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EP 28

『……そんな、わざわざ悪いです。風邪がうつってしまってもいけないですし、食べる物はありますから』

「なにがあるの?」

『えっと……ば、バナナ……?』

「優里さん、こんなこと言うのもなんだけど、バナナなんて遠足で300円以内に含まれるべき、おやつだよ(←個人的意見)。いいから大人しく待ってて」

そして俺は近くのスーパーへと走った。

店内は夕ごはん時ということもあってか、程よく混雑している。カゴを掴むと、店内をうろうろし、商品を吟味した。

「風邪をひいた時は……胃腸が弱っているからな。うーん。なにを食べさせればいいんだ」

筋肉に良いとされる食べ物なら理解しているが、病気のときはどうしたら良いのか?

キョロキョロしながら、これならと手を伸ばしたものは。

『納豆』。

そして『おかゆさん』のレトルト。

また風邪と言ったら『プリン』だ!

少しお高めの高級プリンを手に取る。他にも色々買い物カゴへ放り込むとレジへと並んだ。

ピンポーンと玄関のチャイムが鳴り響いた。

「はーい」

ん? 声が異様に野太い。ドアがガチャと開くと、白井さんではなく男性が出てきた。イケメンだ。

「あの……ここは白井優里さんのお宅ではないですか?」

俺が狼狽えながら言うと、アイドル系イケメンは「そうです」となんなく答えた。

「白ちゃんは今、風邪で寝込んでますけどなにかご用ですか? ご用件は俺、滝沢がお聞きします」

滝沢だと? なんか嫌な雰囲気だ。上から目線の申し出に、なんとなくマウントを取られている気がして、俺はすかさず言った。

「風邪なのは知ってますよ。だからこうして私、柳田がお見舞いに来たんじゃないですか」

「そうですか。なら俺、滝沢がそちらのお見舞いを預からせていただきます」

カチン。

「優里さんの顔も見たいので、直接この柳田が手渡しますし、どんなご関係かは知りませんけど、しゃしゃるのやめてもらえます?」

「そちらこそ」

名前を主張し合う謎の展開、そしてマウント合戦が勃発した。

俺は相手の不遜な態度に、さらにムカっときてしまった。

すると、奥からバタバタと足音をさせて、白井さんがやってきた。

「柳田さん!」

「優里さん! 具合はいかがですか?」

「ごめんなさい。遠路はるばる来ていただいて……もうずいぶんと良くなりましたけど、まだ少し咳が残ってて。でも食欲もあるし、もう大丈夫です。ジムもお休みしちゃっててごめんなさい。黒田さんにも明日か明後日には行きますとお伝えください」

腕組みをしたまま、身体を斜めにし、玄関の壁にもたれかかっている滝沢という男をちらっと見やると、まあその不機嫌な顔ったらない。白井さんの部屋に堂々と上がり込んで、この男いったい何者なんだ?

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