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異世界からやってきた細菌によって人類は全滅したりするのだろうか?いいやそれはない。

皆さんお久しぶりです。昨年11月に祖父が肺癌のため永眠してからまともに筆をとる機会が少なくなっていました。

エイプリルフールに書き上げた偽最終回はあまりにも拙いようなものだったと思います。

小説にしても、小論文にしても書かなければ下手になるとはよく言われるものでそのことを痛感している自分がいます。

文章表現などの面で厳しいお言葉があるかもしれません。

感想に書いていただければ直すよう努力するつもりであります。

時々筆が止まってしまうこともあるかとは思いますが、物語を進めていきたいと思います。

どうかよろしくお願いします。

「失礼しま~す。トーカイトンボ高速輸送です。お荷物の受取に参りました。」


昨晩から急ピッチで仕分けしたダンボールを積み上げていると荷物を受け取りに来た業者の声がする。


「フローラ。開けちゃっていいよ。」


ダンボールを運ぶ作業で忙しく開けている暇はなさそうだ。


はいはい。そんなフローラの声がすると、ガチャと言う音がして玄関のオートロックが解除される。


「トーカイトンボ高速輸送、高速輸送支援班のダニエル=オスカーです。お久しぶりですね和泉先輩。」


そんな懐かしい声と共に現れたのは大学時代同じ部活の後輩だったダンであった。


身長は平均くらいだが、その顔は老けて見えるせいなのか本来の年齢よりもかなり上に見られてしまうというあまり笑えない顔の持ち主だ。

高校時代は何かの用事でスーツを着ると学生ではなくカンペキに大人としてとらえられてしまったらしい。


そんなダンもトーカイトンボの制服を着ると多少老けて見えるけれどもそれでも許容範囲内の様に見える。


「久しぶりだなダン。早速だけれどもそこに積んである荷物を運ぶのと、大きな家具の移動をお願いしていいかな。」


今しがた詰めたばかりのダンボールにテープで封印をしながら指示を出す。

その指示にダンはうなづくと直ぐに一緒に来た部下らしい作業員に声をかけ始める。


指示を受けキビキビと動き出した作業員の動きは早い。


直ぐに玄関に積まれていたダンボールを運びだすと、壁や廊下に傷をつけないようにするための保護素材を取り付けていく。


さすが専門家といったスピードでみるみるうちに終了して次の作業へと移っていく。


俺もこうしてはいられないので自室に戻り荷物の仕分けを開始する。


とは言っても、氷漬けになって解凍された部屋から運び出せるものは余り無い。


せいぜい機密性の高いクローゼットの中にあった服とアーチェリーの道具、漢の浪漫と言う名前の超気密性金庫にしまわれていた若干の宝物……。


他のものは氷漬けになった際に破損するか解凍されたときにグチョグチョになってしまった。


前の二つはすでにダンボールに放り込んでいるがこれはどうしようか……。


金庫を前にしてどうしようかと悩む。


悩む……。悩む……。


金庫の解除キーを押して暗証番号を打ち込む。それからダイヤル式の鍵を解除する。


ガチャッという音を立てて扉が開かれる。そこに鎮座するのは……。


「シュウヤ!これはどうするの?」



体中の血の気が引いて、開いたばかりの金庫を勢い良く閉める。


開けられた途端に閉められたことに文句があるようにピピッと言う小さな音を発する。


自分の心臓がものすごいスピードで脈打っているのが聞こえる。


「ど…どうしたんだ?リュナ?」


いきなり声をかけられたことにびっくりしながら後ろを向く。

それにしてもいつの間に来たんだ?扉は閉めていたはずなのに。


「なんだか、顔色が悪いみたいだけれども大丈夫?」


よほど変な顔をしていたのかリュナが覗き込んでくる。


その瞬間に耳が急に熱くなるような感覚がする。


「いやいや。大丈夫!大丈夫!それよりもどうしたんだ?」


動揺を気取られないようにしようとするが声が震えている気がしなくもない。


「そう?え~と。これはどうするの?」


リュナが差し出した手には床の間に飾られていた壺が握られていた。


その壺は祖父からもらったものでウソかホントかは解らないが清王朝の時代のものであるらしい。


「ああ。それは保護材に包んでダンボールだな。俺もそっちへ行くよ。」


そう言ってリュナを部屋からさり気無く離す。


なんとなく気まずいからな……。


漢の浪漫。


その中身は金髪碧眼の美女のあられのない姿……。絶対に知られたくはない。


壺を持って部屋から出るとちょうどリビングからソファーが運びだされているところであった。


「ダン。悪いんだがそこの部屋の中にある金庫も運んでおいてもらえるか?」


これ以上部屋においておくとなんだかんだで運び出せなくなるような気がしてしまう。


わかりました。


その声を聞きながら今はリュナの部屋となっている和室へ足を踏み入れる。


部屋の隅にはリュナの几帳面さを示すかのように昨日買ってきたばかりであるはずの日常生活品が並べられている。


一度壺を床の間に戻して押入れの中にあるダンボールを探し出す。


そして、緩衝材を壺の周りにつけて割れないようにしてからダンボールに入れて他のものと一緒にしておく。


ざっと部屋を見回してみるがもうダンボールに入れるべきものはなさそうだな。


さてと……。


懐にある携帯端末を取り出して時間を確認してみる。


9:55分か。


確か10時に来るとか言っていたよな。


昨日の夜にメインPCに届いていた約束の時間をもう一度確認する。


「フローラ。移動の準備はできた?」


引っ越すに当たって今まで貯められていたデータの取捨選択の他にフローラ自身のデータの移動もしなくてはならない。


「う~ん。大丈夫。あと五分もあれば全部終わるわ。……データロムの取り外し完了ね。」


お!もうデータロムの取り外しが終わったのか。直ぐに梱包しないとな。


和室から出て家具を運び出しているトーカイトンボの作業員の後ろを通ってリビングへ向かう。


リビングの壁の部分は普段は隠し扉のようになっていて見えないが内側には管理AIの本体とも言えるロムチップと保存領域であるデータロムが格納されている。


その部分が今は解放されていて中のデータロムの回収ができるようになっている。


さすがにまだ本体であるロムチップの方には触れないように厳重に保護されている。


「すみません。データロムの保護材はありますか?」


さすがに手持ちの保護材では足らないようだ。ここに住んでから8年。それより前のものもあるからかなりのデータロムがささっている。


「ねえ。シュウヤこれって何?」


リュナは興味深そうにデータロムを見つめている。


彼女の世界は聞くところには中世前後の工業レベルなのでこのような記録装置は皆無だろう。好奇心の塊であるリュナが気になるのも仕方ないだろう。


「これはデータロムって言うものでこの中に記録……例えばどこかへ行ったときの思い出とかそういうものがたくさん詰まっているんだよ。このデータさえあればかさばる紙をどうにかする必要もなくなるからね。ここでは普通に使われているんだよ。」


最も、本当に大切なモノは紙でやるんだけれども。


「へ~。そうなんだ。」


そう言っていろいろな角度からデータロムの観察を始めるリュナ。


使っている自分でもどうやって作っているか解らないからな。ほんと。どうやって作っているんだろうな。


トーカイトンボの作業員たちがすぐに保護材を運んできて、手早く梱包を始める。


その速さは、素人の自分たちがやるよりも効率がいい。


そんなわけでそこを任せて他にまとめていないものがないか確認をしようとしたときフローラから声がかかる。


「シュウヤ。移行終了よ。これから待機モードに入るわね。」


「了解。」


その受け答えが終わった瞬間にすべての管理AI直下で動いていたセンサー類が沈黙し、フローラの手からこの家が離れた。


ロムチップを梱包しているトーカイトンボの作業員の横で、規定された手順に従ってフローラのすべてが入っているロムチップを格納容器に封印する。


それと同時に万が一の補助系統ともいえるサブチップも別容器に保存する。


その作業が終了するのと同じくらいで来客を示すブザーが鳴る。


時計を見てみるとちょうど10時を差しているところだ。


時間キッカリ。ご苦労様ですね。


そうしながら扉を開けるとスーツ姿の男と2人の白衣をきた男女が立っていた。


「技術局人事特務課の斉藤です。和泉愁也さんとリュナ=ルオフィスさんで間違いはありませんね。」


初めにスーツ姿の役人と思われる男が自分とその後ろのリュナを見ながら確認を取ってくる。


それに肯定の意を示すとすかさず白衣をきた男女が「失礼します。」といってこちらにスキャナーのようなものを当ててくる。


リュナはそれを見てあまりいい顔はしていなかったけれども、それでも我慢してくれていた。


「取り敢えずは問題ありませんね。失礼しました。」


そう言って白衣の研究者たちは道具を片付けて役人の後ろへと下がる。


「本日現時刻よりお二方を技術局時空間研究科第4分室へご招待します。それでは時間も押していますのでどうぞこちらへ。」


鍵をダニエルに渡してあとのことをすべて任せてしまい手荷物を持って斉藤さんと二人の研究員についていく。


「自分は時空間研究科第3分室の八代っていうんだ。こっちが第2分室のマクダウェルさん。」


歩きながら男の研究員が自己紹介を行う。


「エミリー=マクダウェルよ。しばらくは私たちが技術局内でのフォローにつくことになっているわ。よろしくね。」


シルバーブロンドの髪の女性研究員が車の扉を開けながらフォローを行ってくれることを言ってくれる。


技術局は変態が多いって思っていたけども、偏見だったのかな?


技術局から回された車に全員が乗り込むと音もなしにゆっくりと走り出す。


リュナはそのことに感動しているのかその口から思考がダダ漏れしている。


「すごいすごい。車を引く動物もいないのに動き出すなんて。こんなにも早く動くのに音も揺れもまったく感じないなんて……。」


その言葉を聞いた八代研究員は首を横に振って話し始める。


「いえいえ。ルオフィスさん。そんな事はありませんよ。この車は次世代型のエンジンを使っているのですがまだまだ問題点が多くて本来なら数字上ですが9%ほどの振動の軽減がなされる予定なんですよ。使われている素材は……」


ああ。そういう方向のオタクか。別に問題はないけれども。


「ごめんなさいね。彼自分の趣味になると止まらなくて。昔は動力工学を専攻にしていたらしいんだけれどもね。……。」


動力工学を専門にしていたのになんで時空間研究なんていう部署にいるんだ?


そんな疑問を抱きながらも車は幹線道路を抜けて研究地区へと入っていく。


これから向かう先にあるのは技術局付属最先端医療研究センター。


部屋のセンサーで簡易的に体質を調べたりはできたが、さすがに詳しいこととなるとそれなりの専門機関でないと難しい。


また、異世界から来たリュナにとってこちらの病原菌に耐性がないというおそれもあり、その逆もあり得る。


たぶん今頃はかなりの規模で消毒活動が行われているんだろうな。


少しだけ苦い顔になるがそれを押しとどめておく。


昨晩届いた資料の中には異世界からの細菌類があるかもしれないという可能性を示す物があり、リュナについても書かれていた。


少し考えればわかるはずなのに何も考えなしで連れだしてしまった自分が悔やまれる。


SF小説とかだと未知の土地からの病原体でその土地がほぼ全滅状態となる設定がよく見受けられる。


誰でも思いつくようなことなのにそんな事も気に留めていなかったとは……。


まあ、最悪リュナが感染症にかかったとしてもそれを治すだけの技術もあればバックアップもある。


まあ、その逆は結構危ないけれども……。


そこまで考えてふと最悪な考えが浮かんできてしまう。


……今一番危険なのって俺じゃん。濃厚な体液交換もしてしまったし……。


……多分大丈夫だ。ついでに検査をしてもらおう。


そんな事を思っていると車は厳重に守られたゲートを抜けて目的地である最先端医療研究センターに到着する。


センター前の入口と思われる場所はこれから自分たちを受け入れるためなのかバイオテロの現場や映画で観るような真っ白なテントが張られている。


そしてその周りには消毒液と思われるものを撒いている防護服を着た職員の姿も見受けられる。


「あそこにいる人達は、過剰に反応しすぎな気もするのよね……。」


窓の外を見たマクダウェルさんがポツリと呟く。


「自分としては、貴方達が何も防御していないのが気になりますけれどもね。」


自分は何もしないうちに手遅れだったけれども、ついさっき出会ったばかりの人たちならば防御しているのは当然なのではないだろうか。


どんな危険性があるのか解らないのだから。


「別に大丈夫よ。私は生態細菌学が専門だけれども、この都市内では余程のことがなければ危険な細菌は増殖は出来ないのよ。」


それはいったいどういう事だ。細菌が増えることがないなんてそんな事はありえないだろうに。


「まあ、一般には知られていないでしょうけれども都市内には対バイオテロ用のナノマシンや、健康管理用のナノマシンが大量にばらまかれているのよ。」


そう言うと懐から携帯端末を取り出して情報を投影し始める。投影されたものは都市内で使われているナノマシンの一覧表であった。


「まったく知られていない細菌を発見した場合は対バイオテロ用のバイオマシンがそれを解析、シミュレートを行って適切な対応を行うし、季節性の流行風邪とかは健康管理用のナノマシンが適度の調節を行うようになっているわね。」


季節性のインフルなどが完全に消えてしまうとそれに対する耐性が全くなくなってしまうので、適度に流行を管理しているらしい。


なんともまあ……こういう裏話を聞いてしまうと人間ってやっぱり管理されているんだなって思ってしまうな。


そんな話をしているとすべての準備が終わったのか車の扉が開かれる。


ふと気づくとリュナは防護服で完全防御している人たちにおそれをなしているのか、キュッと腕を掴んできている。


まあ、当たり前か。


「大丈夫か。無理しなくていいんだぞ。」


そう声をかけるが、それに対してリュナは首を振って少し上目遣いでこちらを見てくる。


「大丈夫よ。それにシュウヤも来てくれるんでしょう。」


それもそうだな。


防護服を着た職員の指示に従ってテントに入って検査服に着替える。


リュナの着替えに関して一悶着あったようだがここでは特に語る必要性はないだろう。


さして時間もかからずにセンターの中に案内され最先端技術の塊によって検査が開始されることとなった。

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