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EP 10

(ちょちょちょちょっ待てえぇーい)

時代劇みたいなセリフを心で叫んでいた。

(パフェーーーー!!!)

ダイエットには天敵(←思い込み強)のパフェ! しかもチョコだと!

俺は、前に姉貴がいるのも忘れて、パフェを食べる白井さんに釘付けになってしまった。

ここ『vegeta』は、俺が経営するカフェだ。こうして時々、姉貴と提供される料理の味が落ちてないかを確認しに来るのだが。

「……ま、まさか全部食べる気じゃないだろうな」

聞こえないほどの小さな声が出た。だが微妙に震えてしまっている。俺はそれほどにショックを受けているのか? たかがパフェだろう。されどパフェだっつーの!!

すると姉貴から、「昴? いい加減になさい? お嬢さんもお食事中ですよ。お邪魔してはいけないわ」と釘を刺される。

俺は普段からこの精神の屈強な姉貴には頭が上がらない。打ちひしがれながら、俺は運ばれたワインをがぶ飲みした。

だが待て。

目を細めてよーく見てみれば。

「もしかしてっ」

ガバッとメニューを取る。自分の経営する店ではあるが、メニューのスイーツは後回しにしがちであまり覚えていない。

白井さんの食べているパフェを確認してみると、『ミニパフェ 253Kcal』とある。

ふう。253(ニッコリさん)か。それなら許容範囲だ。

そうこうしているうちに白井さんはミニパフェを完食し、頭をぺこりと下げてレジへと向かう。店員が手を振って、支払いを拒否するタイミングを見計らって俺は立ち上がり、白井さんの後ろから声を掛けた。

「優里さん、ここの支払いは私がと伝えてあります。君がダイエットを頑張れるよう、私からの応援(←?)だと思ってください」

「そんな! 奢っていただくわけには……」

二人でやり取りをしていると、やたら白井さんがちらちらと視線を下げる。

ショーケース!!

「いいんだ! ここは任せてくれないか。さあ店を出よう!!」

白井さんの肩に両手を乗せ、ぐぐぐと押して、店を出る。

ふう。セーフだ。さらなる強敵ケーキからは遠ざけた。

だが帰り道はどうだ? この半径1キロ以内にはシフォンケーキ専門店と老舗和菓子屋があり、どちらもここら辺では名の知れた有名店だ。白井さんが、すすすと吸い込まれていく可能性は大いにある。

「優里さん、帰りは送らせてください」

スマホでタクシーを呼ぶと、ここで待っていてと言い残し、姉貴に「ちょい彼女送ってくるから悪りいけど支払いしといて!」と財布を投げつけ、戻った。

「あの……おお送っていただかなくても、ひとりで帰れますです。ほら! 柳田さんが仰っていた有酸素運動のウォーキングしながら、いっちにいっちにってね」

腕を振りながらぽよんと笑う顔に少し戸惑った。

「いやあの送って……今日はまあ、送らせてください」

ふんわりとした頬が、大福もちみたいで柔らかそうだ。ほんのり紅がさして、苺大福かなと思った。

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