EP 20
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わかる。わかるよ。これは情報操作だと言いたいんだろ? 心理戦の攻防とも言えるしな。
ん? 一方的でしかも半ば強制的だと?
イチゴパフェくらい食べさせてやれよってね。わかるよ。
でもね、本人もダイエット頑張ってるわけだし、それを第三者が台無しにしちゃだめだろうよ。
だから、店員に料理を注文する時も、すっげ迷ったんだよね。
(コースは量が多すぎるか……単品にしよう)
パスタを心から美味しそうに食べる白井さん。あーなんか見てて幸せになるんだけど!
あああ彼女にお腹いっぱい食べさせてあげたいっっ。
だが、冷静になれ俺。
『stone』の宣材写真に、いや、さらには売り上げにも関わってくるんだからな。
こんな心の葛藤が生まれるとは、白井さんと出会った頃には思いもしなかったが。ヽ(´o`;
なんだろうな、この気持ちは。
「優里さん、他に食べたいものはない?」
ちょ待てよ。冷静になれとか言ってるそばから訊いちゃってるじゃないか!! 俺のバカ!!
だが、ミニパフェに誘導完了!
すべてがOKだ。
ところで。
数日前の出来事だった。俺は姉貴に教えてもらい、優里さんがモデルとなった会社のサイトを見てみたのだが。
うん。なかなか良い商品のラインナップだ。ファッションセンスも良いし、流行だけにとらわれない、こだわりの部分もある。目の付け所がいい。
ファッションにはうるさい姉貴も「比較的コスパ重視な点に偏りが見られるがアイテムを含むチョイスは良い」って言っていたから間違いはないだろう。
白井さんの私服も、可愛いものが多かったしセンスも良いなと思っていたので、職場の影響を受けてのことだと容易に想像できた。
「そういえば優里さん、モデルの写真見たよ!」
ミニパフェをもう少しで食べ終わるというところで、話を振ってみた。
「ほんとですか、お恥ずかしい限りです」
目を細めている。まつ毛が意外と長い。
「なに言ってるの! すっごく可愛かったし、ワンピースが似合ってたよ」
「ありがとうございます」
真っ赤になってきた。苺大福!!
「社長がモデルをやってくれって半強制的で……私じゃ無理だって言ったんですけど、気がついたらアップされてました。まあ最終的にはOKしたんですけど」
「そうだったんだ。それって、パワハラとかじゃない? 大丈夫?」
「いいえ、そういうのじゃありませんから」
「そう? 私の知り合いで、弁に長けているヤツがいるから、もし辛いことがあったら相談してよ」
「大丈夫です。うちの社長、すごく良い人なんです」
その言葉にピクッと反応した。
ん? どうした俺? まぶたでも痙攣したか?
まあいい、そんなことより。
「その社長ってどんな人なの? 若いの? 何歳なの? 性格は? 年収は?」
「すごく社員思いの優しい人です。アラ還なので、頭頂部が少し寂しいことになってますけど」
ふーん。なんだそっか。おじさんか。
「アラ還ね。アラ還なら頭頂部もそんなもんでしょ。アラ還なら」
俺はどこか安心したのか、ワインの最後の一口を飲み干した。