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EP 9

「ぱ……ぱ、パフェを召し上がるんですね?」

「は、はい」

そうですがなにか?

柳田さんのひきつった笑顔が引っかかったけれど、私はチョコレートのソースがかかったソフトクリームにスプーンをそっと差し、掬った。

一口、口に入れる。すると、奇跡の甘さが口の中に広がっていった。舌の上でとろける至高。

「んーーー美味しいぃぃ」

思わず声に出てしまうほどの幸せ。ほっぺが落ちるというのはこのことだろう。白いもの症候群からの解放最高!!

と、パフェを堪能していると。

え?

柳田さん?

まだ立ってるしまだ脱力してるしまだあんぐり?

呆然と立ち尽くしている、という言葉がこれほどマッチングする姿もない。

どしたの?

「……パフェ」

はい。パフェですが? 2度目。

ガーーーーーンみたいになってますけど、まさか。

私がパフェ食べてるから?

太っちゃうから?

まさか!

今までの努力が台無し! みたいな?

食べにくっっ。

「あの……今日はご褒美パフェを食べるという強い意思で来ているので……た、食べていいでしょうか?」

はっと我に返ったのか、柳田さんはイスをガタガタいわせながら、座った。

「もちろん! もちろんです! どうぞどうぞどうぞ!」

ダチョウクラブみたいになってますけど、こんな動揺した柳田さんを見たことがありませんね。

「昴? いい加減になさい? お嬢さんもお食事中ですよ。お邪魔してはいけないわ」

お相手の女性の一喝が入った。

「ああ。そうだね」

そこで、柳田さんたちが注文した品が運ばれてくる。

ワインに前菜、サラダにスープ、メインはステーキ、そしてカバンから出したもの。

(ぷ、プロテイン……は持参)

ただ、少しだけショックだった。パフェを半分ほど食べたころ、もう一度、現実を直視することに。

ちらと横目で見る限り、それは完璧で麗しいデート。

ナイフとフォークで優雅にステーキを食す、美男美女がここに爆誕的な。

(はあぁ、なんか絵になるなあ。さっきのセリフ「お邪魔してはいけないわ」「ああ。そうだね」が似合うのなんのって)

柳田さんはモテる。知っていた。そして、美人な恋人がいる。それもきっとそうだろうなとは思っていた。

だから想像通りだっただけ。

視線を下げる。自分の下腹部には浮き輪。だが今はいい! 私は現実から目を逸らし、パフェをなんとしても完食すると強い意思を持って、底の方に残った、ふにゃふにゃなコーンフレークをスプーンでかき集めると、一気に口の中へと流し込んだ。

甘ったるさが、口の中にべったりと残る。

お冷やを飲んだ。

そして二人のお似合いすぎるお姿の残像を振り払うように「それじゃお先に失礼しますっ」と言って、レジへと向かった。

ずんずんと歩く。

柳田さんにアドバイスをもらってから、ウォーキングも続けている。早歩きは得意。

ずんずんと歩いた。

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