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7.王城内


 王都オレンジ城内……最後に見たのは数年前だっただろう。

 近衛騎士団から追放され、王都を出たのは早朝であった。にも拘らず王都の内は人が少なからず歩き、その人たちを相手に商売する働き者達が、たくさん歩いていたのを覚えている。それが、今や我々の軍隊以外の人を見ない。

 王城の中に避難した者達もいるだろう、西砦や中州砦の中に避難した者も。だからと言って全員がそこにいる訳ではなく、それぞれの家の中で必死に息を殺しているのだ。

 そこまで恐れなくても、我々も同じオロール王国の人間であるから略奪などは固く禁止されているし、するつもりも無いのだが、石を投げつけ続けた我々が言っても説得力が無いかもしれない。


「ふむ、変わらんな」


 とだけ発したエメリヒ第三王子は、久しぶりの王都への帰還であるにも関わらず、王都の内に入っても表情を変化させる事は無かった。


 そのままエメリヒ第三王子を始めとしたお歴々が揃う本隊は、王都の奥へと進み続けた。そして、中央を走る通り、市民の居住区の丁度中央に当たる場所にある集会場と、屋根付きの寄合所に本陣を移した。


「まだ終わらんのか?」


 寄合所の一室においてエメリヒ第三王子が苛立ちを隠さずに言った。

 我々は王と城壁内の敵を見える限り掃討したのだが、王城と中州砦、西砦は依然として抵抗を続けており、既にどっぷりと日は暮れている。外城壁と内城壁の陥落で、南軍の士気は完全に崩れたかと思われたのだが、南軍の約半数の兵士である3800がそれぞれ近場に籠ったのだ。

 中州砦と西砦に1400づつの2800に、王城はダミアン・エーリヒ第二王子に付いていた近衛騎士団と、元々王都の警備に付いていた近衛騎士団。それに西方大公の騎士団である、西方騎士団……合わせて1000の兵士が籠っていた。


 この籠った者達が厄介なのだ。

 士気は旺盛で簡単には退かない上に、王城はまたもや高い城壁と大量の尖塔があり、西砦と中央砦は川に守られているといった具合となっている。

 もう一度トレビュシェットやオナガー、バリスタを使う事が出来れば…と思うかもしれないが、まさか王城に投石をぶつける程の蛮行を出来る訳もなく、市街地が広がる王都でそれを展開する暇もない。西砦に攻略に関しては、運用することが可能ではないかと先程から続く軍議でやっと話したところだ。

 ただ、一度運用していた物を解体し、対岸に渡し、構築しなおすとなるとそれなりの時間がかかる事は間違いなかった。それに中州砦を攻略するには1本しかない石の橋を、渡り切らなければならない。


「西城壁と西砦の陥落を待ちましょう」


 東方大公の言葉は端的なものだった。


「西岸と中州砦には未だ、合わせて3000近くの兵がおります。これは放置すべきでありません」

「だが、王城も近衛と西方騎士団の精鋭だぞ?なれば王城に戦力を集中し、一挙に落とすべきではないのか?」

「エメリヒ陛下の仰ることも最もですが、王城の攻略は後回しにされる方が良かろうかと」

「だから、それが何故かと聞いているのだ」

「噂です。あくまで噂ですが…士気向上の為に前線に出て来ていたダミアン・エーリヒ第二王子が、王城への帰還に失敗し、中州砦に入ったとの話が」


 エメリヒ第三王子の表情は、怒りと戸惑いと複雑に混ざり合ったものだった。であれば、王城に入ったのは西方大公のみという事になるのだ。この戦いは言ってしまえば、ダミアン第二王子の身柄を確保で我々の勝利となる。それならば中州砦の方を攻略するのは道理だろう。

 知っている情報に差があるのであれば、前提に違いが出て来る。エメリヒ第三王子も「何故それを私に言わなかったのだ?」と怒気を隠さない口調で東方大公を詰めた。


「知ったのは先程、この場に入る直前です。軍議の場で申し上げるべきだと」

「水軍の準備は?逃げられてしまえば元も子もないぞ!?」

「出来る限り周辺地域から船を集めている最中です」


 エメリヒ第三王子は、膝に置いたヘルムをポンポンと叩く左手を止めない。右手は後ろ髪を掻き揚げて、苛立ちを抑えようとしているようだった。その証拠に普段は無い眉間と額の皺が時々現れている。


「分かった…であれば王城と西方大公は放置だ」

「急ぎ西城壁の投石準備を始めま「いや!」


 後ろ髪を掻き揚げていた右手で東方大公の話を制すると、エメリヒ第三王子は「こちらの兵士は5000を残して全て向かわせろ、到着翌日から力攻めだ」と断固たる口調で言った。


「何を仰いますか!?これほど有利な状況で力攻めをして、悪戯に兵を死なせろと!?」


 東方大公も受け入れがたい雰囲気で、自分も東方大公の意見に賛成だ。

 エメリヒ第三王子が何を急いでいるのか分からない。


「分かっていないな、このままではダミアンを逃す!」

「自らの玉座と王都を捨ててですか?そんな馬鹿な事をするとなれば南軍の心は離れ、後ろ指をさされるでしょう。そこまで愚かでありますまい」


 エメリヒ第三王子は「お前らは分かっていない、あいつは恥を知らないのだ。だから強い」と言って譲らない。どうにも、自分はエメリヒ第三王子がこの戦いに早い決着を望み過ぎているような気がした。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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