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EP 27

これでどうだ? そう。俺はこの結果にひじょーに満足していた。

「あ! 優里さん、君にはこのダンベルは重すぎるよ。もう一つサイズダウンするといい。はい、君にはこれね」

「は、はい……」

恋人宣言から二週間が経った。

例の三羽烏は遠巻きに俺たちの様子を見ている。なにかぶつぶつ文句を言っているようだが、気にしなーい。目からビームでも出てそうな強烈な視線だが、これも気にしなーい。

とにかく白井さんに被害がなければそれでいいのだ。

「優里さん。ちゃんとシャワー浴びてから帰ってる?」

建前上そのように訊いてはみるが、俺はすでに西田のおばちゃんから確実な情報は得ていた。

「あんたぁ、いったいどんな魔法を使ったんだい?」

「魔法って。ただ白井さんとお付き合いします宣言しただけですよ」

「ははーん。なるほどねぃ。それであの悔しがりようだったわけかぃ。あれから意地悪はぴたりとなくなってね。あー良かった。これで安心安心せいせいしたってもんだよ!」

「効果はバツグンのようですね。またなにかあったら連絡くださいね」

「はいよ」

さあもうこれで大丈夫なはずだ。

と高を括っていたわけだが。

「はい。シャワー浴びて帰れるのはありがたいです」

「そうだね。また風邪をひいてしまってもいけないしね。この前みたいに寝込んでしまうと大変だから」

「…………」

嫌がらせ問題は解決したと思ったのだが、白井さんはあまり嬉しそうではないのだ。あの笑顔が見れると思っていたのに、想像とは違った微妙とも言えるこの表情。

そして実を言うと、あの恋人宣言の次の日、白井さんはジムをお休みした。

(あれ? 計画は上手くいったはずなんだが……)

そして次の日もその次の日も休み。

(まさか勝手に宣言してしまったから怒っているのだろうか……やばい!)

慌てて姉貴に電話した。

『え? 優里ちゃんのLINE? 知ってるけど。ってかあんたが知らないってどういうわけ?!』

「ははは。今まであまり必要がなかったから」

『でも今は電話に出られないかもよ』

「なんで?」

『知らないの? 少し前から風邪ひいててね。ここ2、3日は仕事もお休みしてるわよ』

「え!? そうなの? それ早く言ってよ!」

『だっててっきり知ってるかと……』

「知らなかったよ!!」

俺は慌てて電話した。

『はい?』

「あ俺」

っと知らない電話番号からのオレオレ詐欺ww

「失礼。ジムでご一緒の柳田です。勝手に姉貴に連絡先を聞いちゃってごめんな。風邪引いたって聞いたから居ても立っても居られなくて。優里さん大丈夫??」

『だいじょぶです』

白井さんの声はガラガラで、全然大丈夫そうではない。

「もし良かったらなにか食べるもの買っていくよ。家はわかるから。待っててくれないか」

以前にタクシーで送ったことがある。

「住んでいるところですか? 柳田さんなら知られても全然オッケーです」

個人情報に厳しいこの時代に、なんと住んでいるアパートを教えてくれたのだ。単純に嬉しかった。信頼を勝ち取っている、そう思えたからだ。

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