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2.トレビュシェット


「丁度良い……ラルス・バーガンディー殿、なぜ我々がこれ程の馬車を引いて来たと思う?」


 ラルスと呼ばれた東方大公の息子は、顎に手を当てて考えている。彼に注目が集まり、自分もよくよく見ると、東方大公をそのまま若くしたのではないかと勘違いするほど、風貌が似ていた。強いて違うところを挙げるとすると、若干髪色が暗く、目つきが柔らかい所か。


「食料の為でしょうか?遠征となりますが、まさか王国民から徴収する訳にもいかないので」

「それも一つだが、今回はトレビュシェットの為だ」

「トレビュシェット…オナガー(投石機)、バリスタのような物ですか?」

「そうだ、より大きいオナガーと考えてくれたらいい」


 王都の周辺には森が無い。王都から東へ2日、自分の生まれ育った村にある森が一番近くのもので、最も樹木が密集している場所だ。よって、王都では北方樹海や他の地域からの河川を利用した木材の搬入に頼っている訳だが、これには歴とした理由がある。

 王都周辺の豊かな土壌を農業に使う為であり、王都に攻め寄せる敵に木材を一切使わせない為でもあった。城方は中州の河川港近くに大規模な材木置き場がある為に、1~2年であれば王都の木材が不足することは無い程度の予備がある。


「だが、それだと城攻めは簡単ではない事は分かるな?」

「はい、攻城塔も破城鎚も作る事が出来ませんから……」

「あぁ、よってだ。この冬の期間を利用して大量の攻城兵器を用意した。それを分解、簡単に組み立てることが出来るようにして、大量の馬車に積み込んできた訳だ」


 今回の進軍で引き連れて来た馬車の内3分の1に及ぶ車両が、このために用意されたものだった。特にトレビュシェットなどは、部品も大きいために大量の馬車を必要とした。


 最初の軍議で案が出た時は自分がマジックアローを使い、城の跳ね橋を落とす提案をした。

 だが、跳ね橋を落とした先が問題である。鉄門に鉄の落とし格子…それだけならまだ全力でマジックアローを放てば何とかなるかもしれない。一つ目の城壁のすぐ裏に、また城壁があるのだ。


 これは王都の特殊な街並みに由来している。


 王城の丘から同心円状に広がる街並みは、丘から外側に向かって中央の王城、その丘下に貴族の別邸や身分の高い者達の住居、更に外に旧城壁を解体して作られた大通りの両側を様々な商店、市民の住居や工業地域が続く。

 この市民居住区と工業地域の中で、最外周の市民の区画と城壁の間にある家屋は、店や住居問わず石造りになっている。王城が囲まれた際には王城へ続く数本ある大通りの門が閉じ細かい道は封鎖、家屋の屋上と合わせて簡易的な城壁となる。

 そのために城壁の中で2回目の攻城戦を行わなければならず、相当な被害が予想されることが明かだった。自分のマジックアローでも、石造りの家や鉄門をいくつも完全に破壊できるほどの物ではない。一度破壊の為に全力を出したら、もう一度放てるのは翌日以降。4枚の城門を破壊するには相当なリスクを冒さなければならない上に、奪い返しに来る南軍の兵士をひたすら撃退しなければならない。狭い城壁内の区画ではそれは不可能だ。


「まさか、王都に投石すると…?」

「そうだ。今回持ち込んだのは、トレビュシェット10基にオナガー15、バリスタ20だ」


 ラルスの表情が固まった。

 王都に向けて投石するという話を最初に聞いた時は、自分含めて従う諸侯も困惑したものだ。第一に国民が住んでいるという事もあるが、王都の中には”真実の色教”オレンジ派の神殿を含む施設などがあり、我々の国家であるオロール王国たらしめる象徴といえるものが沢山あるからだ。


「我々は、”反逆”の徒に”不当”に占拠された王都と神殿を、正当な王と大司教の元へと奪い返す為に挙兵した。その過程では多少の被害が出てしまうだろう」

「……なるほど」


 エメリヒ第三王子の言葉を引き継いだ東方大公が、力強く”理屈”を息子に説いた。有無を言わさないその言葉には、我々の建前がかかっている。それを察することのできない程、彼の息子は愚かではない様子で、首を縦に振り納得した。


「目標は王都オレンジの正門たる東正門の両側…2つ目の尖塔だ。その城壁が崩壊しても更に投石は続け、2つ目の城壁…内城壁の破壊が終わるまで、昼夜問わず投石は続ける。幸い近くには川があるのでな、弾には困らない」


 我々の計画としては、まず塔や城壁の上にある敵のオナガーなどの兵器を、その射程外からトレビュシェットで破壊する。破壊した後にオナガーとバリスタを前に設置…その間もトレビュシェットは投石を続ける。オナガーなどの設置後は予定通り城壁に投石を開始し、破城鎚の組み立てをする。この破城鎚も特別仕様で、鉄門に対応した鉄芯が入っているものだ。


「明日の早朝には前進し、包囲とトレビュシェットの準備にかかるぞ」

「「「はっ!」」」


 エメリヒ第三王子の言葉で軍議が締められた。

 明日には王都オレンジの攻城戦が始まる。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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