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EP 25

ある日のこと。

これは夢か幻か? と思うようなことが起こった。

私はその日いつも通りジム『stone』に来ていた。

そのころ私はシャワーを浴びてから帰ることは、すっかり諦めていて。

最近は、着替えだけは持ってきて、身体を拭いたあと着替えをし、そして家に帰る。少し肌寒いし、家に帰ったら結局お風呂に入らなければならないので、二度手間だけれど仕方がない。

「あ、柳田さん、こんにちは」

「優里さん! 調子はどうですか?」

「はい……まあまあです」

順調に痩せてはいた。もちろんそれはダイエットのおかげで嬉しい限りではあるのだが、なんとなく私が皆さんから嫌われているのではないか、そう思い始めてからは『stone』に来るのも少し苦痛になってしまっていた。

心の拠り所は、柳田さん。柳田さんと交わす一言二言や柳田さんの笑顔が、栄養素。私の中ではすでに大きな存在となっていた。

(でもまあそんな親密に話すことなんてないけれど……)

柳田さんは相変わらずカッコよく、他の会員さんにもモテモテで親切だ。

柳田さんのお姉さん、リリさんのエステは全身コースがすでに終了していたため、話す話題もあまりない。

「優里ちゃん、お疲れ様。これでコースのすべての施術が終わったわ。ほら見て?」

大きな手鏡を渡された。

「どう? 肌なんか羽二重餅のようにツヤツヤでモチモチでしょ?」

「はい! なんか前よりすべすべします」

「もともと優里ちゃんは良いもの持ってたけど、そのポテンシャルを100パー引き出すことにも成功したわ」

「肌のくすみも取れた気がします」

「ありがとうね。きちんと通ってくれたから、ウエストもこんなに細くなったわよ」

相変わらずぎゅむっとメジャーを引っ張ってはいるけれど、毎回そうだから問題はない。確かにくびれもできてきた。

「リリさんのおかげです。コース料金だって……本当に私、お支払いしますので」

「いーのいーのいーの。ただ優里ちゃんにお願いがあってね」

「なんでしょうか? 私にできることならなんでも」

「うちのエステ『seventeen』のブランディング動画のモデルをやって欲しいの」

「え!? いやいやいやででできませんできません」

「大丈夫。なにも水着になれって言ってるわけじゃないから。『白井優里さんの場合』みたいな感じで、今まで撮影したビフォーアフターの写真と現在の姿の動画を撮らせてもらうだけよ。それに安心して。店内とあと昴のとこの『stone』で動画を流すだけだから」

「『stone』で……無理です! 恥ずかしいし……それにあんまり目立つようなことは……」

例の一件もある。エステも受けているとなれば、さらに嫌がらせを受けることになりそうで怖かった。

「ふふふ。大丈夫! 目立っても良いように、昴が解決するはずよ」

意味深な笑顔に、私は困惑してしまった。

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