移動屋台のおでん屋の親父です、世界を消滅する客も来ますが、客なのでおでんを煮込みます
今日も親父はおでん屋の移動屋台を開いている。
いろんな客が来るが中には世界を消滅させる客も来る。
「この世界詰まんないから消して良い?」
(とんでもない事言ってるぞ)
目の前に座る幼女の言葉に驚いていても親父はおでんを煮込む。
「そんな軽い気持ちで世界を消滅されても困りますよ、消滅したら一気に死んだ魂達が大量にあの世へと行くのですから、この世界の全ての魂が一度に来たらあの世の者達も捌ききれなくて大変ですよ」
隣に座っていた大人の女性が幼女に言う。
「だってこの世界の人間って詰まんないんだもん、全然面白い物とか作ったりしないし」
(面白い物ってそんなのが簡単に作れたら俺も少しは楽しい生活ができるのか?)
そんな事を思いながら親父はおでんを煮込む。
「そうおっしゃられましても、この世界の人間達ではあなたを楽しませる物を作るなんて無理な話ですよ、我々より劣っているのですから」
(失礼な事を言うなこっちの人は)
そう思いながらも親父はおでんを煮込む。
「じゃあ別にこの世界消滅しても良いじゃん、面白い物も作らないし、いつまでたっても争う事しかしないし、平和な世界を望んでないって事じゃん」
(俺は平和ならそっちが良いと思ってるんだが、王族貴族と言った上流階級の奴等がそれを望まないようにしているのかもな)
「とにかくもう世界消滅しても何も問題ないじゃん、魂の処理だって綺麗な魂だけを整理してそれ以外は全部消したりすれば良いじゃん」
「そんな簡単に言いますけど、簡単じゃないんですよ」
「こんないつまでも成長しないような面白くもないのをずっと管理しないといけないなんて嫌だ」
(管理ってアンタそういうそんざいなのか?)
「わかった、じゃあこうしよう」
「どうするのですか?」
「この店のおでんを食べて美味しかったら世界消滅させるのやめる」
(はあ?)
この幼女は何を言っているんだと思いながらも親父はおでんを煮込む。
「はあ、しょうがないですね」
(いや、しょうがなくないだろ、アンタもう少し頑張れよ)
「というわけで親父、おでん全種類ちょうだい」
(全種類ちょうだいじゃねえよ、俺のおでんに世界の命運掛かってるって何の冗談だよ)
そう思いながらも親父はおでんを全種類皿にのせて幼女の前に出すのだった。
「じゃあ、いただきまーす」
幼女はおでんを食べていき全種類食べ終えるとしばらく沈黙する。
「世界を消滅したら、このおでんもう食べられなくなるの?」
「そうですね、何もかもがなくなりますから、もう食べられなくなりますね」
「じゃあ、世界消滅するのやめた、このおでん美味しいかったから」
「わかりました」
(え? もしかして世界助かった?)
「親父、おでん全部ちょうだい」
「先にお金を払いますので、今ある分全部をお願いします」
「はいよ」
親父はおでんを煮込んで幼女と女性に出す。
(・・・・・・俺のおでんが世界救っちゃったよ)
そんな事を思いながら今日も親父はおでんを煮込むのだった。
読んでいただきありがとうございます。
おでん屋の親父、第三弾でした。