金太郎飴は美味しいし、見ていても綺麗だよね。でも、ありすぎても食べ切れないよね?
プロット修正により、冒頭部から修正を入れていきます。
のんびり進めるつもりなのでよろしくお願いします。
暗い森の中。かさかさと草木が揺れる中を、黒い影が疾走する。
そのしばらく後黒い塊が轟音を立てて疾走して行く。
初めの黒い影はものすごいスピードで疾走しているが、息が上がっている。
後ろから追いかける影はそれよりもさらに速いスピードで暗い森の中を疾走していく。
追われる者と追うものである。
「まずいわね……あんなものまで持ち出して来るなんて……集え焔の精霊。我が声が聞こえれば……」
そんな声が森の中へ消えていく。声の主は追われているものである。少女の周りは、目をこらさないとならないが、ぼんやりと光っているように見える。
その影が月明かりの下へと躍り出る。
その姿は、少女である。どこかの制服なのか青と白で構成されたどこか品格のある服をまとっている。
………もっとも、その服は、森の中を疾走したせいでボロボロになりかかっているが.
背中には、カバンが背負われており、そちらもボロボロである
「…はあ……はあ……。よし。これで………」
何かをやり終えたであろうか息を整えながら今出てきたばかりの暗い森の中を睨んでいる。その手には、大事そうに何かの本を抱え、胸元には、懐中時計のような機械仕掛けのものが鈍く光を放っている。懐中時計からは、淡い光がもれ、その光が疲弊した彼女の顔を映し出す。
そして……
ガサガサガサ。
暗い静かな森の中に騒がしい音が響いて黒い塊が横滑りしながら林を飛び出す。
逆光の中浮かび上がる黒い塊の中から音もなく三人の人物が現れる。
「……小娘。その魔導書を渡せ。」
その三人の中でリーダー格のような一番背の高い男がそう言ってくる。逆光の中影になっているが黒っぽいマントの中に鎧のようなものが反射している。
腰の部分には短い短剣のようなものがあるようなシルエットである。
「いやよ。アンタらに渡したって、ろくな事には絶対にならないから。」
考える暇もなく即座に拒否をする。
そんな回答を予測していたのであろうか、一人の男がにやりとしたような気がした。
「パチン」
そんな乾いた指の音が音が響いた瞬間。緑色の光が地面から沸き上がる。これは……。
男の胸元から赤っぽい光が漏れている。
「アニキ……ヤッチまいましょう。あいつ、まだツボミみたいですし……」
あの魔法の光……最悪!
少女の顔が、月明かりの中で怒りに歪む。
全世界の少女にとって共通の最悪の魔法を放ったこの中で一番背の低い男は、片手を腰にまわしてこちらへと近づいてくる。
「来ないで!魔法を打つわよ!」
少女は威嚇のためか一歩足を踏み出して男に指を向ける。
男との間はおおよそ20リーブル。男の足なら直ぐの距離だ。
だが、その男はニヤニヤとしながらその足を止めない。
「ふん。こっちは調べがついているんだよ。一般課程の……ただの学士の嬢ちゃんよ。あの中で一番弱いんだろ。良く一般課程の生徒があれの護衛になんてなれたよな。」
三人の中でも中くらいの身長の男が馬鹿にしたように言い放つ。月明かりに男の頭に獣のような耳が付いているのが見える。
獣人だ。自分たちムーアとは異なる種族である生き物だ。
外見は自分たちと同じようであるが体の一部分は動物に酷似した特徴を持つ。
そして、身体能力もムーアの身体能力よりも上をいく。何より驚異的なものは感覚が獣並みであるということだ。
そのためこんな状況になった場合はほぼ逃げられない。っていうことをきいたことがある。
…そんなこと言っても、逃げ延びてやるわ。絶対に。
獣人を見た少女は身を固くする。情報を握られていたことに恐怖したのかそれとも相手側に獣人がいたということなのかは定かではない。
「アンタたち……なんなのよ。」
「さあね?口を滑らすとでも?まあいい……渡さないなら奪うまでだ。」
そう言って三人は動き出す。その動きはゆっくりだが、簡単な戦闘訓練しか受けていないリュナでもわかるような、獲物を絶対に追い詰めることができるような布陣である。
ただ、ここで一つだけ男たちには誤算があった。
少女をただの学士と舐めきっていたことである。
追い詰められた女は何をするか解らない。そのことを知らなかったのである。
「開放!フレイムアロー!」
そう少女は高らかに宣言する。その声は、真っ暗な森へ消えていき、ざわりと少女の周りが揺れ動く。胸元で光っていた淡い光は今では輝くほどの光となっている。
一瞬後にはいくつもの炎が彼女の周りを舞っていた。
「ファイヤー!」
その掛け声とともに彼女の周りを舞っていた炎が近づいてくる男たちに襲いかかる。
「なっ……!攻撃魔法だと!」
まさか攻撃されるとは思っていなかったのか、不意をつかれたような声が聞こえてくるがそれを聞いてのんびりしている時間はない。
そのまま再び森の中へと走りだす。
背後ではフレイムアローが燃え移ったのか木々が明々と燃えて少女の足元に濃い影を作り出す。
木の隙間を縫うようにして走って走って……
それだけ走ったのだろうか。解らない。少女は肉体強化の魔法を使っているが、少女の体力はどれだけ持つのだろうか。
キーン……
背後から甲高い音が聞こえてくる。マナストーンの暴走の音だ。
マナストーンというものは大昔からその存在は知られており人々が魔法が使うときには触媒として欠かせないものであった。しかしながら、その大きさは隣の大陸を掌握している帝国が保有する宙に浮かぶものを例外にすると、大きくても爪の大きさほどで数回魔法を使うとその力は失われるものだった。
しかし、数年前に国王肝入りの研究機関が発明したという新方式、ビリアル加圧方式によってそれまでの歴史は変わった。たった数回しか使うことが出来なかったマナストーンを一度砕き、細かいマナダスト、マナパウダーというものにしてから圧縮魔法で出来るカアツという方法で自ら光を放つ結晶体としたのだ。今では、マナストーンというと、この光る結晶体を指すこととなっている。
マナストーンは、特殊な生成過程を踏むことだけではなく、特殊魔法を使っているためにあまり数は出まわっていなく上流階級で用いられることが大抵である。
マナストーンはその内に大量の魔力を含んでいてほんのちょっとのことでは無くなったりしないため、沢山の事に用いることが出来るらしい。
ただ……使い方を誤ったときは恐ろしいこととなる。膨れ上がった魔力は互いに反応してある一点に収束をしていく。魔力が収束して、臨界点に近づくに連れて音はさらに高いものとなって行く。
そして、臨界点を超えたとき、暴走し収束した魔力は一瞬で拡散をしていく。
キーン…………………。
一瞬静寂が少女を襲う。その瞬間は森の音も、少女を追う襲撃者の音も、そして少女自身の音も聞こえなくなっていた。
ドクン。
ハルトが鼓動する。何も聞こえないのに、聞こえたような気がした。
それを機会に堰を切ったようにしてすべての音が戻ってくる。
そして……
周りは閃光に包まれる。許容量を超えた光の波は少女の目を一時的に使えないものとする。
突然の出来事に少女は足を取られて地面にたたきつけられる。
手に抱えていた本は転んだ拍子に手から滑り落ちる。パサりという音が聞こえるが少女は動けない。
「い……った。」
受身が取れずに息が詰まって肺の空気が追い出される。
少女は空気を求めて口をパクパクと動かす。その姿は大変そそられるものだろう。
だが、そんな姿を鑑賞するような時間もなく、収束した魔力によってすべてが弾き飛ばされる。
ガツ……
そんな音がして少女の頭に衝撃波によって飛んできた本が直撃する。
「うあ……。」
口が中途半端に空いたまま受身も取れずに少女は吹き飛ばされる。
魔力による身体的ダメージと衝撃波によって少女の意識は落ちていった。
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「リュナ=ルオフィス。6限目終了後すぐに学園長室まで来なさい。学院長がお呼びです。」
2限目終了後の先生からのそんな一言がすべての始まりだった。
「リュナ~どうしたの?学院長に呼ばれるなんて。なにかやったの?」
先生が出ていった後。早速リュナの隣の席の少女がまとわりつきながら声をかけてくる。
まとわりついているロングの娘の名前はミューラ=レニス。リュナのルームメイトであり親友である。身長は160デルミル。1.6ディーラー。女の私から見ても……はあ……
余談であるが、一般課程に於いての彼女にしたい人ランキングベスト100に入っているらしい。同時にふった数ベスト50に入っているらしい。まあ、あくまで噂なんだけれども……
「そんなの知らないわよ。学院長に呼ばれるなんて心当たりもないし……でいいから離して……。」
そう言ってリュナはミューラを引き離そうとする。周りの生徒はその光景を慣れたようにしてみている。
「華と花が絡むのも……悪くない……」
何処か、教室の端の方から、ポツリとそんな声が聞こえてくる。
リュナの鍛えられた耳は、そんなつぶやきまでも聞き漏らさない。
今そんなこと言った奴後で殴る。覚えていなさい。
……そんなどうでもいいことを決めた彼女であった。
余談であるが、リュナが残念な少女ランキングベスト100に入っているのはこういったことの性なのかもしれない。
此処コンプート王立魔法学院は4大陸の一つにあるコンプート王国の王都にその建物を置いている。この学校には一般課程、研究過程、王宮課程の3課程があり多くの生徒が通っている。
リュナとミューラが在籍しているクラスは一般課程のクラスである。
彼女たちの成績は可もなく不可もなく。学校全体から見れば普通というレベルである。
「もしかして、あれじゃないの?特殊魔法なんて言うものをやっているからじゃない?」
そうニヤニヤとしながら話を続けてくる。スキンシップも激しくなってきている気がしなくも無い。ちょっと不味い?
魔法には大きく分けて4つの分類がある。
攻撃魔法
回復魔法
補助魔法
特殊魔法
以上の4分類である。
王都に住む人々が一般に攻撃魔法といって人々が思い浮かべるのが王宮課程の生徒である。
王宮課程の生徒は、国家の礎となるべくの勉強を行っているいわゆるエリートというやつである。王宮の仕事と言っても様々であり、軍に属するものや王宮で働くことなどなどがある。
一般課程の生徒は、ごく一部の攻撃魔法以外は学ぶことが出来ないということは、ここでは常識とされている。
……地方の方に行くと、魔法学院の生徒はドラゴンにも匹敵する力を持っているとかいうことを本当に信じている人もいるらしんだけれども……
回復魔法と補助魔法は、別段特殊なものではなく、学校に通っている生徒ならば優劣はあれども使えないことはない。その為、一般課程を出た生徒は民衆に溶け込み、その力を大いに振るっている。
……事実魔法学院の生徒は卒業した後はボロ儲けなのよね。
王都周辺でも騎士団の怠慢の性なのか盗賊や、野党は日常的。魔物は王都周辺には出てこないけれども、時々はぐれが街道に現れて人に襲いかかることだってある。
王都周辺でも生傷が絶えないのだ。王都から少し離れれば傷を負う危険率はぐんと跳ね上がる。
地方に行けば、盗賊のほかにも魔物も多く出てくることになる。最も地方では、盗賊に会うも魔物に会うほうが日常的なのだが……。
そんなところへ魔法が使える人材が行けば引く手あまた。それでひと財産作ったという噂も聞かないことはない。
そして、厄介なものが特殊魔法に分類されているものである。一言で特殊魔法と言ってもその幅は大きい。簡単なものを挙げると召喚術や、錬金術などである。
もっと複雑なものとなると攻撃性の無い儀式魔法やらよく分からないオーパーツとか言うやつの分類とか、太古に失われたロストマジックについてやら様々ある。
簡単に言うと上記3つの魔法に分類出来ないよく解らないものをまとめているのである。
そして、あまり人気が無い。人気がないから研究も進まない。研究が進まないから、人気も出ない。そういった負のスパイラル状態である。
……卒業後はどうなることやら。お先真っ暗?
「そんなこと言わないでよ。特殊魔法って言ったって私が研究しているのは召喚術よ……。まあ、他にもかじってはいるけれども研究データ出しているのはそれしかないし……。でも、他にもやっている人はいるわよ。別に私じゃなくても……」
そう……別に私じゃなくてもいいはずなのである。
この学校は、門戸をどんな階級の生徒にも広げている。入学する条件はひとつだけ。魔法を学ぶ意志があるかどうか。それだけである。
人間には、魔力が存在している。その為、学ぶと言う意志さえあれば、一般課程にはいることは可能である。
……もっとも卒業まで行けるかどうかは不明だが。
そして、王宮課程や研究課程は、多くの魔力を持っている生徒しかはいることが出来ない。(……という建前なんだけれども、実際はお金なのよね。)
その魔力の大きさは血に関係することが多いので必然的にそれを意図して政略結婚を続けている上流階級の家系の生徒が多くなる。
上流階級の生徒の中にも、貴族の三男坊やら暇人はいるもので特殊魔法を研究している研究課程の生徒もいる。普通ならそういう人達が呼ばれるはずなのに……。
「まあまあ。仕方ないじゃない。それに学院長に呼ばれるなんて名誉あることじゃない。なんだってあの人は、前代の国王様も一目おかれていた方なのよ。それにあんなにハンサムだし……」
ああ……駄目だ……ミューラの目の色が変わっちゃっている。
「私も、特殊魔法とっておけばよかったかな~。そうしたら、呼ばれていたかもしれないし……」
ちなみに彼女の専門は、回復である。将来は、医療関係だろう。
「特殊魔法なんてとっても全然役に立たないわよ。研究課程じゃないんだから別に将来に役立つわけでもないし……私は、ただ興味があっただけだし……」
そういうが、ミューラの羨ましいような視線は消えない。そして、スキンシップも収まることが無い。
「別に代われるんだったら代わってあげたいわよ。でも無理でしょ。呼ばれているの私なんだから。」
「ねえ。リュナ~特殊魔法でなんかない~?変身魔法とか精神交換的なものとか。」
どうやってでも、彼女は学園長に会いたいらしい。本当に無理なことを言ってくるわね。
「無理よ。変身魔法は……無くはないけれども、学院長の前なんだから簡単にバレるだろうし精神交換なんて出来るのはオーパーツぐらいでしょ。……もしかしたら、ロストマジックもあるかもしれないけれども……そんなものがあったら問題になっているでしょうし……。」
少なくとも、知っている限りだとそんなイカレたような物はない。
それよりも、自分の価値分かっているのかしら。そんな学院長に合うためだけに精神交換とか言い出すなんて……。
「む~。……まあいいわよ。終わったら、話し聞かせてよね。こんな機会そうそうないわけなんだし。」
そう言ってやっと離してくれた。なんというかいつもこうなのよね。私にはそんな気はないのにいつの間にか噂されているし……
から~ん・から~ん
遠くから鐘の音がする。もう次の授業の時間である。
さっさと次の授業の準備を……と。その前に……
リュナは少しシワのついたブラウスを直して席を立つと、ふらりと歩き出す。
数分後に先生がやって来たとき、扉の前で呻いている生徒を見つけてすこしばかりの騒ぎになったのは余談のまた余談である。
……何が起こったのかは知らない方がよいであろう。
そこからの時間の流れは時間の水門を誰かが壊したんじゃないかっていうぐらい早かった。
いつもの先生の話。いつもだったら、ものすごく長く感じるはずなのに……
私の、面倒なしの時間は一体どこにいったの?
気づいたら、もう6限目が終わる頃であった。目の前を見てみるときちんとノートは取られている。
……なんで厄介ごとの時だけこんな風に感じるのかしら?
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様々な光が流れては消えるそんな世界。
そんな不思議な空間に一人の男が浮かんでいる。
男の周りには様々な数やグラフが浮かんでいる。あたかも玉座の周りに宝石が散らばっているようである。
何も知らない人ならば神の栄光が………とか言うかもしれない。
「む……書けない……参ったな……この構成だと実行したときにエラーが発生するな。でもここをこうしないと……でも、そうなると……この関数が……重力関数と空間間の関数が……」
しかし、その男には神の栄光の威厳はない。あるのは中間管理職的な哀愁ただよう背中である。
「仕方ない……気分転換に……書いてみるかな?」
そう言って男は、キーボードのキーをたたき始めた。目の前のことを放り出して別のものを始める。いわゆる現実逃避である。
プロット1
そんな文字が空間に現れた。
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リュナは扉の前に立っていた。扉から感じるのは、なんだか面倒事があるというような感じである。
まあ、学院長に呼ばれるという面倒がすでにあるのだが……。
それでも、行かなくてはならないのである。
彼女は意を決して扉をノックした。
コンコン
静まり返った廊下にノックの音が反響する。
「……入りなさい。」
こもった声が部屋の中から聞こえてくる。
「失礼します。一般課程特殊魔法学科在籍リュナ=ルオフィスです。お呼びでしょうか学院長。」
部屋に入った瞬間いくつもの視線を感じる。そのいくつかの目は、よく一般課程の生徒が受けるものであった。
許されるなら回れ右をして帰りたいが、そんなことは許されない。
「リュナ=ルオフィス君か。かけてくれたまえ。」
学院長はそう言って席を進めるが、他の人は席にかけていない。
このまま無視してかけたら問題よね。
「いいえ学院長。他の方を差し置いて私がかけるわけには行きません。ですからこのままで。」
じっと学院長が見つめていたが自分に座る意志が無いということが分かったのか、視線をそらす。
「よく集まってくれましたね。お礼を言わせてください。」
学院長が重々しく告げた。
「さて、君たちを呼んだことには、訳があります。実を言うと君たちに、頼みがあるのです。」
その言葉が言われた瞬間周りの生徒は息を飲む。
私の心境は……
面倒なことをするなこの年齢不詳の学院長め。
リュナの心のなかには敬意もクソもなかった。
なんで私が呼ばれなくちゃいけないの?依頼なんてやるのは、王宮課程の生徒だけでいいじゃない。全然呼ばれる理由がない……まさか………
一瞬頭を過ぎったことを振り払う。
「さて依頼の方ですが、2日後に学術都市タクキンから、貴重な魔導書が到着することとなっています。ですが……」
そこで言葉を切る。
「本来ならば護衛につくはずの兵士たちが王都区域にはいることができなくなったんですよ。」
周りから再び息を飲む声が聞こえてくる。大げさなんじゃない?今の情勢を考えればわかるとおもうんだけれども……今の国王様になってからなんだか動きがきな臭いような気がするし……
「何故王都区域には入れなくなったのですか?」
そんな質問が何人かから出てくる。あれ?あなた達王宮課程よね?
「君たちも知っての通り今の国王陛下……ヒルガーリ=O=アキ=オターク一世の治世となってから多少の変化が出てきています……こればかりは仕方のないことですね……」
要するに、王様の命令で護衛の兵士がはいれなくなったと言うわけね。でも、それだったら……まさかね?
頭に思い浮かんだのは、国王様が他の地域の兵士を入れなくしたのはいいけれども、自分のところの騎士団を護衛に回す気はない。仕方ないから魔導書を必要としている学院がこんな形で護衛させると言うこと?
……頭の回転が速いって言うのも考えものね。だって……変な考えばっかりが出てきちゃうんだから。
「護衛の兵士がはいれなくなったのは仕方の無いことです。あのオ……もとい国王陛下にも何かの考えがあるのでしょう。その為、魔導書の護衛としてリティの関所までゆき、護衛をして魔導書を回収してきてもらいたいんですよ。」
学院長は苦虫を潰したような顔をしている……ように見える。
「その以来謹んでお受けいたしましょう。……ですが……我々王宮課程の生徒だけでこの依頼は十分に果たすことができるでしょう。何故、一般課程の生徒をこの場にお呼びしているのでしょうか。」
その場にいるだけで上流階級であると言うことがよくわかる女性の声が響く。その女性の髪の毛は物理的に役に立つの?というようなグルグル巻きの巻き髪である。
よく見てみると、ほかの女学生たちも似たような髪形をしている。……王宮課程の流行かなんかなのだろうか。
「ふむ……実を言うと、彼女には、特殊魔法科生徒として此処にいてもらっているんですよ。魔導書の管理に関しては彼女が一番良く分かっているはずですからね。」
そう言って、学院長の鋭い目がこっちを向く。その目はすべてを見透かすような目である。
……まさか、あのことがバレている?
リュナの背筋をなにか冷たいものが流れて行く。
「それに、実を言うと王宮課程の生徒には特殊魔法学科在籍の生徒が居なかったんですよ。研究課程の生徒にも問い合わせてみたのですが、彼らはアカデミーへの出向中みたいで。それでです。」
「……わかりました。」
不承不承という感じの声である。
そうなると……私が呼ばれたのは……偶然よね?
「それでは、明日の朝7時にもう一度此処に集まってもらえますか?出発前に渡すものがありますから。」
「わかりました。失礼します。」
王宮課程の誰なのかは知らないがその挨拶とともにゾロゾロと部屋の外へと動き出す。
それに続いて私も部屋を出ていこうと学院長に背を向けた。
「……ミス ルオフィス。少しいいですか?」
そんな拒否もできないような声が後ろから聞こえてきた。
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不思議な空間に男は浮かび続けている。
めまぐるしい速度で男の回りの情報は動いていくが男は動いていなかった。
「……続かない…アイディアが……出てこない……」
先ほどから、プログラムを書いては消し、書いては消しの繰り返しである。
「このプログラムの書き方だと、物質の固定化自体が………」
ピリピリピリ
そんな音がどこからか聞こえてくる。ダイブ可能な時間を超え掛かっていると言う警告音だ。
もうこんな時間か……ベッドに入らなくてはな。
強制的に世界からはじき出される中で男の頭の中には、ぐるぐると数式が渦を巻いていた。
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バジリスクに睨まれるってこんな感じなのかしら?
学院長に声をかけられた後椅子に座らされた私は、目の前で優雅にお茶を飲んでいる学院長の前で動くことが出来ない。
「そうそう……あなたの召喚術に関するレポートを見させてもらいましたよ。よく出来ていますね。」
そう言って、お茶を勧めてくる。
そのお茶を一口飲んで、気持ちを落ち着ける。この香りはエアルグレイ……
腹芸なんてできないけれども……何とかしないとね。
「お褒めに預かり光栄です。まさか学院長にあのレポートも見ていただけるとは。」
「ええ。よく出来ていますね。まさか、あのレベルのものが書かれるとは思いもしませんでした。」
「……私一人では十分なものはかけなかったでしょう。それと問題点は召喚術の成功率ですね。」
「まあ仕方ないでしょう。……その割には十分なものだったと思いますが。」
「いえ、そんな……」
「………」
「………」
沈黙が部屋を支配する。まるで部屋が私を押しつぶそうとしている感じだ。
「ふう。生徒相手に腹芸をしたくは有りませんね。単刀直入にききます。書庫に入りましたね。」
…!マズイマズイ……顔に出ていなければいいんだけれども……
精一杯の笑顔を作って学院長に話しかける。
「何のことでしょうか?あそこは、一般課程の生徒は入れなかったと思いますが。」
自分は一般課程の生徒であるから、書庫にははいることはできない。という盾を掲げてみる。
そもそも、書庫には封印がかけられていてその封印を開く鍵は一般課程の生徒には配られていない。
「君が、召喚術以外について調べていることはわかっています。何を調べているかは知りませんが……書庫に入ったと言う確固たる証拠はあります。」
そう言って目の前のテーブルに置かれたのは国王様がオーパーツを解析して作られたオーバルポルターというものであった。そしてそれと一緒に……
な……
自分の後姿のポルトであった。バッチリと、自分が書庫にはいるところが写されている。
最近作られたこの技術は国王様直々のものであるので未だ上流階級の一部にしか普及はしていない。しかし此処は王立学院。そのことを考えていなかった自分があほらしい。
「ドーラ=ディゾド……研究課程の学生。確か彼女の専門は召喚術ですね。彼女のレポートも拝見させていただきましたが、アナタのものとは少々違うものでしたね。あなたの方が、より理解が深かった。……何を調べていたのですか?」
こんな証拠が残っている以上もうこれで、自分がこの学校に残れる可能性はゼロだ……だったら……
「………空間跳躍技術。」
「……」
「私が探していたのは空間跳躍についての魔法です。」
「……空間跳躍ですか……これはまた……」
目の前の人は、呆れているようである。
「召喚術と言うものは研究している私ですら理解が困難なものです。しかしその先には空間跳躍技術というものがあるようにしか思えないのです。空間跳躍技術があって、初めて召喚術というものが完成すると思うのです。それで、失われた魔法ロストマジックならば……と考えていました。」
「………………」
部屋を沈黙が走る。
「……出すぎた真似をして申し訳ございませんでした。この罰はどんなことをしてでも償わせていただきます。」
「…………君は……魔法の発展に於いて何が必要と考えますか。」
いきなりどうしたのだろうか。学院長の方を見てみると学園長は真剣な目でこちらをみている。
「理論の構成の解析でしょうか。」
考えてみたことを言ってみる。
「たしかにそれもありますね。しかし……それよりも大切な事は諦めない探究心ですよ。」
「学院長は……」
「君の犯したことは重大な違反です。それは、変えようのない事実です。」
……重大な校則違反は放校処分。入学時の誓約書に欠かされたものだ。
「ただ……書庫への立ち入りが禁じられているのは一般課程の生徒だけなんですよね。」
何をそんなアタリマエのことを……
「例えば……本当に例えばですけれども一般課程の生徒が王宮課程の生徒とともに任務を完遂することが出来、なおかつ上級クラス者に引けを取らない実力があるとすれば……」
もしかして……でもわざわざ言っているんだから……
このままだったら放校処分。でも少しでも可能性が残っているんだったら……
「学院長先生。」
「何かな?ミス ルオフィス?」
「今回の任務。誠心誠意やらせていただきます。」
「…そうですか。それから、明日からの護衛は、学院の講師を一名つけることにします。あと、これをもっていきなさい。」
そう言って私に渡されたものは赤い石がついたブローチであった。小さな石のはずなのに、大きな力を感じる……
「肌身離さず持つようにしてください。」
「……わかりました。失礼します。」
そう言って私は、恐怖の学院長室をあととすることとなった。
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ガラスの扉で仕切られた部屋。その中で何人もの人間がせわしなく働いている。
部屋の中には幾つもの大きなコンピュータがあり、モニターには流れるように現在の社内の情報が表示されている。
何処にも異常がないことを示すかのようにモニターは刻一刻とその表示する内容を変えていく。
「暇ですね~。」
昼食が終わった後の気が抜ける時間。ゆったりとしていて、なんだか昼寝でもとりたいような時間だ。
「気を抜くなよ。そろそろお客さんがやってくる頃だからな……。」
目の前の新人があくびをするのをモニターの前に座っている部下がたしなめる。
……そのモニターに出ている麻雀卓は何なんだ?
ツッコミたいが……まあいいか。仕事はやるときはやるからな……。
「ロン……よし上がり。これで一食浮いたっと……。そういえば主任。オレンジって知ってますか?」
賭けでもしていたのかモニターに幾つものグラフが出てきている。
オイオイ……金銭のかけは……まあいいか。大金が動いているわけでもないだろうし。
「ん?オレンジってあの有名なクラッカーのか?確か最後にオレンジが出ていたのって10年ぐらい前だったよな?……。あの頃から結構パソコンに触っていたし、ニュースにもなっていたからな……。でも死んだんじゃなかったのか?」
連邦の公式報告では15年前の丁度今頃。5月末に連邦の当時のスパコンへ侵入。激闘の末に過剰電子の逆流でオレンジの命を奪ったとか何とか。
電子の海である仮想空間を危険度の高いアバター体で縦横無尽に駆け巡るオレンジ。難関とも言われる中央司法局の電子サーバーの裁判記録をネット上に公開したり、連邦政府の中央サーバーのライブラリーにクラッキングをかけたり……。
当時はかなり騒がれた出来事だった。
「それがですね……噂だと、死んでいなかったらしいんですよ……。」
そして足元のカバンから取り出すのは月刊アルカルフィア。社会の大きな動きの記事や、裏の記事、はたまた本当にあるのかとも思えるようなとんでも理論まで何でも乗せるそんな雑誌だ。
9割はガセネタ、残りの1割が真実だとか何とか。実際ネタにしかならないようなものだ。
みせられた雑誌の表紙には何処でとったのか解らない得体のしれない毛むくじゃらの生き物が写っている。
『改造人間あらわる! 特派員が送る連邦非加盟諸国の真実。』とか、『気象研究者が語る大変動の真実!-大変動は人為的に起こされた!気象兵器の大実験!』
表紙には小さく謳い文句がつけられている。
パラパラとめくってみるだけでも胡散臭い記事が並んでいる。
「……で?これがどう関係してくるんだ?」
雑誌を部下に渡すと、パラパラとめくり始める。
「え~と……ああ。此処です。ほら。」
そう言って渡されたページを見てみると『スクープ あのハッカー:オレンジが生きていた! -編集部記者の連邦非加盟諸国潜入記-』とか何とかいう胡散臭い見出しが出ている。
一緒に写っている写真はどう見ても合成写真にしか見えないような記者らしき姿と、鬱蒼とした森である。
記事を読んでみる……
『我々は数々の困難を乗り越えついに15年前仮想空間を自在に泳ぎ続け、突如姿を消したオレンジとの接触に成功した。
様々な事情があるためにここでは全てを記すことは出来ないが、15年前連邦政府によって過剰電子の奔流により死亡したとされていたがそれは全くのでたらめであるということが本記者の取材によって分かった。
これは連邦が仕掛けた大きな陰謀の一つである。我々はそれに対してペンを武器にして戦い続けるだろう……。我々は真実を求め続けるために記し続ける。この特集は3948号までの計6回でお伝えする。』
……よくある謳い文句のアレだな。
「いや……これだけだったら、全然噂になりませんよ。これは9割がああいうのだって判っているんですから……。」
そう言ってカタカタとコンソールをいじり始める。先程まであった麻雀卓は消え去り、幾つかのグラフが現れる。
シュナイダー・コンツェルン、フォトニックカンパニー、M&W……様々の会社の名前がリスト化されている。そしてその隣には様々な数値が記されている。
「これは一体……?」
疑問を口にすると部下による説明が始まる。周りで暇をしていたのも、やっていることを止めてそちらへと目線をやる。
「それでは、このリストに上がっている社は全て同一の手口によるクラッキングを受けた企業ばかりです。」
そう言うとカタカタとコンソールをいじって新たな画面を呼び出す。
「通常行われるようなコンソールを通じたクラッキング行為ではなく、バイザーによって延髄部との接続による仮想空間へダイブした状態でクラッキング、通称ダイビングアタックです。」
モニターに表示されているのは、仮想世界へ侵入するものならば誰でも知っているようなことから、専門的な知識を持たないと解らないものまで様々ある。
「このダイビングアタックは使用者の命を危険に晒すものですが、知っての通りコンソールやデバイスに頼るよりも速いスピードで物事を行うことが出来ます。そして、この手段を確立したのが……」
そう言ってタンとコンソールを叩く。
「今から15年前に彗星のごとく現れたダイバー。通称オレンジです。」
画面に表示されているのは、当時の新聞や、電子データである。年齢、性別、出身地、生年月日全てにおいて不明である。
「オレンジにはどんな防壁も大差がなかったようで軽々と解除されていきました。原因は単純に処理速度でしたね。もちろんですが、オレンジのほうが高かったということです。」
「だが、今ではダイビングアタックは普通じゃないか。その辺のぽっと出のクラッカーだってダイビングアタックを使ってくる。なんで死人のはずのオレンジが出てくるんだ?」
何やら対策会議のような感じになっているが元々オレンジからの話でこうなったはずだ。
「ええ。これらの企業は比較的近い時期にクラッキング攻撃を受けました。もちろん技術が確立している今ではこんなことは日常茶飯事です。ですが……。」
さらにコンソールを叩いて新たな窓を開く。
「これらのクラッキングで使われたデータ痕跡と、オレンジが失踪する直前に残った痕跡が合致していました。」
幾つものグラフがひとつに合わさっていく。そして幾つもの線が混ざったところに赤い線が現れる。
「仮想空間に侵入するのに延髄部との接続を行っている以上少なからず人体の脳波の影響が仮想空間にも現れます。それを照合してみた結果……まあまあの確率で一致しています……。」
サーバーの熱を逃がすための空調がやけに肌寒く感じる。
「……もちろん、死んだ人間が出てくるなんて無いし、他人と絶対にデータ痕跡が一致しないなんて言うことはないけれども、疑わしい時にあの雑誌の記事です。妄想力を掻き立てるには最適ですね。」
ふう。と周りからため息が聞こえてくる。みんなに似たような心境だったらしい。
「だから、噂なんですよ。本当なのか、それともデマなのか解らない……。9割がガセでも1割は本当のことを書いているんですからね……。」
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すべての人が退出した学院長室。
深々と椅子に座っているのは、学院長その人である。
先代の国王の時代から生きている以上本来ならジジイのはずであるのにまるで青年のような容貌である。
学院長の椅子の近くの空間が歪んで銀髪の女性が現れる。
「……いいのですか学院長?」
「何がだい?」
「唯の生徒に書の護衛をさせるなんて……」
「……必然と言うものでしょうね。」
「しかしもしものことがあれば……」
「彼女にはいい経験になると思いますよ。あくなき探究心。その心があればいいと思っています。もしも、彼女が書と契約を行ったとしても……問題はないでしょう。」
「学院長……いいえ司書長。あなたの気まぐれで生徒の命と貴重な書が失われるのですよ。」
彼女はわざわざ秘匿されるべき肩書きを口にする。
「あなたもこの世界に長くいて、愛着がわきましたか?」
「……人として言っているだけです。」
「人……ね。まあいいでしょう。なんといったかな……そうそう。カワイイ子には旅をさせろ。って言う言葉があったね。それだよ。」
「ですが……」
「適当な形にしておいた召喚術をこの世界の人の殆どは、そのままで放置をしている。それが不完全なものと気づいたのは、彼女だけじゃないかな?」
「……気に入られたと。」
「そういうことだよリリシア。」
「……」
再び空間が歪んで彼女の姿が掻き消える。そして沈黙が部屋を支配することとなる。
若々しい姿の学院長は、その時だけは、老人のようなつかれた顔をして椅子に深々と腰を落とす。
全ては、ある計画のために。
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いつもどおりの午後の一時。眠くなるような時間帯だが、空調がきいているせいなのか一向に眠気は来ない。
毎日のようにやってくるお客さんを待ち受けているモニターは午前中は引っ切り無しに反応していたが今はお休み状態だ。
だが、その休み時間も午後の始業と同時に戦いの場となる。
カチ……コチ……。
サーバーのファンの音の中にアナログ式の時計が音を立てて時を刻む。
10・9・8・7……
周りの機械が待機状態に入るためにうなり声を出している。
6・5・4……
3・2・1……0
その瞬間にすべてのモニターに命が灯る。
そして、午後の始業と共に封鎖されていたネットワークが開放される。
モニターの一つにEmergencyの文字が現れる。それは一瞬のうちに広がってすべてが真っ赤に埋め尽くされる。
「主任。サーチャーに異常あり。不正アクセスです。場所は……第2層第3エリア……機密ファイルが目的みたいです。」
仮想世界侵入用のバイザーを外した職員が報告を行う。
いつもの風景である。
社の機密情報を狙うことなんて珍しくもなんとも無い。それに此処は学術研究技術都市の協力機関の一つだ。何かめぼしいものがあるのではないかと毎日のように不正アクセスが発生している。
「そこは囮だ。適当な数の迎撃を出してバックドアだけ確認しておけ。」
適当な指示だけを出して、手元のモニターで構築中のシステムのデバッグを行う。既に職員も慣れたようでいつものとおりに対策を行っていた……。
のんびりとした午後の一時が過ぎていく……。
「主任!囮を素通りして、第3層へと入ってきました。」
そんな焦ったような声が一時の空気をぶち壊しにする。一瞬で部屋に緊張が走る。
急々とバイザーを取り付け仮想世界へとダイブをする職員や、それを支援する職員の手がキーボードをカタカタと動かす。
すべての職員が侵入者を追っているにもかかわらず侵入検知システムは止まること無く警告を発し続ける。
「……社内に手引きしているのがいるな。……監査部へ連絡しておけ。こっちの仕事はネズミの穴ふさぎと巣の場所を調べること。中のネズミは監査部の連中が駆除してくれるさ。」
「主任。営業部門から回線の調子が悪いとの苦情です。」
回線内でクラッカーとの戦いは熾烈を極めているようである。その影響がほかのところにも出ているのであろう。
「システムの総点検中と言っておけ。事前通告がなかったのは謝罪する。」
「わかりました。」
しばらくの間。システム管理部門はキーボードをたたく音で支配される。その音を破る一本の電話が入ってくる。
「監査部からです。……取り逃がしたと。」
呆れたように部下の一人から知らせが入る。
「尻ぬぐいをしろってか。全く。」
そういって俺は目の前のバイザーを付け目の前のコンソールを叩く。
コマンドが入力された瞬間に延髄部とバイザーの中で電子信号がやりとりが開始される。
身体への電気信号が電子空間へと転送されて行く。そして、クラッカーとの計算合戦が始まる。
体の感覚が戻ったとき、周りの空間は、全く別の世界であった。二進法の数字が周りに飛び交い様々な色が散らばっている。
ブン。
右手を振ると軽い音がして幾つものモニターが現れる。モニターは外部と接続されており、刻々と情報が更新されて行く。
その後直ぐに、モニターに侵入者の接近の警告が現れる。
警告された方向へ眼を向けると立て続けに幾つもの攻撃が飛んで来る。視覚化データされたものは黒い塊である。
すぐに、口から直接コマンドを発音して防壁を組み立てる。
黒い塊がぶつかる直前に張られた防壁によってデータ化された攻撃は散っていく。その時にデータ化された音が電子の集合体であるアバターに直接襲いかかってくる。
「く……」
脳内にバイザーを通じて叩き込まれた信号は、身体の自由をほんの一瞬だけ奪う。それを感知した、補助システムが反射的に迎撃システムを起動し、侵入者に対して攻撃を行う。
だが、相手はそれを軽々とかわして、逃げながら攻撃を放ってくる。
相手クラッカーが放ってきているものはえげつないものが多い。一度受けたものは、防衛システムが崩御を行うが、引き出しが多すぎてまともに受けていたら、いくら時間があっても足らない。
「第二層から第一層に入りました。……AMIを起動します。」
こちらも、外からの支援がある状態で捉えようとするが、なかなか距離は縮まらない。
AMIが発動して幾つもの光の鎖が侵入者に向かって飛んで行く。その網のようになった光に鎖に捕まれば数秒の間はどんなに高レベルのクラッカーでも動けないはずだ。だが、それを相手は一瞬でバラバラにする。
相手は、その辺のクラッカーじゃないな。結構な力の持ち主だな。それにしても……この形式どっかで見たことが……
目に入ってくる数字の中に何回も似たような数列が確認できる。
そんな物に気を取られているとデータで構成された攻撃がいくつも飛んでくる。
今まで放たれていたものとは違う見たことがない形式の攻撃のためにすぐさま回避を行うがそのせいで距離を離されてしまう。
そして……
ログアウトして、ヘルメットを脱ぐ。
「……逃げられたか。網は?」
「すべて回避されました。バックドアも発見できませんでした。」
深々といすに座り込んでいすの感触を確かめる。これが見納めになるかもしれないからな。
「……ちょっと行ってくる。」
そういっておれは立ち上がる。憐れんだ視線を感じる気がする。
とにかく行く先は、上司の下だ。
下手したら首かな?気持ちが沈んで沈んで仕方ない。
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「本当にいいのか?」
暗闇の中男が何者かと話している。
「ええ。構いません。むしろヤッちゃって下さい。」
パチパチと近くで薪が弾ける音がする。暗闇が揺らいで一瞬だけ光が闇を侵略する。だが、闇も一瞬のうちに勢力を盛り返す。
「了解。クライアント様の指示には従うよ。奴らを全部殺して魔導書だけ奪えばいいんだな?」
「そうです。護衛についているのは王宮課程の生徒8名と一般課程の生徒1名、それに学院の教師です。手段はお任せしますよ。」
「そして、足をくれると……やっぱり貴族様は違いますな。」
舌なめずりするような音が聞こえてくる。
「ええ。一般課程の生徒は戦闘能力はありませんからね。後回しで問題ないでしょう。学院の教師も、保身を優先するでしょうし……。」
「となると、無駄に勇敢な王宮課程のお坊ちゃんたちを最初にしなくちゃならんのか……メンド臭いったらありゃしない。」
男が何かをゴソゴソと漁り、懐から太くて短い何かを取り出す。そしてそれを口に加える。
もう一人の男が指を鳴らすと一瞬だけ光が走り口に咥えたものから煙が昇る。
「それでは任せましたよ…………。踊ってくださいよ。きちんとね。」
何かをいったような気がしてそちらへと目を向けたがそこには既に闇しか残っていなかった。
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……めでたく首か……
あの後上司から言われたことは、社外秘の情報の流出を食い止めることが出来なかった責任での懲戒免職であった。
その後労働組合やら何やらといったのが出てきたけれども結局変化なし。
今回の責任を負う形での首が決まってしまった。
「これからどうしようかな……」
まあ、フリーのプログラマーにでもなるか、それとも、IT関係の会社でも立ち上げるか……
幸い独り身で若造でも主任という立場だったから、貯金はある。しばらくは考え事が出来るだろう。
まあ、作りかけのプログラムでも完成させてからにするか?それとも、ネトゲでもやるか?
……プログラムを完成させるか。
机の前に座ってバイザーはかけずにモニターとにらめっこをする。
ここをこうやって……
コンパイル。
でもまあ、物体転送のプログラムなんて出来るわけがないか。物体を一とゼロに組み替えてなんていうのは、プログラムだけじゃできないし……それこそSFレベルの出入力装置が必要だわな。
ピ…ピ…ピ
あれ?……エラーか。F2-34-8475の構成がミスっていたか。
ここを直して……。
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体が……痛い。
痛みが体の節々から脳に届く。
ゴホ……ゴホ……
口の中がザラザラする。ゆっくりと意識が覚醒に向かっていく。
それと共に痛みも増してゆく。
口の中の物を吐き出してゆっくりと目を開ける。
ぼんやりとしていた焦点もゆっくりと合わさっていく。
目に映るのは根っこから横倒しになった木や、途中から吹き飛んだ木。そして森の動物達も横たわっている。
一体何が……。
腕に力を込めて起き上がる。身体中に痛みが走るが、動けないほどのものではない。
そして周りをもう一度見回してみる。
森が死んでいるのがよく見える。周りには生けるものの姿はなかった。
なんで自分は……。
そこまで思ってリュナは自分の姿を確認する。
吹き飛ばされたせいなのか服がドロボロになっていたり、切り傷があったりするが致命的な傷はない。
目の端に何かが風に煽られてひらひらとしている。
魔導書だ。
未だ魔導書の体裁は整えているが爆発の衝撃でページが幾つかちぎれてしまっているらしい。
ここまで来て、不自然なことに少女は気づく。
自分の周りだけ不自然にポッカリと空いているのだ。周りには爆発の影響で倒れた木や、鋭い枝が突き刺さっているにもかかわらず、少女の周りだけは何も無い。
「逃げ……ないと……。」
傷付いた身体を奮い立たせ魔導書を拾って暗い森の中をよろよろと進む。
そして……
倒れた木の影になっていて目に見えなかった木の根っ子に足をとられて派手に転ぶ。
息が……
倒れ込んだ衝撃で、うまく息を吸い込むことが出来ない。身体中の痛みが一層強くなる。
恐怖で歯がガチガチとなっているのが、周りに響いている。
その音が聞こえないように必死で歯を食いしばろうとするが、震えは止まらない。むしろ激しくなる一方だ。
ガサガサという音が近づいてきている。
木の根をかき分けてくる音ははっきりと聞こえてくる。
その音が止まったと思うと今度は青い光が周りに湧き上がる。
「……見つけた!」
そんな声が聞こえると同時に目の前から剣を振りかぶった背の一番低い男が出てくる。
爆発の影響なのか解らないがボロボロのマントを着込んでおり手には鉄の塊としか思えない剣を持っている。
剣と身長がアンバランスである。大きさは男が1.5ディーラーに対して、1.4ディーラーくらいある。
引いて斬りつけるというタイプよりも、叩きつけて切るというタイプの剣だ。
その剣が振り下ろされる。
……もうこれで終わりなの?
いきなり襲われて、こんな森の中で死んで行くの?
走馬灯のようにゆっくりと世界が動いていくように感じる。
……いや。死にたくない。まだ私にはやることがあるの!
そんな思いからなのか、手に抱え込んでいるもので剣を受け止める。
魔導書だ。
ギチギチギチ……
既に壊れかかった貴重な魔導書の装飾部分と剣がぶつかり合って、嫌な音をたてる。魔導書の半分くらいまで剣がめり込んでいる。
だが、剣は魔導書でしっかりと受け止められている。
剣の力に耐えきれずにリュナはそれを受け流すようにして取り落としてしまう。
男はまさかそんな行動に出るとは思っていなかったらしく驚き戸惑っているが、すぐに再び剣を大きく振りかぶる。
大上段の構えでは、もう魔導書を盾にしても叩き切られるだろう。
「天地無常を司る精霊よ我が声を聞き給え……サモン・ランダラーム」
成功して欲しい。そんな思いで自分の得意なものを使う。
現在の成功率は10回やって1回成功するかしないか。他の人と比べれば成功率は4倍に跳ね上がっているがそれでも、成功するかわからないものだ。
それに、今回は途中詠唱を破棄した不完全な形のものだ、成功するかなんて本当に解らない。
それでも、少女は喉が張り裂けんばかりの声で詠唱を行う。そして、自分の最後を見たくないとばかりに目をぎゅっと閉じる。
そして……
ゴン……ガランガランガラン……どさり。
そんな音がした。
あれ…………痛くない。
そうやって恐恐と目を開いてみると目の前には男が倒れていた。
な……なんで……
見た感じこの人は、傭兵だろう。そんな人がなんで倒れているの?
驚きが恐怖を上回ったらしく怖いもの見たさで男に近づく。
「ひ……」
息を飲んだ。
男は白目で倒れていたのである。月明かりに浮かぶ白目を向いて気絶している男。
あまり想像したくないものである。
男の近くに落ちていたのは月明かりを反射するなにか赤銅色のものであった。
リュナは知らないことであったが、この召喚された赤銅色のものはある世界では、過去には数多くの著名人に振るわれ多くの人達を笑いの渦に叩き込んだ武器であった。
もっとも、今では一発ネタ程度に使われるものに成り下がってしまったのであるが……。
リュナがそこを離れようとして立ち上がるといきなりがくんと身体が崩れ落ちる。
動こうとしても動けない。膝が笑ってしまって動けないのだ。
息が荒くなる。今まで抑えられていた恐怖が再びはいあがってくる。
「に……逃げなきゃ。」
か弱いただの学士の少女はよろよろと立ち上がって、かろうじてだが魔導書の体裁を整えている本を拾って逃げる。
だが、恐怖にかられた獲物は、普段ならば考えられないような行動をとる。
それは……
「なん……で……こんな目に…あわなく…ちゃ………」
泣きじゃくることである。生きるか死ぬかの極限状態に陥った人ならば当たり前の行動であるが、それでも、追われている中でする事は捕まえてくださいと言っているようなものである。
当然……
「嬢ちゃん嬢ちゃん……よくここまで逃げたな……褒めてやるよ。でも…ここまでだな。」
男A現れた。
たたかう
まほう
にげる
→にげる
膝が笑ってしまって、動けない。
男は、ナイフを振りかざした。
そのナイフはリュナの右肩を掠って傷をつける。それと同時に右肩で支えていたカバンの紐が切れる。
「今のは脅しだ。さっさとそれを渡しな。そうすれば一発で殺してやるよ。」
そう言ってリュナの血がついたナイフをぺろりと舐める。
「なかなかの味だな。さすが魔法学院。いい味の血になっているな」
な……何なのこのひと……
リュナの頭の中に猟奇殺人の文字が浮かび上がる。
頭が真っ白になっていく………
じんわりと生暖かいものが下半身に染み渡っていく……
「うっわ……おいおい嬢ちゃん漏らしちゃいかんよ。それ使うんだから……」
そんなどこか呆れたような声が聞こえる。
「まあいいさこれからは俺が……いや私かしら………」
その言葉と同時に男の体から光が漏れ出す。
「あなたになるんだから。」
光が収まったときそこにいたのは……
「うそ……」
金髪に、整った顔立ち鼻は高すぎず低すぎず、胸は……普通の姿があった。
黒いマントに隠したその姿は、地面にへたり込んでいる少女と瓜二つである。
「驚いた?これが、私の魔法。失われた魔法。そしてあんたが死んでその記憶だけもらえば成り代わりが完成する。……ドッペルゲンガーって言う魔法よ。」
私じゃない私が目の前にいる。
先程切られたところから生暖かいものが流れ出て滴り落ちる。
「さて……私のために死んで。」
そう言って、舌なめずりしながら彼女はナイフを振りかぶる。
イヤだイヤだイヤだ。死にたくない。
胸にある魔導書をぎゅっと抱え込む。
そして、目の前が真っ暗になった……。
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「あ~……暇だな。」
太陽が西野空へと沈み始めた頃。俺は、地平線に沈む太陽を見るためにベランダに出て風にあたる。
5月の晴れ渡った空は、赤く染め上げられ、中央にそびえる塔との調和を醸し出している。
「……それにしても仕事どうしようかな?」
空へ目を向けると遥か遠くに小さな点が幾つも見える。そしてその後ろには長い雲が流れている。
スペースプレーンか……。
こうやって平和な変わらない日々が続いていく。俺の仕事が無い日もつづていく。
……そう思っていた。
まさかあのプログラムがあんなことを引き起こすなんて……。
平和というものが仮初めのものだったなんて……その時は思ってもいなかった。
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「ち……逃げられたか。」
ただの学士だと思っていたら、こんな隠し玉があるなんてな……
「アニキそこですか?」
そう言って近づいてくるのは………
「て…テメエ」
そう言って、ナイフを取り出してくる。あいつ勘違いしていやがるな。
「アントニー。俺だ。」
「!…すいませんでした。その小娘の姿って言う事は……」
アントニーの顔が輝く。
「……逃げられた。知識も、魔導書も逃したよ。」
それを聞いた瞬間アントニーの顔が唖然となる。
「ってことは……任務失敗ってことですか?」
「そうなるな。」
「そうなるなって……どうするんですか?金なんて無いですよ。」
依頼に失敗した場合は違約金がかかる。傭兵ならば常識のことだ。
「なに。金なんていくらでも作れる。この小娘、顔も……スタイルもまあまあなものだからな。何にせよ、ちょっと演技すればホイホイと金は入ってくるだろうよ。」
そうやって、今は自分のものとなった胸に手を当てて、少しもんでみる。
ちょっとした快感が体を走る。
こんなのでちょっと感じるなんてな。嬢ちゃん……
以前にも感じたことがあるものだがそれ以上のものを感じる。
暗い中で解らないが彼女になった男の目は既に異常なものになっていた。
……漆黒の森は全てを覆い隠していった。
紅き宝石を一粒残して。
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「旅に出ましたか……計画の一段階目は終了ってところですね。」
深夜の学院長室。ここにいるのは学院長……司書長ただ一人。
「む…」
そう言って顔をあげると音もなく6つの影が室内にいる。
「……どちら様でしょうか?」
刺を込めた口調で相手にはなす。
「夜分に申し訳ございません……要件ですが、分かっているでしょうがあなたを拘束させていただきます。」
「……お断りさせていただきます。今は真夜中ですよ。非常識じゃないですか?」
迷惑そうに学院長は訪問者達に向かって言う。
「あなたは自分がどうなるのかわかっていないらしいですね。もうこの部屋には結界が張られていますので逃げることは不可能ですよ。」
たしかに結界が張られているらしい。しかし……
「さあ。来ていただきます。」
そう言って影たちはこちらに近づいてくる。
「色々と追われている身で自分の居室に何も対策をしないとでも?」
その言葉と同時に部屋に白い光が走る。
翌日。学院長室を含む本館が消滅するという事件と貴重な魔導書の護衛に向かった生徒の全滅が報じられ学院は大混乱となった。
「……リュナ……」
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「プログラム起動準備よし。」
机の上のコーヒーを一気飲みして、なんとか完成にこぎつけたプログラムの実験にはいる。
多分だけれども、これでエラーはない。まあ成功したとしても、出入力装置なんて言うものが存在しまいため、ただ問題なくプログラムがはしるというだけでそれだけなんだけれども……
まあ、失敗しても、もともとが結構昔のアニメからインスパイアーを受けてはじめたことなんだし……。
さてと……
一度のびをしてから、意を決してエンターを押す。
エンタキーを押されたことにより処理が始まって2台のサブモニターの中にものすごいスピードで数字の羅列が発生する。
机の下に置かれている10台のコンピューターが音を立てて並列して相当な計算を行う。理論上では20年前のスーパーコンピューターとほぼ同じ性能のはずである。
メインのモニターにはグラフと、進行を示す数値が着々と増えている。
その下には、本来何も表示されないはずなのだが………
----BAHI HFAHBN -IUVHSNN- DBNUAVUGY ----
サーバーへ特殊アクセス。
空間における情報を取得…………SYSTEM領域にアクセス。
管理領域723-2169-6502に於いて、情報媒体を確認。SYSTEM管理サーバにアクセス。
アクセス権限無し。デバイスコード28465026549gsdbdhf取得完了。リアクセス………情報媒体の再構築。
JHSUGFHWFQIUYH U-GJFAU H HDSHHG W089^R JHGFWHGI ----- 0GROG
どこの言語かも見たことがない文字群が流れるようにしてモニターの下部を埋め尽くす
な……なんなんだこの文字群は……
「こんなの設定していないぞ。一体どうなっていやがる。」
必死になってキーボードに飛びついて停止コマンドを打ち込むが全く反応をしない。
モニターに数値は着々と増え続け、文字群はその速度を増す。机の下のファンの音はさらに大きくなっていく。
「こうなったら……」
パソコンの動力源である4つのコードを抜いて強制終了させようとするが一本でもコードを抜いた段階で電圧低下を感知したパソコン内に取り付けたUPS(無停電電源装置)が起動する。
……なんということをしてしまったんだ俺は。こんなものをつけてしまった俺を殴ってやりたい。
俺の混乱をよそにメインモニターの進行数値は着々と増え続けて……
部屋中の空気がなんだかピリピリとしてくる。
パチ……パチ。
そんな音を立てて天井のライトがチカチカとあり得ない速度で点滅を開始する。
必死になってこの怪現象を止めようとキーを叩くが効果はまるでない。
机の上に置いてある携帯端末がバイブレーター設定もしていないのにもかかわらずに凄まじいスピードで振動を開始する。
なんだか背筋がゾワゾワとするような感覚を背中で感じた瞬間。
ドン!……どさり。
そんな音が響きわたった。
音速を突破するときの衝撃波の音と、ちょうど何かが落ちてきたような音が混ざったような感じだ。
防音がきちんとしていなかったら、苦情がすぐに来るようなそんな大きな音だ。
音の発信源はベッドの上。
そちらを振り向いてみると、血塗れのボロボロの服を着た金髪の少女が震えていた。
……これが俺と彼女の出会いだった。まほーとか言うものとの衝撃的な出会いだった。
こういうのってさ、普通逆の立場じゃない?
召喚されるのは現代知識を持つ人で……召喚するのは魔法使いとか、神聖なる巫女さんとか?
まあ、普通なんて言うものは誰が決めるとか言うものじゃないけれども……
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出会いは偶然か、それとも必然か。それを知るのは観測者のみ。