(約150メートル)のアーチを重ねた大きな石橋であった。これが砦から両側に伸びており、王都の東と西を”繋げる”。

 今、その橋の上には”分断された”王都の東と西を繋げようと、8000もの兵士達が必死の形相で中州砦へと向かっていた。

 中州砦にはオナガーなどの投石機は無く、その代わりにバリスタが設置されていた。それからの射撃により、今まで風魔導士により頭上からの矢を避ける事が出来ていた兵士が、数人ごと串刺しとなり橋の上に転がる。

 水軍の方ではもっと深刻で、運よく人に当たらなかったとしても、船に大穴が開くことで沈没する船が続出した。これに乗る兵士達は重いチェストアーマーやヘルムを付けている上に、泳げない者も多かったのだ。


 この光景を王都側の川岸に張った本陣で見ていた自分は、それこそ対岸の火事の気分で見ている。今回も近衛の仕事はエメリヒ第三王子の護衛だ。他に出来る事は無い。

 本来これが仕事の筈だが、今まで西へ東へ、北へ南へ山から川へと動いて来た自分には、どうにも手持無沙汰な気分だ。


 圧倒的な兵力差をもつ東軍は、中州砦を圧倒した。

 あらゆる方向から押し寄せる東軍は河川港や石の多い川岸から上陸し、そのまま造られた高い土手を駆け上ると、城壁へと殺到する。南軍の手薄な所から徐々に食い破りあっという間に、中州を囲む城壁の上は東軍の兵で満たされた。

 中州砦の中にいる南軍の兵士達は士気が旺盛で東軍はそれなりの苦戦をしたが、5倍以上に及ぶ兵数には簡単に勝てるものではない。徐々に重要な拠点となる建物や道を失陥し、中央にある河川港からの出入りを管理する役所である建物まで追い詰められた。そこに籠ったのはたった100程の南軍であり、それも夜のうちに全てが終わった。


 だが、ここで問題が発生する。


「おい、ダミアンはどこにいるんだ!?」


 エメリヒ第三王子は怒気を隠さない。


「話では……川から脱出したと……」

「だから言っただろうが!!!」


 エメリヒ第三王子は目を強く瞑り、眉間に深く皺を作った。

 彼が攻略を急いだのは正しかった。我々はたった今、この王都オレンジを攻略する目的を失ったのだ。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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