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言語の壁は高い 異世界に行って何の苦労もなく言葉が通じるっておかしくない?

どうしましょう。明日レポート提出日なのに書いてしまいました。

こっちはかけるのにもう一つの方は書けないって………

何とかしないといけないかな?

世界とは、一つ一つが独立したプログラムである。世界の構成は、まるで高高度に発達したネットワークのようなものである。

これらのことから、我々は観測者であり、同時に被観測者でもある。


とある次元論研究者の言葉より

------------------------------------------------------


ビービービー


研究室に警報が鳴り響き、周囲が赤色のランプで染め上げられる。


「何があった!報告しろ!」


白い白衣を着た研究員達が情報収集のためにコンソールへと殺到する。


「都市内部第4地区東側にて、大規模重力波動が発生中です。数値5000……6000。さらに上昇中!」


一人の研究員が声を張り上げて報告を行う。


「電磁波指数と、放射線濃度、重力指数、陽子数も比例して増加中。……このままだと理論上では市街地にマイクロブラックホールが発生する可能性があります。」


モニターに現れた都市全体のセンサーを確認した職員が報告する。


「まさか……。LMP2Gの稼働状況はどうなっている?」


その研究員の一言でモニターが一斉に切り替わる。


「現在LMP2Gでは反重力トランスポーターの粒子実験が行われています。しかし、対象区域とは数十キロ離れた場所です。」


そうなると、LMP2Gによる現象ではないということになる。そうなると、この現象は一体……。


「……技術局時空間研究科の名にかけてこの現象について調査を開始せよ。センサーから何も逃がすな!」


研究員達はその言葉で水を得た魚のように動き始める。今までは此処は理論だけを求める研究所だった。でも今は違う。研究材料は直ぐそこにあるのだ。


モニターに表示されている数値が刻一刻と変化していく。


「……残り10秒で臨界点に達します。マイクロブラックホールは予測では1フェムト秒も経たずに消滅します。」


「緊急事態発生!重力指数に変化発生。空間が歪んでいます!」


切り替わるモニターには移り変わるグラフの他に都市内部のカメラの映像がある。その映像は不可解なほど歪みを見せている。

普通なら、中央に技術局の塔が映り込む映像のはずがある空間だけ変な方向へとねじれて見えている。


そして、幾つかの歪みの先には何かの像が写り込んでいる。だが、それはとてもぼやけていて何がなんなのか解らない。


「画像解析急げ!」


その号令と共に高性能カメラに写りこんだ歪み内部の歪んだ空間が解析されてきちんとした画像へと切り替わる。


そこに写っていたのは映画にしか出てこないような鬱蒼とした森である。遠くには何か大きな石造りに建物が写り込んでいる。


「これは……いや、ありえない……。でも実際に目の前に……。」


何かを知っているのであろうか、その研究員は映像を見てうろたえる。


「何か知っているんですか!」


その研究員に対して何人かの研究員が詰め寄る。残りの研究員は聞きたそうにするが、自分に与えられた仕事をこなしている。


「時空間理論で述べられていることを前提に考えてみると、あの像が映し出しているのは、正しく異世界ということになる……。前提条件をクリアーしたすると、そこまで近づいていることだから何かが空間を飛び越えて出てくる……はずだ。その何かが来るかどうかを計測するんだ。」


了解。 そんな声が研究室に響きわたる。


モニターではカウントダウンが既に始まっている。


4・3・2・1……0


その瞬間。様々なセンサーは確かに何かが発生したことを観測した。


また、分かりやすいところでは先程までねじれた映像を写していたカメラが元のきちんとした映像を写している。

ねじれを発生させていた空間が一瞬のうちに消え去ったのである。

「解析回せ!発生地の精密な特定急げ!」


計測持体は終わったがそれで終わりではない。むしろ此処から始まるのだ。


「俺たちの時代がやってきたんだ!」



------------------------------------------------------




……あれ……痛くない。


そう思って恐る恐る目を開くとそこには、こちらを穴が開いたように見つめている男が居た。

その男は、明らかにうろたえていて、机の何かとこちらを何回も見ている。


そして何かを決めたようにしてこちらに近づいてくる。


「KON NICH I WA DO CHI RASA MADE SYOUKA…………Hello.What's your name?」


その口から出てきた言葉は理解が出来ないもの。

リュナの中で、恐怖心が一層掻き立てられる。


「来れ精霊の娘らよ。来れば我を害するものに天罰を……」


一気に護身用の攻撃魔法をまくし立てる。狙いは、黒髪の男。


胸元に下げている魔導器がリュナの詠唱に反応して、淡い光を放ち始める。


その詠唱を聞いた男が机の上の何かを取ろうとしている……まさか武器!


「マジックスタン!」


魔力の流れによって自分の中の魔力が、減っていくのがわかる。


バチン……


そんな魔法が弾けるような音がして、ゆらりと男は倒れて行く。


ガン……後頭部を何かの箱にぶつけたらしい。その箱の中からガリガリという音が聞こえてくる。


何も無い空間に魔法の残滓がパチパチと音を立てる。


気を失った男は時々ピクピクと身体を震わせている。


そこまでして、ふと周りの状況に気づく。


な……なんなのコレ?


手から魔導書が離れ、パサりと音を立てて落ちる。元々損傷があった上に剣で切りつけられたためにもう本の体裁を整えていない。

ページはボロボロと本から離れ、辛うじて残っているページもようやくつながっているという程度でしか無い。。


自分がへたり込んでいるのは柔らかい布の塊の上だ。寮の部屋の物とはかなりグレードが違う。


周りを見回してみると、よく分からない箱みたいなものが沢山ある。


と……とにかく動かなくちゃ。あいつらが来ちゃう。


そう思ってリュナは立ち上がろうとするが膝には力が入らない。柔らかい布に足が沈み込んでしまう。


それどころか、緊張と恐怖で、生暖かい何かが……止まっていたはずのものが今現在漏れているのである。


「…な……と…止まってよ。」


彼女は、半泣きしているが、それが収まることはない。


その結果、ベッドには見事な地図が浮かぶこととなってしまった。


……なんとも哀れなことである。


--------------------------------------------------------


音の発信源であるベッドを振り向いて驚いた。


ベッドの上には、血塗れでぼろぼろな女の子がいたからだ。肩から腕にかけてとまり掛かっている血が見える。


……脳内彼女?もしくは、今流行のラノベ的何かか?


空から落ちてくる美少女じゃなくて、爆音と共に現れる傷付いた美少女か?


一瞬だけそんなアホなことが浮かび上がるが、そんなことはどうでも良い。目の前には、血塗れの少女がいるという事実がある。


深呼吸深呼吸……。


ス~ハ~ス~ハ~。……よし。


パニックになる頭を抑えて状況を確認する。


多分彼女が現れたのは、さっき変な動作をしていたプログラムに違いない。


そうやってモニターを確認してみる。モニターの数値は100%に成っていて完了の文字がある。


先程まで出ていた文字群は消えてしまっている。


……後でログを調べてみないと。


そう思って、意識をいきなり現れた彼女の方へと向ける。


さっき動かしていたプログラムが原因なのか、それとも他のものが原因なのかは解らないけれども、まずは話を聞かないと……イヤハヤその前に救急車か?……とにかく話しかけないと……


そう思って、思い切って声をかけてみる。


「こんにちは。どちら様でしょうか?………Hello.What's your name?」


途中で、容姿的に見て日本語は通じないだろうと思い英語に切り替えて話をしてみる。流石に英語だったら通じるだろうと思っていたのだが……。


その少女の顔が恐怖にゆがむ。


「hsurj dloiurh sgdhfvbadlhs yegkuid bcakjnjk skhaibvb shhbanxhvi 」


全く聞き慣れない言語を彼女は発する。一体どうしたのだろうまさか……発狂でもしたのか?


その言葉と共に、少女の首から下がっていた懐中時計のようなものから淡い光が漏れ出す。一体なんなんだあの光は。


机の上の携帯端末を取ろうとして目を離した一瞬で静電気のような……何かの気配を彼女から感じた。


そして、そちらに目を向けてみると赤い電気のようなものがこちらに襲いかかってくる。


「な……」


バチ……


いきなりのことに身体の回避が出来ない。


その電気のようなものに触れた瞬間に体が跳ねる。一瞬だけ跳ねて、再び跳ねる。


その感電した痛みを感じること無く意識は、暗いものの中に落ちていった。


本当に意識が落ちる前に後頭部に衝撃を受けたのだが……彼はそれにすら気づかなかった。


-------------------------------------------------------

「う……」


恥ずかしくて声も出ない。なんで18にもなってその………


リュナの顔は真っ赤になってしまっている。その場から動こうとするが、腰が抜けてしまったのか、動けない。


しばらくして、落ち着いてきたのかやっと周りをじっくりと見回すことが出来るようになった。


白い壁の部屋。大きさは……一度だけ見たことのある王宮課程の寮の部屋ぐらいの大きさなのだろうか。パッと見、そこにある机のようなものと椅子のようなものは自分たちの寮にあるものよりもイイものである。よくわからない形ではあるが……。


机のようなものの上にはよく分からないガラスがはめ込まれたものが置かれている。


そのガラスは、ピカピカと様々な色を出している。


「……綺麗。」


それに見とれていると、机の近くに倒れていた男が、身動きする。


「u……」


よくよく見てみると、男が来ている服装は、見た感じ自分が着ているものとは全然違うがそれなりに良さそうに見える。

少なくとも、王都のスラムにいるような不潔な感じは全くない。


それどころか、襲ってきた男達が纏っていたようなマントもまとっていない。


まさか……


まさか、この人は、王宮の魔道士であの窮地からどうやってか救ってくださったの?

私はそんなお方になんてことを……


自分のやったことを振り返ってみる。


よく分からない言葉で語りかけられたから驚いて攻撃してしまい気を失わせてしまった。


もしも本当に王宮付きの魔道士だとしたら……


とにかく介抱をしなくては……


そう思って動こうとしたが、ふと気づいて自分の格好を確認してみる。


マナストーンの暴走に巻き込まれたので、制服であるスラーブと蒼を中心としたジーレは、ボロボロ、ついでにナイフでも切られたから血に染まっている。

そして、スカートの方は……下着からして大変なこととなってしまっている。


こんな格好では……


リュナは気を失っている男の方をちらりと見る。


……時々身体が動いているがまだ気を失っているみたいである。


だったら今のうちに……


自分の直ぐ後ろに落ちていたカバンを拾い上げる。


カバンは主人とともに森を駆け抜けてきたため多少汚れてしまっているが血はついていないので大丈夫だろう。


カバンを開けて、代わりの服を出す。


カバンに入っていた服は昨日着ていたやつだけども……大丈夫よね。


………少なくとも今君が着ているものよりは問題ないだろう………


もう一度、気を失っている男の方を見る。


「u……u……」


うっすらと男が目を開ける。そして、視線をぐるりと回して、バッチリと目があってしまった。


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体に感じる痛みによって覚醒する。


「う……うん……」


ゆっくりと目を開いていく。ぼんやりとした部屋が目に入って来る。


それから目が、元の仕事を思い出したようにゆっくりと焦点があってくる。

身体が、ゆっくりと元の機能を取り戻していくような感じがする。

それと同時に、身体中から、軽い痛みが生じてくる。特にひどいのは後頭部だ。


ぐるりと視線を回して部屋を見回す。


……ん?


こちらの見ている少女とバッチリと目が合う。


少女の目は碧。外国人にはよくある目の色だ。顔の方は……ちょっと可愛いかな?


……気まずい。


てっきり、あっちから視線を外すかと思っていたんだが一向に外す気配が無い。とはいって、こっちから外すのは、なんだか気まずいし……


「……」

「……」


気まずい。非常に気まずい。


とりあえず……


「俺の名前は和泉愁也。あなたのお名前は?……My name is Syuya Izumi. What's your name?」


とりあえず自己紹介をしよう。それにしても、さっきのは一体なんだったんだ?連邦非加盟国の特殊兵器か?


……反応なし。いや。首をかしげていると言うことは言葉が通じていないと言う可能性も捨てきれないな。


だとしたら……ボディランゲージで表現するしか無いかな?


そう思って、ボロボロの少女に近づく。………さっきみたいに攻撃されないよね?


少女の前にたって、指で自分を示す。


「シュウヤ…シュウヤ」


何回か自分の名前を言ってみる。果たして通じるだろうか。

通じてほしいな~。


「Sya?」


そんなふうに首をかしげている。


「Syu u ya」


音節でわざわざ区切っていってみる。すると……


「Syu-ya」


こちらを指さしてやっと答えてくれた。なんとか理解してくれたようである。


俺が首を縦に動かして肯定の意味を伝えると、今度は少女が泥だらけの指で自分をさして言葉を発する。


「Ryuna」


聞こえてきたのはウルーブナという音であった。


「ウルーブナ?」


そう問いかけると彼女は首をふる。そして、再び、自分の名前であろう音を口にする。


「Ryu-na」


だが、その音は、全く理解ができない音の塊である。なんとか拾い集めるとリューナという音にも聞こえなくはないものであった。


「リューナ?」


そう言って見るとちょっと困ったような顔をしながらそれでも、頷いてきた。


遠からず、それでも当たりではないのだろう。


それよりもこの子はケガをしている。見た感じ救急車を呼ぶようなものじゃなさそうだけれども、まずは傷の手当を……


……と思ったのだが、なにか鼻につくような臭いがする。これは一体?



クンクンクン……


……どこかで嗅いだようなある感じの匂い……そう……例えばトイレ……


そうしていると少女が恥ずかしげに、顔を真っ赤にしながら腕を引いてくる。


一体どうしたんだろう……少女の目線を追ってみると……


なるほど……どこかで嗅いだことのある匂いだわな。


……まずは風呂で汚れを落としてもらって、それからだな。


それにしても、いきなりこれとは……面倒をかけさせてくれる……。


仕方ないので、少女にニッコリと笑いかけてちょっと待てと言うジェスチャーをしてから洗面所に向かう。そのまま浴室の扉を開けて湯沸しの準備をする。


「温度はぬるめで……と……」


それのあと直ぐに乾いたタオルと濡れたタオルを持って少女の元に戻る。


ベッドに戻ってみるとまだ少女は地図の上にへたり込んでいた。


こちらを見ると、何やら複雑そうな表情を浮かべている。


とりあえず、少女にジェスチャーで靴を脱いでから下半身を拭くように指示をして濡れたタオルを渡す。


少女は、最初こそなにを意味しているかわかっていなかったみたいだが、靴をさして脱ぐジェスチャーと乾いたタオルで足を拭くまねをすると合点がいったらしく笑顔になっていた。


少女が、ベッドから降りると同時に敷き布団とシーツを回収。そのままシーツは洗濯へ、布団の方はベランダへと行くこととなった。


つくづく今日が晴れでよかったと思う。


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さっき気絶させてしまった魔道士であろうシュヤは親切にも私にとても柔らかいタオルを渡してくれた。


そして、私が汚してしまったベッドを嫌な顔せずに片付けて部屋を出て行ってしまった。


……とりあえず……


「拭かないとね。」


ブーツを脱いでから粗相をしてしまったあとを拭う。少しの時間をかけて汚れてしまったところをきちんと拭うことが出来た。


そして、カバンの中にあった替えの下着とスカートを身につける。


あとに残ったのは……じっとりと重たくなったスカートと下着であった。とりあえず……


リュナは乾いたタオルにそれらを包む。


ちょうどそれが包み終わったときに部屋を控えめにノックする音が聞こえてくる。


そして、シュヤが入ってくる。


そして、何かを言いかけたが再び体を使って表現をし始める。


……何をしたいのかしら?


全く意味の分からないことであった。


シュヤは、少しの間考え込んで私の使ったタオルを拾い集める。そして、私のブーツとカバンそして魔導書を回収してしまう。


それからいきなり私の腕をつかんでくる。


「いや。はなして!」


そう少し大きな声を出すとぱっと手を離してバツの悪そうな顔をしながら頭を下げてくる。


この人は、たぶん私のためを思ってしてくださっているのに……


「ごめんなさい……」


そう言って頭を下げるとますます恐縮したように頭を下げる。


もっと王宮の人って傲慢な人だと思っていたんだけれども……




………誤解を解くことは難しい。言語の壁はものすごく高い。………



それから、部屋を出てシュヤに連れられてきたのはなんだかあったかい部屋。


此処はどんな部屋なんだろう。部屋に入ってみるとなんだか大きな音がする。


部屋を見回してみると部屋の端っこに大きな縦長の箱があってそこから大きな音が出ている。

そして、化粧台のようなものには大きな鏡があってその周りにはよく解らないものが並んでいる。


鏡の上を見て驚きの声が出る。


「え……なんで?」


さっきまで気づかなかったけれども、魔法灯の一つも無いのになんでこんなに明るいの?


光を出しているものをまじまじと見てみる。


魔法灯の魔力の流れを感じられない……なのにその丸いものは光を出し続けている。一体なんで?


ふと肩が叩かれることに気づく。

そちらを向いてみるとシュヤが心配そうにこちらを見ている。


無理やり笑顔にして心配をかけないようにする。


今の私笑えているかしら。


……残念ながら引き攣った笑みです……


シュヤの体の動きから察するに汚れているから水浴びをしろって言うことみたいね。




まあ、確かに下半身は拭かせてもらったけれどもその他は、ドロドロ。


此処はありがたく浴びさせていただきましょう。


シュヤがガラスの嵌め込まれた扉を開く。中からは、湯気がモワッと出てくる。


なんなのコレ?


再びリュナは驚きに包まれる。目に入ってきたのはなみなみと張られた湯気が出ているお湯。


寮のものよりも断然狭いがこんなにお湯があるなんて普通じゃない。こんなのに入れるなんて、本当に王宮課程の生徒ぐらいよ。


再びシュヤに肩を叩かれて使い方を教わる。


てっきりなみなみと張られた湯を使って汚れを落とすとばっかり思っていたのに出っ張りを引いたら、温かいお湯が出てくるってなんなのよ。


その後の表現はあんまり解らなかったけれども要するに、体を洗ったらお湯の中に入れ?って言うこのなのかしら?


そして、最後に、かごを示して服に触って入れるような表現をした。それと一緒に手に持っていたタオルをそこに入れる。


そして、カバンと一緒に大きなタオルを別のかごに入れて部屋を出ていこうとした。


「ちょっと待って下さい。」


出ていこうとするシュヤの服をつかむ。そして、ブーツを指し示す。


すると、シュヤは自分の足を示す。


シュヤの足にはブーツが履かれていなかった。


視線を戻してみると指でブーツを指し示して手でバツを作っている。


……なるほど。


納得して、頷くとシュヤは、こんどこそ部屋を出ていった。


--------------------------------------------------------


洗面所を出ると早速リビングへ向かう。


それにしてもこんなことになるなんて……


神様……俺悪いこと何かやりましたか?


神がいるかなんて22世紀の俺たちにも分からない。

まあ、ただひとつ言えることは、別に神がいてもいなくてもどちらでも変わらないと言うことだ。別に信心深いわけじゃないし……ローマの法王様にとっても新興宗教として勢力を伸ばしつつある『漆黒の月』の指導者にとっても、言い方は悪いが同じことだろう。


だって、宗教の中で明確な姿形が無い以上その宗教のシンボルは最高指導者である自分自身であるのだから。


まあ、別に神がいたところで、日本古来からつづいているお正月やら七五三やらの行事がなくなるわけでもないし、いなくてもバレンタイン、クリスマスの二つのイベントは消え去ることはないだろう。


……とりあえずまずは言語の壁をどうにかしないといけないな。


リビングにはいって机の上によく分からない古ぼけた本を置く。ギリギリ本の体裁を整えているというものだな。……傷がなかったら古書としての結構な価値がありそうなのに……


慎重にそれをめくっていく。よく分からない文字がずらりと並んでいるページがあったり、逆に何も書かれていないページもあったりする。

バラバラになったページも見てみるが手がかりになりそうなものはない。


少女の持ち物だけれども、全然理解が出来ないな。文字を見ればどこの出身かわかるかと思ったのに……


そして、キッチンから適当な大きさの新聞紙を持ってくる。その上に少女が履いていた編み上げブーツ的なものをおく。少し変わったデザインだな。

少なくとも、このへんじゃあまり見ない形だし……。もしかして欧州の方のファッションだったりするのか?


それを見ていても解らないので仕方なく、それから目を離して仕事兼私用の薄型PCを起動する。


西暦2130年現在コンピューターは大きく分けて3つのものに分かれている。

理論自体は40年以上前から存在していたが20年前に初めて登場したゴーグルを付けて仮想PCを動かすと言うタイプと、コンピューターの黎明期からずっとあり続ける本体とモニターがあって初めて動くという物、そして、特殊なチップを前頭葉、後頭葉、頭頂葉、側頭葉、脳幹の5ヶ所にインプラントするという方法に分かれている。


バイザーを付けるタイプは脳への擬似的なアクセスを行って物事を処理するため大容量のデータ処理をスムーズに高速に行うことが出来る。その為もっぱら、仕事で使用されるのはこちらの方だ。しかし、いくら脳で動かすといっても視覚的に確認した方が良いという人もいる。そして、仮想PCの技術というのはあまり応用が効かないものなのである。


物理的に存在するPCであれば、必要なときに必要なものを接続もしくは、インストールすれば良い話だが仮想PCは脳味噌……延髄部に擬似的であるが接続をしているのである。

やたらめったらプログラムを突っ込めば使用者に死の危険性もある。

そのため、臨床実験を何度も行いそれにパスしたものしか使えないようになっているため物理的なPCでは出来ることも、仮想PCでは何年も遅れて出来るようになるのである。


ちなみにインプラントの方は、まだまだ出てきたばかりであり大規模な手術が必要であることや、チップを埋め込むところを少しでも間違えれば死亡すると言うケースがあったりするので普及は殆どしていない。まだ実験段階の物である。完全な実用化には最低でも、ここでは30年くらいはかかるというのが大半の研究者の予測である。


薄型PCのモニター……

有機ELはコンピューターの黎明期であろう2010年には、小規模ながら実用化されていたものが、時代が進んだ今では一般的にどんなものにでも使用できるようになった。

……には様々な情報が表示されている。


「おはようシュウヤ。なにかあったみたいだけれども大丈夫?」


開いたパソコンを触っていると部屋の天井から音声が聞こえてくる。システム管理AIのフローラだ。なかなか人間臭いAIだ。中に人が入っていても驚かない……と思う。


「センサーで感知しているだろう。あり得ないことなのにプログラムを走らせたらいきなり人が現れた。」


パソコン……というか、虚空に向かって話しかける男。数十年前だったら、変人として見られていただろう。


「確かにびっくりよね。……プログラムのログは取ってあるから、後で見てみてね。」


「了解。了解。……連邦政府情報局ネットワークにアクセス。」


「わかりました。……音声認識完了。和泉愁也元システム管理主任と認識。……デバイスネットワークを構築中……連邦政府情報局ネットワークへのログインに失敗しました。管理主任権限が喪失しています。……手が早いわね。」


システム管理AIの反応が帰ってくる。本当に手が早いもので……


自分を首にした忌々しい上司の顔が浮かんでくる。


いつもだったらどんなことも後回しにするクセに。


……それにしても参ったな。連邦の情報局から、音声認識ファイルをダウンロードしようと思ったのだが……


連邦……地球連邦は国際連合を元としており、その目的は利益を互いに共有することによって世界平和をめざすと言うものである。人類が、宇宙というものに進出してから地球という限られた資源を争うのではなく協力して宇宙空間を開発しようと言うのが建前である。

本音はどんなものなのかわからないが……


人類が宇宙空間へ本格的に進出を始めたのはおおよそ70年くらい前。西暦2060年代である。ちょうど人類が初めて宇宙へ出た時代からおおよそ100年が経った時のことであり当時はものすごく騒がれたらしい。


今となっては、昔では遠いものであった月や火星に基地や街が作られて人々が生活を行っている。当時は、様々な論争が繰り広げられたらしい。いわく、地球連邦との兼ね合いとかなんとか。


結局の所、現在各々には各星住民による連邦が作られており地球連邦とバランスを取っている。


連邦が完成したことによって、現在ではそれまでの国という分類は地域の分類としてしか存在せず、かと言ってそのままなくすのも問題であるので各国政府は連邦の下で動くこととなった。


その体制に反発しているのが北コメリカを中心としていたコメリカ、アジアの北東部に位置していた巨大人民国家ポーチュナを中心とした連邦非加盟国である。今では、その勢いも衰えつつあるが昔は国際連合を牛耳っていた存在だったらしく連邦をもその手に入れようとしていたらしい。


結局の所、当時のヨーロッパ地域共同連合や、東アジア地域経済協力機構、そして当時国民や、諸外国からの借金まみれで火の車状態だったけれども、技術だけはあった我が国日本などなどが協力して国際連合を無理やり作り替えたらしい。


当時は結構どろどろしていたらしく、あまり情報が残っていないのだ。歴史書に書かれているのは、どれも共通して、国際連合から、地球連邦が出来たと言う金太郎飴的な回答しか無い。たぶん戦争もあったと思うんだけれども……


どちらにしても、連邦と、連邦非加盟国は正直言ってあまり良い関係ではない。むしろ、敵対的な感じである。表面的には出てきていないが調べてみるとネットワークのアチラコチラでドンパチが起きていたり、境界線で小競り合いが起きていたりするようである。


だからここで彼女の所属をはっきりとさせておかないと……後々が大変な事になりそうである。


仕方ないな……


「コール……技術局……え~と……」


「技術局でこんな状況を解決してくれそうなのは……管理番号5623 牧原つかさ技術管理主任でいいですか?」


誰にかけようか困っていた俺にAIは適切であろう回答をしてくれた。


AIはやはりコンピューターの黎明期である頃から理論的にはあったらしい。しかし、高度な受け答えができるようになったのは仮想PCができてからのことである。


朝のオハヨウから夜のオヤスミまで、暮らしに夢と希望を。犯罪者には鉄槌を。


こんなセリフで登場したものであった。

そんなコンセプトで登場した当時はいろいろ騒がれたものである。


プライバシーの観点から見て、問題である。特殊な性癖の持ち主が出て犯罪を犯す可能性がある。安全性は保証されるのか云々。


結局の所、AIについては一から各々で育てると言うことという法律と犯罪行為を犯した場合はデータ完全消去と言う事となった。

ちなみにブラックボックスの箇所が結構多いのは仕方ないものである。


「全く早いもので。……おねがいします。」


「了解。通常回線でコール。ネットワーク管理部門へ接続します。」


その瞬間3D表現機構が起動して黒スーツにサングラスの厳つい男の姿が虚空に現れる。


昔の映画であったよな。確か……ターミネーちゃん?だったか?

未来からやってきたグラマーなネーちゃんと黒服の男が戦いを繰り広げるんだったっけ?


「こちら、地球連邦極東地域日本関東地区ネットワーク管理部門です。ご要件はなんでしょうか。」


業務用管理AIの声がしてくる。なんというか……結構無機質な声なんだよな……別に事務用だからいいんだけれどもさ~。


「技術局管理番号5623牧原つかさ技術管理主任をお願いしたい。」


「そちらの所属をお願いします。」


参ったね……果たしてつないでもらえるかな?


「戸籍番号38549-8674352。元SPトレンドシュア学術研究技術都市支社システム管理部門主任和泉愁也。現在はフリーのプログラマーだ。」


「現在あなたは無職なのですか?」


やっぱり突っ込まれたか。現在の連邦では、仕事についているかどうかが、価値基準である。

成人をしても仕事についていない人は特殊な学校へと入れられる。そこでみっちりと仕事について学び社会復帰出来るようにする。


逆にいうと、能力さえあれば若い人材が活躍できるって言うことだけれども。


フリーのプログラマーなんて相当の実績がなければ認められないのである。


もっとも、俺はというと……


「現在特殊条例の期間中だ。確認してみてくれ。」


特殊条例とは簡単に言うと元々働いていた人が、転職をする際や首を切られたといった場合の処置である。いくらなんでも、無職の人を全員学校へ行かせるのは困難であるためできた処置である。

もっとも、各々に、期限が設定されているのだが………


「……少々お待ち下さい。」


そんな声が聞こえてきた。そして数秒後………


「現在特殊条例の期間中であることを確認いたしました。残り期間は4年と8ヶ月24日です。それでは牧原つかさ技術管理主任へ接続を行います。」


そう言って男の姿が消える。


有機ELのモニターには様々な言語で「お待ちください。ただいま接続中です。」の文字が出てくる。その中で俺が読めるのは2言語だけである。


そして……


「ヤッポー、愁也久しぶりだね?ワッツハップン?ヨッポポーイ」


メガネを掛けてよれよれの白衣を着たやけにハイテンションな男が3D表現によって現れた。


良くドラマで出てくるような絵に書いたマッドのようである。


なんだか、髪はボサボサで、目の下は黒くなっていてかなりやつれているらしい。ついでに変な踊りもやっている。一体先輩に何があったんだ?


「先輩久しぶりです。おげんきですか?」


使い古された挨拶をしておくこととした。


「先輩は元気だよ。ヨホーイ。」


目の焦点はあっていなさそうである。まさか徹夜明けなのか?それにしては、ハイテンションすぎるし……


「徹夜明けですか?もしかして。」


「ノンノン。そうじゃなくて、寝ようとしていたら大規模な重力波が検出されたとか何とかでこっちにも調査依頼が来ているのさ!でもこれあれば大丈夫ヨロシ。」


そう言って、3D認識のカメラに近づけたのは何かの瓶であった。


「……なんですか?それ?」


いくら高性能なものでも、細かい文字までは読みきれていないようである。

別に聞かなくてもいいものを聞いてしまうのはなんでなんだろうか?


「技術局で開発した89種類のエキスを配合したトリッパー君(仮)アルネ。安全性については実験済みよん。うふん。」


大丈夫じゃないよそれ。なんだか逝っちゃっているから。言動もおかしいから。

やっぱり技術局は変人の集まりだったっていう噂は本当だったのか?


「君のところにもプレゼントしてあげるね。住所コードは代わっていないよね。」


え……正直言ってそんな危険そうなものいりません。


「君のところには、改良版のEX+を送ってあげるヨロシ。なんとこっちは倍の178種類のエキスアルネ。今なら特別価格よん。」


そう言って何かを始めたようである。つか、プレゼントっていっているのに金取るのかよ。


「いりません。見た感じかなり危険そうですから。……それよりも、今日は先輩に頼みがあったんですよ。」


変なものを送られてきても困るし本題をそろそろ言わないと時間がない。


「ナニナニ?もしかして首になったから雇ってほしいって?」


何も言っていないのにどこからその情報を手にいれたんだ……。まあ、いつもながらなんだけれども……。


「情報が早いですね。でも違います。……情報局のサーバーにアクセスしたいんですけどもシステム管理主任権限が切られているので、何とかして欲しいな~って思ったんですよ。」


「え~。どうしようかな~?」


目の前の男は身体をくねらせながら考えているようである。

正直言ってキモイ。ああ……そう死語だったかなこれは。とにかく気持ち悪い。


「……レポート。」


ポツリといった言葉に露骨に反応した。


「忘れていませんよね?」


そう言って、エンターキーを押す。

あらかじめフローラが準備していたファイルが開かれる。


そこから流れ出てくるのは……


「『お願いしますお願いします。どうか卒論助けてください。なんでもいたしますから~』『……先輩の頼みだからやりますけれども、出世払いで返してくださいよ。困ったときは助けてくれますよね。』

『フフフ……私が約束を破るとでも?私はいずれ技術局の局長になるものだぞ。しかと牧野つかさの名前を覚えておけ』

『立ち直るの早いですね……一応約束なので録音していますがいいですか?』『いいとも。私が嫌いなのは約束をやぶると言うことだからな。』


この録音は西暦2126年11月16日16時46分34秒から23秒間にわたって保存されたものです。

この音声録音には、音声中並びに電子署名に於いて両者の録音についての同意が存在するため地球連邦管理本部電子認証情報局制定電子認証法第45条34項、並びに地球連邦制定極東地域民法第1456条6項によって法的な効力があります。」


結構な武器である。


「……分かったよ。仕方ない。」


薬の効果が切れたのか落ち着いた表情で言う。


「助かります。一連の事が終わればお礼はしますので。」


「数秒待て………よし。ログイン権限を復活させておいたぞ。」


その言葉と同時にモニターにメールが入ったことが知らされる。


そのメールを開いてみると、権限の回復についての文書が書かれていた。


「ありがとうございました。なにかあったらまた連絡するので。」


「……また余計なことに突っ込んでいるのか?」


先輩が呆れたような顔をしている。


「いつもいつもお前はそうだ。………まあ頼ってくれて嬉しいよ。それじゃまたな。」


そう言って一方的に通信が切られた。


「もう十分厄介なことよね。……センサーに感有り。あの娘お風呂から上がったみたいよ。今は着替えているみたい。」


もう時間がなさそうだな。


「準備をするから、情報局サーバーにアクセスして登録されているすべての言語データを集めてくれ。音声認識で翻訳をやるから。」


りょうかーい。そんな声が聞こえてくるのを背にしながらリビングにつづいているキッチンへと入る。


え~と……この辺に………あった。


棚から出したのは近所の商店街で買った安物のココア。20パックセットで500円。大方多く仕入れすぎたせいで売るに売り切れなかったんだろうな。


ちょうどコップにお湯を入れたところで身元不明の彼女が現れた。


--------------------------------------------------------

な……何なのここは……。


王宮課程の生徒ならばともかく、一般課程の生徒であるリュナはものすごく久しぶりにお湯に浸かるという体験をしたあとであった。


しかし、その頭の中はスゴイ体験をしたということで埋め尽くされているわけでなく混乱で埋め尽くされていた。


リュナが浴室には入って思ったことは分からないと言うことであった。


普通の石造りの浴室ではなく、よく分からない材質でできている壁と床。

全く歪みが無く、曇らないガラス。

金属のデッパリを引くだけで際限もなく出てくるお湯。


正直言って、風呂を楽しむ余裕も感じられなかった。


なんでこんなことになっているのかしら……


肩にお湯がついて鋭い痛みが走る。


「痛……」


そこを見てみるとじんわりと血がにじみ出てきている。


傷を止めなくちゃ……。


「水の精霊よ。我に力を活力を……傷つきし身体を癒したまえ……ヒール。」


そんな声が響くと、傷口がどんどんふさがり傷も見えなくなる。

魔導器は外しているが、これくらいだったら魔導器なしでもリュナ単独での詠唱ですることが出来る。


傷が塞がったのを確認したリュナは一度湯船から上がって、シュヤに教えられたとおりに頭を洗い始めた。


「きゃ……」


何このネットリとしたの………


……言語が通じていなかったせいでボディーソープを頭にかけたりねっとりとした石鹸に驚いていたのは余談である。


そして、なんとか体を洗い浴室から上がったリュナ。


自分たちが使っていたものとは比べものにならないくらい柔らかいタオルで身体を拭かせてもらう。そして、カバンの中から着ることが出来る服を出して行く。少なくとも、ボロボロではないものを。

スラーブを着てジーレをその上に羽織る。それからプリーツの入った紺色のスカートを履く。

髪は……仕方ない。このままにするしか無いわね。


あまりロングではない髪は肩のところまでしか無い。


ちなみに、この髪型はセミロングと言う。別にどうでもいいことだが。


そうして、部屋を出る。


廊下の突き当たりにひとつだけ明るい部屋がある。多分そこにシュヤがいる。


その扉を意を決して開けるとなんだか甘い香りが漂ってくる。


部屋に入ると目に入ったのは食堂にあるものよりは少し小さいがしっかりとしていそうなタップルがある。

壁には、ガラスが取り付けられており外には……


「な……。」


天まで貫くかのような塔がいくつもある。


慌てて、ガラスに近づいてみる。


そこから見えたのは、遠くにものすごい高い塔が幾つもある光景であった。


な……


リュナは心ここにあらずといった様子で外をみている。


とんとん……


肩を叩かれるのを感じる。


そっちを向いてみると不安げな顔で心配そうに椅子に座らずにこちらを見つめるシュヤの顔があった。


今私の顔はどうなっているのだろうか……


シュヤに連れられて椅子に座る。その前にカップに入った飲み物が置かれる。


「dai jyou bu?」


意味は分からないが心配するような声色である。


「大丈夫です。」


ぜんぜん大丈夫じゃないけれどもそう言わないと、怖かった。


「un……imakennsakuwo kaketakeredomo kakuninndekinaigenngotaikei ne sukunakutomochikyujyouniha sonnzaishinaiwane」


「kakuninn dekinai tte douiu koto」


どこからか女の人の声らしい声が聞こえてくる。


でも、キョロキョロとしてみるが女の人の姿はない。一体何なの?


シュヤは私の疑問を察したのだろうか、ある方向を指さす。


その先にあったのは……


「箱?」


「kanntann de iikara jikosyoukai」


シュヤが何かを箱に向かって言うと箱からまた女の人の声が出てきた。


「watashino namaeha flora. flora.」


「フロラ?」


そういうと箱についているガラス板?がピカピカと光る。


多分間違えではないのだろう。


もしかして、やっぱり魔法なの?人が居ないところから声が聞こえるなんてこの人は使い魔を持っているに違いないわ。


シュヤは考え込んでしまっている。言葉が通じないと言うのはお互いにとってあんまりよくない。


あ……あの魔法だったら………


リュナの頭に急に思いついたものは一度だけ学院の書庫で見たことがあったロストマジックだ。たしか効果は……未知の言葉を習得できるという効果だった気が……


でも、なんだか注意書きがあったような気がする……


う~ん?う~ん?


なんだったかしら、本当に……


「daijyoubu」


またシュヤが心配そうな顔でのぞき込んでいる。


作り笑いをして、大丈夫。という。でも大丈夫じゃない。


「imanogenngoha……syuuya tabunnkanojyoha daijyoubu tte ittato omouwayo 」

「sugoina yokuwakattana」


……やるしか無い。


リュナは、覚悟を決めるとカップの中の暖かいものを口に入れる。


甘い……こんなの飲んだの……初めて……


今までリュナが食べたり飲んだりしたものの中で一番甘いものであった。


そして……


「我は人の子、我が前にいるものも人の子なり。同じ人の子の間に…………」


ドクン


なんだかハルトが打ち金みたいになっている……何なのこの……


顔と耳がなんだか熱い。


詠唱が進んで行けば行くほどハルドがなんだか激しく高鳴っていく。なんだか体も火照ってきて……


--------------------------------------------------------


「な………どうしたんだ?」


急にリューナがぶつぶつとよく分からない言語を発し始める。


「解らない。ちょっと待っていて……センサーを起動。スキャンを開始します。」


「どうだ結果は……」


結果を聞く。


「……分からない。」


は?分からない?此処のセンサーは技術局の連中が付けているものだぞ。連邦の最先端の科学技術の塊でも分からないって何があったんだ?


「サーモグラフィーだと彼女の体温が急上昇しているの。でも、その原因が分からないの。」


「何かの病原菌の可能性は?」


「待って……無いわね。今空調から水質検査まで行ったけれども、そんな病原菌は検出されていないわ。もっとも、彼女自身に何かある可能性は否定出来ないけれども……。」


「飲んだ物に原因は?」


なにか言い始める前にコップに入れたココアを飲んでいた。まさかそれか?


「ちょっと待って……精密スキャン……完了。無いわ。アレルギー反応も無し。全然解らないわ。」


と……急になんだか甘い香りがしてくる。


何なんだ?一体?


なんだかこの香りをかいだ瞬間心臓が高鳴る。


「センサーに異常あり……。これは!……異常な量のフェロモンが……な……」


急に、目の前の椅子に座っていたリューナが立ち上がってしなだれるようにして抱きついてくる。


「な……な……」


急なことで身体が動かなくなる。いや一部だけはものすごく正常に起動を始める。


少しだけ濡れた髪の毛がちょうど鼻のところへあたってふわりと、良い香りがしてくる……


心臓が、むちゃくちゃな鼓動を始める……。


息が……


「愁也……こっちも異常な体温上昇……ってこれって………」


なにか聞こえてくるけれども、分からない。今大事なのは目の前の……


こっちを見ているリューナの目は、潤んでいる。そんな目に吸い寄せられるようにこちらもリューナを抱きしめてしまう。

リューナの身体は華奢だ。ちょっと力を入れてしまうだけで壊れてしまいそうだ。

リューナを抱きしめる手がなにか柔らかいものに触れる。


「ahi……」


そんな溜息のような声が漏れる。


その声に俺の心臓はさらに早鐘を打つ。そして、そんな声が漏れたしっとりと濡れる唇に興味が移る。


甘い匂いがどんどん強くなって行く。もうわからない……。


そして、リューナが背伸びをして、口づけを行ってくる。それもいきなりディープなもので……。


つながった瞬間に何かが流れ込んでくる……これは……。


それから先は、わからなくなった……。



--------------------------------------------------------


「あ……あ……ああ………」


いきなりビックリ。そんな……なんなのあの娘?大胆すぎる……ああ……愁也も………


え……いきなりスカートを上げて………え………え~


ブラウスに手が……


……愁也……


……私ができることは……他の人に見られないようにしてあげることだけね………


大丈夫。後でお話のタネにするだけだから。


それにしても……あの娘もだけどもこっちも大胆ね。愁也ががあんなことできるなんて……結構長く一緒にいたはずなんだけれども……お姉さんビックリよ。


本棚の裏に隠したつもりの本で勉強していたのかしら?ああいうのって旧世代の異物だって思っていたけれども……まだまだ現役だったのね。


あ……男は野獣ね。



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